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第三十一章 究極の先へ、賑やかに
てちょうのでどころ
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「お帰りなさいませ、カロンロダニア様」
屋敷にたどり着くと、使用人の人達がズラリと並んでの出迎えがあった。
毎度毎度、申し訳なく思う。あの人達って、どれくらい前から並んでいるのだろう。
「あぁ。出迎えご苦労。さっそくだが、ノアサリーナに寝る場所を。湯浴みは明日でよかろう。着替えと、身の清めは、起こさず丁寧に。上級触媒の利用も許可する」
ぼんやり考え事しているオレとは違い、カロンロダニアがテキパキと手配する。横にいる紫の短髪をした人は……タイロダインだっけかな。
ノアは、カガミが寝室へと連れて行った。10人近いメイドと一緒にゾロゾロと。
ピッキー達は、タイロダインの案内に従い、ミズキと一緒に寝室へと行く。
こういうのを見ると、カロンロダニアは貴族なのだと実感する。
「さて、まだ夜も始まったばかりだ。祖国では、酒を飲んだ後、水とスープで体を整えるものだが、どうかね?」
そんなカロンロダニアの提案。
飲んだ後に、スープか。
元の世界でいうと、締めのラーメンみたいなものかな。しかも、ヨラン王国以外の料理。異国情緒を感じられそうだ。
ということで、言葉に甘えることにした。
「紫?」
出てきたスープを見て、プレインが呟く。
スープが赤っぽい紫色をしていたのだ。さすが異世界、意外な色をした料理がでてきた。
白っぽい木製の器に、紫色が映える。しかし、不味そうな印象が無い。良い匂いがするからだろうか、不思議なものだ。
具は、玉葱っぽい野菜だけだ。とろみがある紫の液体にもかかわらず、さっぱりとした塩味のスープで美味しい。
「水も美味しいね」
途中から合流したミズキが、水を飲んで笑う。カガミもコクコクと頷いている。
確かに、水……いつも飲む水とは違うな。なんだか甘い感じがする。
「北方カジャカの氷を溶かしたものだよ」
「魔法の触媒にも、よく使われますね」
魔法の触媒?
サムソンの言葉で思い出す。カジャカ……よく聞く地名だな。ヨラン王国より遙か北にある土地なのだっけかな。
魔法の触媒でも、確かにカジャカの氷は、しょっちゅう出てくる。
「あぁ。解かして飲むと極上の水となる。加えて、我々が頻繁に使用する魔法の触媒としても欠かせない」
「そういえば、セルベテ様から教えていただいた触媒にも必要でした」
「セルベテ?」
カガミの言葉に、カロンロダニアが首を傾げた。
あれ?
セルベテが、スプリキト魔法大学に居ることを知らないのかな。
「えぇ、ノアちゃ……ノアサリーナ様が、手紙で、セルベテ様から白熊の使い魔について教えてもらっていました」
「そうか……セルベテが。あの者が……そうか」
あぁ。大学にいることではなくて、使い魔について教えた事が意外だったのか。
カロンロダニアの微笑みをみると、悪い気分ではなさそうだ。
そんな彼は、何かに気がついたように、ハッとした表情でオレを見て口を開く。
「そういえば、アダマンタイトで、太祖の手帳を修理したと聞いたのだが……」
太祖の手帳?
赤い手帳か。
「はい。お陰で中を確認することができました」
「うむ。ノアサリーナから聞いて驚いた。まさか、あの手帳にそのような秘密があったとはな。もっとも、タネを聞くと、あの中央の穴は疑ってしかたがないものだったか」
「たしかに……」
確かに、中央に穴が開いている手帳だからなぁ。
そして、カロンロダニアが太祖について教えてくれた。
それはグラムバウム魔法王国の建国にまつわる話だった。
かって、大きな災害があり、多くの人々が海を渡って北へと逃れたという。
彼らは大嵐にあい、遭難の結果、北方の土地にたどり着いた。
ところが、そこには既に人が住んでいて、限られた実りの良い土地を巡り争いがおこった。
そして争いに負け、行き場をなくした人々は住みよい土地から出る事を余儀なくされた。それから人々は、北へ北へと逃れるように放浪を続けたという。
その放浪のリーダー格が建国王であり、彼らに拾われたのが、太祖だという。
雪山に倒れていた太祖は、何か恐ろしい経験をしたらしく、何一つ自分のことは何も憶えていなかった。身につけていた服、そして武器。それから赤い手帳だけが手がかりだったそうだ。
自分の事は憶えていなかった太祖だが、それ以外の豊富な知識を持っていた。魔法による効率的な暖房の仕組みなど、彼は自らの知識を生かし建国に尽力したらしい。
建国王は太祖の働きに感謝し、その感謝の印として、リュフトクルス家を興すことを許した。
それがカロンロダニアの一族であるリュフトクルス伯爵家の興りだそうだ。
「太祖が残した物は4つある。ギリアにある別荘に、手帳、そして赤い剣……あとは、ノアサリーナにあげた遊戯箱だ」
そうカロンロダニアは語り、話を終えた。
あの遊戯箱も、太祖の物なのか。太祖の持っている物は全部裏があるよな。そのパターンからいくと、何かありそうだ。
「太祖とは凄い方だったのですね。手帳も、別荘も、驚くものでした」
「あぁ、確かに。それにしても、少し話し込んでしまった。もう夜も遅い」
カロンロダニアに頷き、お開きとする。
彼の話は面白かったが、一つの疑問ができた。
あの手帳は、ウルクフラの持ち物だった。それから、彼は獣人だ。
しかし、ノアの先祖は獣人ではなく人間だという。では、太祖とウルクフラの関係は?
ずっと考えていたが答えは思いつかず、オレは眠りについた。
屋敷にたどり着くと、使用人の人達がズラリと並んでの出迎えがあった。
毎度毎度、申し訳なく思う。あの人達って、どれくらい前から並んでいるのだろう。
「あぁ。出迎えご苦労。さっそくだが、ノアサリーナに寝る場所を。湯浴みは明日でよかろう。着替えと、身の清めは、起こさず丁寧に。上級触媒の利用も許可する」
ぼんやり考え事しているオレとは違い、カロンロダニアがテキパキと手配する。横にいる紫の短髪をした人は……タイロダインだっけかな。
ノアは、カガミが寝室へと連れて行った。10人近いメイドと一緒にゾロゾロと。
ピッキー達は、タイロダインの案内に従い、ミズキと一緒に寝室へと行く。
こういうのを見ると、カロンロダニアは貴族なのだと実感する。
「さて、まだ夜も始まったばかりだ。祖国では、酒を飲んだ後、水とスープで体を整えるものだが、どうかね?」
そんなカロンロダニアの提案。
飲んだ後に、スープか。
元の世界でいうと、締めのラーメンみたいなものかな。しかも、ヨラン王国以外の料理。異国情緒を感じられそうだ。
ということで、言葉に甘えることにした。
「紫?」
出てきたスープを見て、プレインが呟く。
スープが赤っぽい紫色をしていたのだ。さすが異世界、意外な色をした料理がでてきた。
白っぽい木製の器に、紫色が映える。しかし、不味そうな印象が無い。良い匂いがするからだろうか、不思議なものだ。
具は、玉葱っぽい野菜だけだ。とろみがある紫の液体にもかかわらず、さっぱりとした塩味のスープで美味しい。
「水も美味しいね」
途中から合流したミズキが、水を飲んで笑う。カガミもコクコクと頷いている。
確かに、水……いつも飲む水とは違うな。なんだか甘い感じがする。
「北方カジャカの氷を溶かしたものだよ」
「魔法の触媒にも、よく使われますね」
魔法の触媒?
サムソンの言葉で思い出す。カジャカ……よく聞く地名だな。ヨラン王国より遙か北にある土地なのだっけかな。
魔法の触媒でも、確かにカジャカの氷は、しょっちゅう出てくる。
「あぁ。解かして飲むと極上の水となる。加えて、我々が頻繁に使用する魔法の触媒としても欠かせない」
「そういえば、セルベテ様から教えていただいた触媒にも必要でした」
「セルベテ?」
カガミの言葉に、カロンロダニアが首を傾げた。
あれ?
セルベテが、スプリキト魔法大学に居ることを知らないのかな。
「えぇ、ノアちゃ……ノアサリーナ様が、手紙で、セルベテ様から白熊の使い魔について教えてもらっていました」
「そうか……セルベテが。あの者が……そうか」
あぁ。大学にいることではなくて、使い魔について教えた事が意外だったのか。
カロンロダニアの微笑みをみると、悪い気分ではなさそうだ。
そんな彼は、何かに気がついたように、ハッとした表情でオレを見て口を開く。
「そういえば、アダマンタイトで、太祖の手帳を修理したと聞いたのだが……」
太祖の手帳?
赤い手帳か。
「はい。お陰で中を確認することができました」
「うむ。ノアサリーナから聞いて驚いた。まさか、あの手帳にそのような秘密があったとはな。もっとも、タネを聞くと、あの中央の穴は疑ってしかたがないものだったか」
「たしかに……」
確かに、中央に穴が開いている手帳だからなぁ。
そして、カロンロダニアが太祖について教えてくれた。
それはグラムバウム魔法王国の建国にまつわる話だった。
かって、大きな災害があり、多くの人々が海を渡って北へと逃れたという。
彼らは大嵐にあい、遭難の結果、北方の土地にたどり着いた。
ところが、そこには既に人が住んでいて、限られた実りの良い土地を巡り争いがおこった。
そして争いに負け、行き場をなくした人々は住みよい土地から出る事を余儀なくされた。それから人々は、北へ北へと逃れるように放浪を続けたという。
その放浪のリーダー格が建国王であり、彼らに拾われたのが、太祖だという。
雪山に倒れていた太祖は、何か恐ろしい経験をしたらしく、何一つ自分のことは何も憶えていなかった。身につけていた服、そして武器。それから赤い手帳だけが手がかりだったそうだ。
自分の事は憶えていなかった太祖だが、それ以外の豊富な知識を持っていた。魔法による効率的な暖房の仕組みなど、彼は自らの知識を生かし建国に尽力したらしい。
建国王は太祖の働きに感謝し、その感謝の印として、リュフトクルス家を興すことを許した。
それがカロンロダニアの一族であるリュフトクルス伯爵家の興りだそうだ。
「太祖が残した物は4つある。ギリアにある別荘に、手帳、そして赤い剣……あとは、ノアサリーナにあげた遊戯箱だ」
そうカロンロダニアは語り、話を終えた。
あの遊戯箱も、太祖の物なのか。太祖の持っている物は全部裏があるよな。そのパターンからいくと、何かありそうだ。
「太祖とは凄い方だったのですね。手帳も、別荘も、驚くものでした」
「あぁ、確かに。それにしても、少し話し込んでしまった。もう夜も遅い」
カロンロダニアに頷き、お開きとする。
彼の話は面白かったが、一つの疑問ができた。
あの手帳は、ウルクフラの持ち物だった。それから、彼は獣人だ。
しかし、ノアの先祖は獣人ではなく人間だという。では、太祖とウルクフラの関係は?
ずっと考えていたが答えは思いつかず、オレは眠りについた。
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