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後日談 その2 出世の果てに
漫画とお仕事
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仕事を受けて、早1ヶ月。オレは漫画を読んで笑っていた。
ひとしきり漫画を読んで、伸びをする。
久しぶりに読む漫画は最高だ。
「そろそろ、見回りにいくか」
小さく呟いたあと、部屋に据え付けられた魔法のベルを鳴らし、部屋を出る。
「何かご用ですかな。王子」
すぐさま、1人の小柄な老人が出迎えてくれた。車輪のついた鳥かごを車椅子代わりにしている老人クワァイツ。ヨラン王が仕事の相談役としてつけてくれた人だ。
ちなみに彼が乗っている鳥かごの中には、ツルハシを持ったモグラ……土の精霊ノームがいる。ノームは鳥かごを押して動かす役目だ。もっとも、ノームが押さなくても鳥かごは動く。というよりノームが抵抗しても鳥かごは動く。別にノームは必要なくて、ただ遊んでいるだけらしい。
「舞踏会場を見に行こうと思ってね」
「では、ただちに準備をしましょう」
オレの言葉を受けて、すぐさま小型の馬車が手配されて、舞踏会場まで進んでくれる。
別に一人で行ってもいいのだが、役人への指示があるときにクワァイツがいると助かるのだ。
当初の予感とは裏腹に、仕事は楽勝だった。何処に行っても納期に追われる我が人生。
ところがどっこい、オレには頼れる同僚と、ヨラン王が手配してくれた役人団という力強い味方がいた。それらがあって、オレは楽勝に仕事を進めることができている。
「おぉ、王子」
舞踏会場に行くと、ガタイのいい大工が駆け寄ってくる。現場の大工を取りまとめるオンジェ親方だ。
「順調ですか?」
「えぇ。王子が手配してくれたおかげで、予定よりも早く終わるかもしれません」
「くれぐれも無理しないよう、事故に気を付けて下さい」
オレの言葉に親方は自分のハゲ頭をぱしりと叩いて笑う。
親方をはじめとする大工達は、王子であるオレと自由に話せる許可をだしたことや、人員を増やしたことで、とても協力的になった。
そう。オレは人員を追加した。
仕事を受けて最初にやった状況調査で、大工の不足が明らかになったからだ。
モードザンルは代わりがいくらでもいると言っていたが、現実はそうでなかった。
大工は誰でも良いわけではない。王城の仕事をするからには、身元がしっかりした者である必要がある。そして、それなりの腕前も要求される。
加えて今は王城のあちこちで修繕作業をはじめとした工事が進められている。それぞれの場を仕切る親方は、現場監督となる役人に急かされるなか、怪我などで不足しがちな大工を手配するのにやっきだった。
そんな状況で、オレは他の工事現場から人を引き抜くことで問題をクリアした。
引き抜いたのは、数多くある中でも話が通しやすい現場。
一つはミズキの願いで作成中の飛行船。もう一つは、カガミの要求により増設される温室だ。
カガミとミズキに了承を得たのち、現場監督の役人と場を仕切る親方へと話をした。
王子であるオレが直接話をしたことが親方達には嬉しかったらしい。すぐに人員を拠出してくれた。
「王子、報告書でございます」
親方との雑談を終えたタイミングで、舞踏会場の整備を担当する役人から報告書を受け取る。担当しているのはテオルポ。ノアの名前を出して鞭を振るっていた貴族だ。
工事が終了したのちに大工達へ謝罪すること、そして現場監督を全うすることを条件に、オレに鞭を振るった件は不問にする約束をした。
引き継ぎの手間を考えればテオルポにそのまま仕事をさせたほうが良いという判断だ。
オンジェ親方は不満そうだったが、彼に直接オレと話をする許可を与え、そしてテオルポに監視をつけるという提案で納得してくれた。
「では、後はよろしく」
ひとしきり報告を受けてオレは舞踏会場を後にする。
ちらりと大工仕事を手伝っているトッキーとピッキーの姿が見えた。本当に頑張り屋だ。
そして、次の目的地に向かうことにした。
「リーダ様、何かあればお呼び頂くだけで宜しかったのですが」
オレが王城の一室に顔を出すと、役人の一人が近づいてくる。
彼女の名前は、ヴェリア。クワァイツが手配した役人の一人で、今回はノアの誕生日における舞踏会場の設営準備をお願いしている。
「いえ。様子を見に来ただけですので」
「左様でしたか。全て順調にございます。これも、皆様のおかげにございます」
ヴェリアが周りの役人に指示をだしつつ言った。
そうなのだ。誕生日会の準備には、同僚達やレイネアンナにも協力をお願いしている。立っている者は親でも使えという精神だ。
というより、オレ一人が働くのは嫌なので巻き込んだ。
「あっ、リーダ、来ていたんですね」
そんなカガミがこちらにやって来る。
「まぁね。様子を見にね。順調でなにより、プレインとミズキは?」
「プレイン君は音楽隊と練習中です。ミズキはノアちゃんと遠乗りにいくらしいですよ。ところでリーダ……」
「そっか。まぁ、んじゃ、カガミ君も頑張ってくれたまえ」
何か小言を言われそうな予感がしたので、その場をそそくさと後にした。
とりあえず、仕事は順調。
人に任せているおかげで時間はたっぷり余る。
もちろんオレも仕事を頑張っている。この1ヶ月、職人の手配に、クワァイツが持ち込む諸々の仕事……さらにはタイウァス神の手伝いもしたのだ。
タイワァス神に頼まれて、1回元の世界にもどり、いろいろとテストをした。
経過時間や、持ち込める品などの確認だ。
2つの世界の座標を調整したいとタイウァス神が言うので協力した。
その時に、ついでに漫画を大人買いして戻ってきた。
おかげで1ヶ月の間、漫画を読んでゴロゴロするという至福の時間をすごせた。
ちなみにスマホなどは持ち込めない。というよりバッテリーがあるものは持ち込めないのだ。タイウァスは、バッテリーが持つエネルギー量が巨大で危険だから弾いていると言っていた。
「次は歴史ものを買ってこようかな。あの全60巻のやつ、1回一気読みしたかったしな」
「何か言われましたかな?」
帰りの馬車で、これからの事を考えていたら思わず口に出ていた。
「あぁ、いえ。ちょっと予定を少し……」
同乗したクワァイツにあわてて弁明する。
そして部屋に戻る。
「では、王子。こちらの手紙をお願いしますじゃ。分からない事があれば何時でもお呼びを」
そう言ったクワァイツから手紙束を受け取って、部屋に入る。
手紙の文面を見ると、誕生日会の招待状のようだ。オレはこれにサインする。前もやったから問題無い。
それほど時間をかけずに全部のサインを終えて、クワァイツに渡したのち、オレは漫画を手に取った。
さてと、のんびり時間の再開だ。
ひとしきり漫画を読んで、伸びをする。
久しぶりに読む漫画は最高だ。
「そろそろ、見回りにいくか」
小さく呟いたあと、部屋に据え付けられた魔法のベルを鳴らし、部屋を出る。
「何かご用ですかな。王子」
すぐさま、1人の小柄な老人が出迎えてくれた。車輪のついた鳥かごを車椅子代わりにしている老人クワァイツ。ヨラン王が仕事の相談役としてつけてくれた人だ。
ちなみに彼が乗っている鳥かごの中には、ツルハシを持ったモグラ……土の精霊ノームがいる。ノームは鳥かごを押して動かす役目だ。もっとも、ノームが押さなくても鳥かごは動く。というよりノームが抵抗しても鳥かごは動く。別にノームは必要なくて、ただ遊んでいるだけらしい。
「舞踏会場を見に行こうと思ってね」
「では、ただちに準備をしましょう」
オレの言葉を受けて、すぐさま小型の馬車が手配されて、舞踏会場まで進んでくれる。
別に一人で行ってもいいのだが、役人への指示があるときにクワァイツがいると助かるのだ。
当初の予感とは裏腹に、仕事は楽勝だった。何処に行っても納期に追われる我が人生。
ところがどっこい、オレには頼れる同僚と、ヨラン王が手配してくれた役人団という力強い味方がいた。それらがあって、オレは楽勝に仕事を進めることができている。
「おぉ、王子」
舞踏会場に行くと、ガタイのいい大工が駆け寄ってくる。現場の大工を取りまとめるオンジェ親方だ。
「順調ですか?」
「えぇ。王子が手配してくれたおかげで、予定よりも早く終わるかもしれません」
「くれぐれも無理しないよう、事故に気を付けて下さい」
オレの言葉に親方は自分のハゲ頭をぱしりと叩いて笑う。
親方をはじめとする大工達は、王子であるオレと自由に話せる許可をだしたことや、人員を増やしたことで、とても協力的になった。
そう。オレは人員を追加した。
仕事を受けて最初にやった状況調査で、大工の不足が明らかになったからだ。
モードザンルは代わりがいくらでもいると言っていたが、現実はそうでなかった。
大工は誰でも良いわけではない。王城の仕事をするからには、身元がしっかりした者である必要がある。そして、それなりの腕前も要求される。
加えて今は王城のあちこちで修繕作業をはじめとした工事が進められている。それぞれの場を仕切る親方は、現場監督となる役人に急かされるなか、怪我などで不足しがちな大工を手配するのにやっきだった。
そんな状況で、オレは他の工事現場から人を引き抜くことで問題をクリアした。
引き抜いたのは、数多くある中でも話が通しやすい現場。
一つはミズキの願いで作成中の飛行船。もう一つは、カガミの要求により増設される温室だ。
カガミとミズキに了承を得たのち、現場監督の役人と場を仕切る親方へと話をした。
王子であるオレが直接話をしたことが親方達には嬉しかったらしい。すぐに人員を拠出してくれた。
「王子、報告書でございます」
親方との雑談を終えたタイミングで、舞踏会場の整備を担当する役人から報告書を受け取る。担当しているのはテオルポ。ノアの名前を出して鞭を振るっていた貴族だ。
工事が終了したのちに大工達へ謝罪すること、そして現場監督を全うすることを条件に、オレに鞭を振るった件は不問にする約束をした。
引き継ぎの手間を考えればテオルポにそのまま仕事をさせたほうが良いという判断だ。
オンジェ親方は不満そうだったが、彼に直接オレと話をする許可を与え、そしてテオルポに監視をつけるという提案で納得してくれた。
「では、後はよろしく」
ひとしきり報告を受けてオレは舞踏会場を後にする。
ちらりと大工仕事を手伝っているトッキーとピッキーの姿が見えた。本当に頑張り屋だ。
そして、次の目的地に向かうことにした。
「リーダ様、何かあればお呼び頂くだけで宜しかったのですが」
オレが王城の一室に顔を出すと、役人の一人が近づいてくる。
彼女の名前は、ヴェリア。クワァイツが手配した役人の一人で、今回はノアの誕生日における舞踏会場の設営準備をお願いしている。
「いえ。様子を見に来ただけですので」
「左様でしたか。全て順調にございます。これも、皆様のおかげにございます」
ヴェリアが周りの役人に指示をだしつつ言った。
そうなのだ。誕生日会の準備には、同僚達やレイネアンナにも協力をお願いしている。立っている者は親でも使えという精神だ。
というより、オレ一人が働くのは嫌なので巻き込んだ。
「あっ、リーダ、来ていたんですね」
そんなカガミがこちらにやって来る。
「まぁね。様子を見にね。順調でなにより、プレインとミズキは?」
「プレイン君は音楽隊と練習中です。ミズキはノアちゃんと遠乗りにいくらしいですよ。ところでリーダ……」
「そっか。まぁ、んじゃ、カガミ君も頑張ってくれたまえ」
何か小言を言われそうな予感がしたので、その場をそそくさと後にした。
とりあえず、仕事は順調。
人に任せているおかげで時間はたっぷり余る。
もちろんオレも仕事を頑張っている。この1ヶ月、職人の手配に、クワァイツが持ち込む諸々の仕事……さらにはタイウァス神の手伝いもしたのだ。
タイワァス神に頼まれて、1回元の世界にもどり、いろいろとテストをした。
経過時間や、持ち込める品などの確認だ。
2つの世界の座標を調整したいとタイウァス神が言うので協力した。
その時に、ついでに漫画を大人買いして戻ってきた。
おかげで1ヶ月の間、漫画を読んでゴロゴロするという至福の時間をすごせた。
ちなみにスマホなどは持ち込めない。というよりバッテリーがあるものは持ち込めないのだ。タイウァスは、バッテリーが持つエネルギー量が巨大で危険だから弾いていると言っていた。
「次は歴史ものを買ってこようかな。あの全60巻のやつ、1回一気読みしたかったしな」
「何か言われましたかな?」
帰りの馬車で、これからの事を考えていたら思わず口に出ていた。
「あぁ、いえ。ちょっと予定を少し……」
同乗したクワァイツにあわてて弁明する。
そして部屋に戻る。
「では、王子。こちらの手紙をお願いしますじゃ。分からない事があれば何時でもお呼びを」
そう言ったクワァイツから手紙束を受け取って、部屋に入る。
手紙の文面を見ると、誕生日会の招待状のようだ。オレはこれにサインする。前もやったから問題無い。
それほど時間をかけずに全部のサインを終えて、クワァイツに渡したのち、オレは漫画を手に取った。
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