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第三十一章 究極の先へ、賑やかに
ぎるどちょうだいり
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フェッカトールに会った次の日。初出勤の日。
茶釜の引く馬車に揺られギリアの町へと乗り込む。
それから、やや遅れて魔術士ギルドへとたどり着くと、予想外の光景が出迎えてくれた。
広々とした庭に、木造2階建ての館。本当の魔術士ギルドは別の場所で建築中だと聞いてはいるが、仮住まいのこの館だって立派なものだ。
そこには、広々とした庭を埋め尽くす荷馬車の群れ、至る所で響く怒声。
大混乱の現場が待っていた。
「これは聞いてない」
大混乱の現場を見て、思わず言葉が漏れる。
もっと緩い現場ではなかったのか。これは、どう考えても炎上現場の貫禄を放つヤバい場所だ。
「大変そうだよね。がんばって」
お腹が痛くなってきた状況のオレに、茶釜にのったミズキは気楽なものだ。
ヒラヒラと手をふり、さっさと去ってしまった。
まったく。
気を取り直し、ギルドの建物に向かう。
近づくにつれて、混乱具合がはっきりわかってきて、いきなり辛い。
赤茶色のケープを羽織ったギルド職員が、お客につめよられている風景をあちこちでみかけた。
こうしてみると、ケープの下はローブ姿だったり、そこらへんの町の人っぽかったりと、バラエティに富んでいる。加えて、どの人もそこまで裕福じゃなさそうだ。破れた服を着た人もいたりする。
「あっ」
そんな中、一人のギルド職員がオレを見て声をあげた。
そこらへんにいそうな町娘がケープを羽織ったといった風貌の彼女は、駆け寄ってきて「なんとかしてください」と言った。
この混乱の原因はオレらしい。
魔術士ギルド職員のうち、貴族階級の人が奴隷の下に付けるかとボイコットしたという。
そのため通常の業務が回らず、半日が過ぎたそうだ。
説明を聞きながら、ギルドの建物に入ると、壁に体をあずけ床にへたり込んでいる数人の職員が目に入った。
「あれは?」
「複製の魔法で疲弊した人達です」
ギルドの仕事のうち、メインとなるのは複製魔法の行使だという。
他にも触媒や魔導具の販売、資料の管理などもあるが、一番は複製魔法の行使なのだそうだ。
そして、今の混乱は複製魔法の申請を回せていない事が理由だとわかった。
椅子に座ってふんぞり返り日中を過ごそうと思っていたけれど、そんなわけにはいかないようだ。
とりあえず、複製の魔法を使いまくって、現状をなんとかするか。
「あぁっ、触媒は我らが」
ギルドの一角、複製の魔法陣が描いてある床に近づくと、職員が声をあげ近づいてきた。
なんだろうと眺めるオレの前で、複数の職員が床に触媒を並べていく。
よく分からないが慣れた様子で触媒を選んで床に置いている。
複製するのは穀物で、触媒はそれにあった物なのだろう。
触媒があれば複製の魔法では魔力の消費は少ない。
この状況で、複製の魔法に苦労する理由がわからない。そんなに大変かな……これ。
少しだけ疑問はあったが、そこから先はひたすら複製の魔法を唱えた。
「凄い」
「大魔法使いの噂どおり」
「流石だ……」
ざわめきが聞こえた。
オレとしては適当に魔法を使っていただけだが、周りにはそう見えないようだ。
複製の魔法を何回使ったかはわからないが、なんとかお客をはかすことができた。
簡単な魔法とはいえ、これだけ回数を使うと流石にキツい。
「終わった……」
ようやく荒れ狂った状況が落ち着き、ギルド長の部屋で一息つく。
木造の建物で、どの部屋も代わり映えのしない魔術士ギルドだが、ギルド長の部屋は立派だ。
本棚には大量の本が並び、立派な暖炉があつらえてあった。
それにしても、どうしたものか。
疲労から少しだけ回復したギルド職員に、後をひきついだが、どの職員もあまり複製の魔法が得意でないようだった。
この調子だと、明日以降も大変な事になりそうだ。
やれやれと思いながらも、ホッと一息ついていると、目の前にコトリとお茶が置かれた。
「お見事でした」
見上げると、最初に声をかけてきた女性がいた。
お茶を注いでくれた彼女の名前は、リッサリア。
商業ギルドから魔術士ギルドに派遣された人間らしい。担当は、持ち込まれた魔導具や触媒の目利きなのだとか。
彼女のみならず、立ち上げたばかりの魔術士ギルドには、いくつかのギルドから人が派遣されているという。後は、商業ギルドや冒険者ギルドで募った人達。
貴族出身を除けばそういう構成らしい。どうりで、皆の服装がバラバラなわけだ。
「明日は、もっと人が減るでしょう」
説明を聞いている最中、彼女はそういって溜め息をついた。
「お客が減るってこと?」
「いえ、職員が……。貴族出身の方々は明日も来ないでしょう。さすがに今日は手当がフイになるので勤めるでしょうが、明日は来ないのではないかと」
げっ。職員は、日当制なのか。今日の賃金もらって、明日も辛いとなれば来なくなると……。
ヤバい。ふんぞり返っていれば大丈夫かと思っていたら、そんな状況じゃなかった。
問題有りとはいえ、仕事はまだまだ続く。
初日は、延々と複製の魔法を使い続ける羽目になった。
もっとも全部一人でやったわけではない。魔法を使って過ごすうちに、複製の魔法にも難易度があることがわかったのだ。
複製が難しい代物はオレが担当して、簡単な物の複製はギルド職員に担当してもらう。
そうして進めることで、一日の終わり頃には大体10件のうち3件は人に任せることができた。
なんとか一日を乗り切ることができたわけだ。
「また、明日もよろしく」
迎えにきたミズキの馬車に乗る前に、複製魔法を楽にするための工夫を考えることを伝えると共に、柔やかに接する。
帰るまで油断せず、これからのために行動する。とりあえず戦友作戦だ。
苦楽を共にしようと柔やかに接する人を置いて去るのは罪悪感があるものなのだ。
どうせなら一緒に地獄へ落ちて欲しい。というよりオレ一人は嫌だ。
「あぁ、お酒ってさマヨネーズを触媒にすると、スルスル増えるんだよね」
そして、ミズキとの帰り道の雑談でいきなり良い情報を聞く。
「複製って、触媒でそんなに変わるんだ」
「触媒で、味とか増える量って結構変わるもんだよ」
そういえば、エリクサーを増やした時がそうだったな。
あれと同じか。そうとなれば、ローコストで役に立つ触媒を探すのは一つの手だ。
屋敷に帰ってからも、対策を考える。
書物を読み、皆にも相談して、今後について詰めていく。
こうして魔術士ギルドでの日々は始まった。
茶釜の引く馬車に揺られギリアの町へと乗り込む。
それから、やや遅れて魔術士ギルドへとたどり着くと、予想外の光景が出迎えてくれた。
広々とした庭に、木造2階建ての館。本当の魔術士ギルドは別の場所で建築中だと聞いてはいるが、仮住まいのこの館だって立派なものだ。
そこには、広々とした庭を埋め尽くす荷馬車の群れ、至る所で響く怒声。
大混乱の現場が待っていた。
「これは聞いてない」
大混乱の現場を見て、思わず言葉が漏れる。
もっと緩い現場ではなかったのか。これは、どう考えても炎上現場の貫禄を放つヤバい場所だ。
「大変そうだよね。がんばって」
お腹が痛くなってきた状況のオレに、茶釜にのったミズキは気楽なものだ。
ヒラヒラと手をふり、さっさと去ってしまった。
まったく。
気を取り直し、ギルドの建物に向かう。
近づくにつれて、混乱具合がはっきりわかってきて、いきなり辛い。
赤茶色のケープを羽織ったギルド職員が、お客につめよられている風景をあちこちでみかけた。
こうしてみると、ケープの下はローブ姿だったり、そこらへんの町の人っぽかったりと、バラエティに富んでいる。加えて、どの人もそこまで裕福じゃなさそうだ。破れた服を着た人もいたりする。
「あっ」
そんな中、一人のギルド職員がオレを見て声をあげた。
そこらへんにいそうな町娘がケープを羽織ったといった風貌の彼女は、駆け寄ってきて「なんとかしてください」と言った。
この混乱の原因はオレらしい。
魔術士ギルド職員のうち、貴族階級の人が奴隷の下に付けるかとボイコットしたという。
そのため通常の業務が回らず、半日が過ぎたそうだ。
説明を聞きながら、ギルドの建物に入ると、壁に体をあずけ床にへたり込んでいる数人の職員が目に入った。
「あれは?」
「複製の魔法で疲弊した人達です」
ギルドの仕事のうち、メインとなるのは複製魔法の行使だという。
他にも触媒や魔導具の販売、資料の管理などもあるが、一番は複製魔法の行使なのだそうだ。
そして、今の混乱は複製魔法の申請を回せていない事が理由だとわかった。
椅子に座ってふんぞり返り日中を過ごそうと思っていたけれど、そんなわけにはいかないようだ。
とりあえず、複製の魔法を使いまくって、現状をなんとかするか。
「あぁっ、触媒は我らが」
ギルドの一角、複製の魔法陣が描いてある床に近づくと、職員が声をあげ近づいてきた。
なんだろうと眺めるオレの前で、複数の職員が床に触媒を並べていく。
よく分からないが慣れた様子で触媒を選んで床に置いている。
複製するのは穀物で、触媒はそれにあった物なのだろう。
触媒があれば複製の魔法では魔力の消費は少ない。
この状況で、複製の魔法に苦労する理由がわからない。そんなに大変かな……これ。
少しだけ疑問はあったが、そこから先はひたすら複製の魔法を唱えた。
「凄い」
「大魔法使いの噂どおり」
「流石だ……」
ざわめきが聞こえた。
オレとしては適当に魔法を使っていただけだが、周りにはそう見えないようだ。
複製の魔法を何回使ったかはわからないが、なんとかお客をはかすことができた。
簡単な魔法とはいえ、これだけ回数を使うと流石にキツい。
「終わった……」
ようやく荒れ狂った状況が落ち着き、ギルド長の部屋で一息つく。
木造の建物で、どの部屋も代わり映えのしない魔術士ギルドだが、ギルド長の部屋は立派だ。
本棚には大量の本が並び、立派な暖炉があつらえてあった。
それにしても、どうしたものか。
疲労から少しだけ回復したギルド職員に、後をひきついだが、どの職員もあまり複製の魔法が得意でないようだった。
この調子だと、明日以降も大変な事になりそうだ。
やれやれと思いながらも、ホッと一息ついていると、目の前にコトリとお茶が置かれた。
「お見事でした」
見上げると、最初に声をかけてきた女性がいた。
お茶を注いでくれた彼女の名前は、リッサリア。
商業ギルドから魔術士ギルドに派遣された人間らしい。担当は、持ち込まれた魔導具や触媒の目利きなのだとか。
彼女のみならず、立ち上げたばかりの魔術士ギルドには、いくつかのギルドから人が派遣されているという。後は、商業ギルドや冒険者ギルドで募った人達。
貴族出身を除けばそういう構成らしい。どうりで、皆の服装がバラバラなわけだ。
「明日は、もっと人が減るでしょう」
説明を聞いている最中、彼女はそういって溜め息をついた。
「お客が減るってこと?」
「いえ、職員が……。貴族出身の方々は明日も来ないでしょう。さすがに今日は手当がフイになるので勤めるでしょうが、明日は来ないのではないかと」
げっ。職員は、日当制なのか。今日の賃金もらって、明日も辛いとなれば来なくなると……。
ヤバい。ふんぞり返っていれば大丈夫かと思っていたら、そんな状況じゃなかった。
問題有りとはいえ、仕事はまだまだ続く。
初日は、延々と複製の魔法を使い続ける羽目になった。
もっとも全部一人でやったわけではない。魔法を使って過ごすうちに、複製の魔法にも難易度があることがわかったのだ。
複製が難しい代物はオレが担当して、簡単な物の複製はギルド職員に担当してもらう。
そうして進めることで、一日の終わり頃には大体10件のうち3件は人に任せることができた。
なんとか一日を乗り切ることができたわけだ。
「また、明日もよろしく」
迎えにきたミズキの馬車に乗る前に、複製魔法を楽にするための工夫を考えることを伝えると共に、柔やかに接する。
帰るまで油断せず、これからのために行動する。とりあえず戦友作戦だ。
苦楽を共にしようと柔やかに接する人を置いて去るのは罪悪感があるものなのだ。
どうせなら一緒に地獄へ落ちて欲しい。というよりオレ一人は嫌だ。
「あぁ、お酒ってさマヨネーズを触媒にすると、スルスル増えるんだよね」
そして、ミズキとの帰り道の雑談でいきなり良い情報を聞く。
「複製って、触媒でそんなに変わるんだ」
「触媒で、味とか増える量って結構変わるもんだよ」
そういえば、エリクサーを増やした時がそうだったな。
あれと同じか。そうとなれば、ローコストで役に立つ触媒を探すのは一つの手だ。
屋敷に帰ってからも、対策を考える。
書物を読み、皆にも相談して、今後について詰めていく。
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