召還社畜と魔法の豪邸

紫 十的

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第三十一章 究極の先へ、賑やかに

まほうのきゅうきょく

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 ギリアに戻ってから、平和な日々が続く。
 おかげで諸々の事が順調に進んでいる。
 ピッキーたちは、再びでレーハフさんの所で大工修行を始める。
 ところが、うまくいかないこともある。
 ノアの呪いを中和する魔道具。それは触媒の面で躓いた。

「金塊が尽きた」

 ある日の晩、オレの部屋にやってきたサムソンが言った。
 思った以上に、鎖を作るのに金塊を消費してしまう。
 細い金の鎖なのに、その何十倍もの金塊を使うのだ。
 もっとも金塊が無いなら買えばいい。
 ということで、翌日の朝、金塊を早速注文することにした。
 白孔雀に手紙を持たせて王都へと飛ばす。

「バルカンに頼んでおいたよ。紹介状も書いたから、上手いこと買い付けてくれると思う」

 王都に支店のあるアウエレン商会に金塊は頼むことになる。
 そんなわけで、王都にいるバルカンに頼むことにした。

「運搬は?」
「バルカンから買い付けの完了報告があったら白孔雀を飛ばす。でも、買い付けには時間がかかるって回答があった」

 せっかくだからと、有り金の大半を使って買い込む事にしたのが裏目に出た。大量の金塊を、一度に用意するのは時間がかかると言われてしまった。
 バルカンからの手紙には、最初は少なめに注文したほうが良かったと反省するかのような一文が書いてあった。
 彼も金塊の買い付けは初めてだったので、勝手がわからなかったらしい。
 黄金郷で手に入れた金塊が使えないかと考えたが、あれは純粋な金ではなかった。魔法で何らかの加工がされていたようだ。
 もっとも、上手くいかない事はそれくらいだ。
 ノアの服作りは順調だ。度々ファラハの所に行って、お茶会ついでに採寸などの作業を続けている。
 なんだかんだと言って、ファラハはノアに良くしてくれるので嬉しい。
 そして、魔法の究極についても順調に進んでいる。

「先輩。言われた部分作ったっスよ」
「私も良い感じ。思った通り動くとプログラミングって楽しいよね」

 数日ごとに広間で行う進捗確認は、順調の一言だ。
 黒本エニエルに書いてあったことをベースに、作業を進めているのだが、ほとんど問題が起こらない。

「ここ……思いの加工、本の通りより、こちらの方がいいと思います」
「確かにカガミ氏の言う通りだ」

 さらに、効率のいい方法を思いつくこともある。
 元の世界での経験が、ここにきて輝く。
 ちなみに魔法の究極とは、神とは違うが神々とほぼ同一の力をもつ存在に、言葉を送る魔法だ。
 神にも似た存在に言葉を送ることで願いが叶う。

「でも、本当に意外というか、ネタがわかると簡単というか」
「魔法の究極が、別の場所にあるサーバにデータを送るようなものだったこと?」
「そうっス。いわゆるデータ通信が、魔法の究極だって不思議な気分っス」

 バグが出ず、一発でプログラムが通ったったと喜ぶプレインが上機嫌で言った。
 確かに意外だよな。
 願いを叶える魔法は、データ通信でいけますよってのは、最初に本を読んだとき、本当にこれでいいのと思ったものだ。
 そんなわけで、上機嫌のオレ達は、順調に魔法の究極に向けて邁進している。
 それはプログラムは、術者の思いを汲み取る部分。
 神にも近い存在が理解できるように、思いを翻訳する部分。
 最後に、願いを叶えてくれるその存在に向けて、思いを送る部分。
 大まかに分けて3つに行程を分割して、作っていく流れだ。
 元の世界での言い方であれば、受け取ったデータを、変換して、送信する仕組みを作るといったところか。
 プログラムに関する知識があるオレ達には理解しやすい仕組みだ。
 もっとも、この世界の人たちには、一連の流れは理解が難しいらしい。
 本を書いた人は、説明にあの手この手をつかっていた。
 データ加工のルールやら送信先は、黒本エニエルを書いてある通り進める。
 パソコンの魔法上では、今のところ問題が無い。

「この調子だと、完成はすぐだと思うぞ」

 サムソンの一言に頷く。
 オレも同意見だ。
 ここまで順調に進むのは、元の世界での経験と、こちらに来てから様々な調べものをしていたからこそだ。
 努力が無駄にならない事は、素直に嬉しい。

「リーダぁ、お客さんよぉ」

 部屋にこもってプログラミングしていると、見張り役のロンロがやってきた。
 最近は来客が多い。今回のように、気楽なロンロから来客を教えてもらうのはしょっちゅうだ。
 大抵が、商人の売り込み。
 いつの間にか、呪い子だからと迫害される対象から、お近づきになりたい対象になったらしい。
 来るのは、皇女の専属商人や町の商人など。
 たまに神官が、郵便番号簿をもってくる。
 ちなみに帝都へ一緒に旅をした神官たちも何人かがこちらに来ていたらしい。
 行き違いで、王都へ行ったとか。
 とにもかくにも、魔法の究極に近づいていること、友好的な人が増えること、嬉しい事がいっぱいだ。
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