召還社畜と魔法の豪邸

紫 十的

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第三十章 過去は今に絡まって

ゲオおじちゃん

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 地中での戦いから数日が過ぎた。
 オレ達はギリアの屋敷を目指し地中を進んでいる。
 あの戦いで、必死に逃げすぎたため少しだけ遠回りの帰宅道。
 当初の予定より、少しだけ長めの日数がかかっている。
 そんな帰りの道中、地中での過ごし方はほとんど同じ毎日だ。
 サムソンにカガミは、禁書図書館の本を取り込むことに全力投球。
 ミズキとチッキーは食事の支度など。
 ピッキー達は、ウミガメの背にある小屋などを作り直す。
 プレインは、何か思いついたらしく、地下にある工房でヒンヒトルテの協力のもと魔道具を作っていた。
 オレとノアは、そんな皆の求めに応じて行ったり来たりと大忙し。
 さらに忙しいのはゲオルニクス。
 魔法の相談、大工仕事の手伝い、その他いろいろ。一日中、働き詰め。
 でもそれがひどく楽しいらしい。楽しそうに駆け回っている。
 そしてよっぽど疲れるのか。誰よりも先に寝る。
 そんな日々が続いていた。

「ゲオおじちゃん! プレインお兄ちゃんが来て欲しいって」

 一軒家の入り口側に立ったノアが、大きな声でゲオルニクスを呼んだ。
 ゲオおじちゃん。
 いつのまにか、ゲオルニクスの呼び名は色々と変わった。
 オレと同僚達は基本的にゲオルニクスと呼んでいる。
 ヒンヒトルテは、ゲオルニクス様とけいいをひょうする態度を変えない。
 ピッキー達は、ゲオおじさん。
 そして、ノアはゲオおじちゃんだ。
 そうなったきっかけは、ピッキーの言い間違いからだ。

「おじさん」

 そうピッキーがゲオルニクスを呼んだ。すぐに言い間違いだと彼は言い直した。

「いいや。大丈夫だよ。いや、おじさんと呼ばれた方がうれしいだよ」

 ところが、そうゲオルニクスが答えたため、ピッキー達はそれからゲオおじさんと呼ぶようになった。
 そのうち、ノアはおじさんが、おじちゃんになって、それが定着している。
 ちなみにノアは、自分の言い方が変わったことに気付いていないようだ。
 巨大な本棚の側に立っていたゲオルニクスは、ノアに呼ばれてニカリと笑う。
 それから、すぐさまドタドタとノアの方へ走って行った。

「ゲオルニクス氏は相変わらず大忙しだ。でも、プレイン氏は何をしているんだ?」
「鳥の魔道具を修理しているよ」
「修理? 鳥の道具っていうのは?」

 サムソンの質問に、知っている範囲で答える。
 地下の工房を見せてもらった時に、プレインが部屋の片隅に金属製の鳥の人形を見つけた。
 気になった彼がゲオルニクスに聞くと、譲ってもらえることになったのだ。
 だけど壊れているというので、今直しているところだという。
 修理の方法を心得ているヒンヒトルテの監修のもとだ。
 ヒンヒトルテの方でも、自分の知っている知識と、現在の状況との違いを把握していたいというので、その辺りをプレインに聞きながら作業すると言う。
 ロンロは、プレインが知らない部分の補足をするために彼につきっきりだ。
 つまり、ヒンヒトルテの質問に、プレインとロンロが答える形。
 古代を生きていたヒンヒトルテ。
 大きな戦争の渦中にいたヒンヒトルテの話には、ひどいものもあった。

「反撃の作戦は数多く立てられた。うち大きな計画は……私の知る限り2つあった」

 それは、食事中の話だった。
 昔話の途中で、戦争の話になった。

「モルススを滅ぼす神を人の手で作る計画。それから、世に居るクタ全員に呪いをかける魔法を世界に施す計画……いや、今はクタでは無く人と言うのだったか」

 ヒンヒトルテがそう話を続ける。
 神を作るというのは、フェズルードで見つけた本にでていた。デイアブロイという名前だったと思う。呪いをかけるというのも、どこかで読んだな。

「それでどうなったっスか?」
「わからない。だが、そのうち一つは、大きな傷跡を世に残している。空を見上げたときにそれを知った」

 空を見上げた時……天の蓋か。
 この世界に数ある魔法陣の中で最も異質な魔法陣。
 そらに広がる巨大な魔法陣、天の蓋。
 不思議な事に、どこから見ても真上にあるように見える魔法陣だ。その効果で知っているのは、ノアを初めとする呪い子を生み出す事。
 つまり、ノアを襲う理不尽な状況の元凶だ。

「天の蓋は、魔神が作ったと言われているが、あれは人の手によるものなのか……」

 サムソンは、オレと同じ事を考えたようだ。ボソリと言った。

「だが、結果は計画とは大きく違う。クタは滅びず、栄えている。世界にいるクタはすべからく呪い子となるはずだったのに、世はそうではないようだ」

 少し前にプレインがまとめた資料にあった内容を思い出した。
 互いに争わせてどうとかいう内容だった。
 あれは、天の蓋についての記載だったのか。

「天の蓋……」

 俯いたノアが呟く。

「でもさ、酷いよね。やり過ぎって感じ。私はパスかな。やっぱり戦争より、平和がいいよ」

 しんみりした雰囲気に、ミズキが軽く言葉を挟んだ。

「そうっスよね。ところで、地竜の肉って案外いけるんスね」

 プレインが手元の料理をフォークで軽く刺した。
 沈んだ空気を変えようというのだろう。

「あれだよな。生ハムに似てる」

 オレもその流れに乗る。
 戦争の陰惨な話は食事に似合わない。気になる事もあるが、後で聞けば良いだろう。
 ちなみにプレインがフォークで刺したのは、地竜の肉で野菜を巻いた物。
 パッと見、春巻きだ。
 薄くスライスした地竜の肉は透き通っていて中の具が見えている。
 味は、生ハム。こちらのほうが塩味が強い。
 薄味の具によって、塩味が中和されて美味しい。
 本来であれば毒で食べられる代物ではない地竜だが、それを調理魔法で料理したのが今食べているものだ。こうやって調理魔法でしか食べることができない肉というのは、たまにあるらしい。
 そして地竜については、ゲオルニクスが魔法で狩る所も見た。
 地中の地竜をスカポディーロで飲み込んで、電撃で倒す。ノームの力で地竜は動けず、一方的な勝負だった。
 オレ達があれだけ苦労したものが、あっさり倒される様は壮観だった。

「そうそう。お酒のつまみにも合うんだよね」
「おいらはお魚と一緒に食べるのが好きです」
「マヨネーズをつけても美味しいだ」
「ゲオルニクスは、分かってるっスね」

 地竜の肉をネタに、話題は変わり盛り上がる。
 それにしても、時たまキツい話題にはなるが、過去の話は興味深い。
 そして、失われた歴史が多いことも実感する。
 だけど歴史と天の蓋がからむのならば丁度良い。このまま読めない資料は魔法に限らず集めていこう。
 地中で過ごす日々の中、オレはそう思った。
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