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第1章 雌伏の幼少期編

014 腕白幼児2人と二宮金次郎像ごっこ

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「茜ちゃん、元気になってくれたのはよかったけど……」
「2人になって倍、どころじゃなくて、秀治郎君の腕白っぷりまでパワーアップして倍以上になっちゃったわね……」

【通常スキル】【幸運の置物】を取得してから半年と少し後。
 4歳になった俺と茜ちゃんの現在のステータスはこちら。

☆成長タイプ:マニュアル
☆体格補正値 -60%
☆年齢補正値 -40%
残り経験ポイント4
【Bat Control】▼△
   50(G)
【Swing Power】▼△
   50(G)
【Total Agility】▼△
   50(G)
【Throwing Accurate】▼△
   50(G)
【Grabbing Technique】▼△
   50(G)
【Pitching Speed】▼△
   40     
【Total Vitality】
  1000(SS+)
【Pitching Accurate】▼△
   50(G)
ポジション適正へ⇒
変化球取得画面へ⇒
スキル取得画面へ⇒
その他⇒

状態/戦績/▽関係者/プレイヤースコープ
・鈴木茜(成長タイプ:マニュアル) 〇能力詳細 〇戦績
 BC:6 SP:5 TAG:9 TAC:8 GT:13
 PS:20 TV:336 PA:6
 残り経験ポイント:3 好感度:100+/100☆

 おっと、茜ちゃんの【経験ポイント】が増えてるな。
 また【Total Vitality】に注いでおこう。

 数値でも分かるように、身動きすら困難だった彼女はもういない。
 今や奇病による虚弱体質など夢か幻だったかのように、俺の後に続いて元気いっぱい走り回っている。
 特化させているおかげで、体力だけなら既に保育園で2番目だ。
 ただ、他のステータスは貧弱なので走る速度は遅い。
 よくこけもする。
【Total Vitality】を上げ終わり、敏捷性に関わる【Total Agility】も少し上げた俺が普通に走ると追いつけなくなってしまう。
 距離が空き過ぎると茜ちゃんは涙目になるので、普段は程々に抑えている。
 勿論、転んだらすぐ助けに行く。

「しゅーくん」

 呼びかけられて速度を緩める。

「あーちゃん、疲れた?」

 茜ちゃん改めあーちゃんに尋ねると小さな頷き。
 あーちゃんは、彼女が俺をしゅーくんと呼ぶのに合わせた呼び名だ。

 虚弱体質が影響したのか、元々そういう性格なのか。
 あーちゃんは活発な動きとは裏腹に、口数が少なくて表情も乏しい。
 主張も少ない。
 そんな彼女が「疲れた?」と聞かれて頷くなら、もう疲れ果てているレベルだ。

「うん。じゃあ、あっちで遊ぼう?」

 手を差し出すと、自然な動きで横に来て少し嬉しそうに手を繋ぐあーちゃん。
 彼女の少し嬉しそうは、普通の子なら大喜びだ。
 毎日毎日疲れ果てる程走り回っても、まだつき合ってくれるのは偏に好感度の高さのおかげだろう。

「また二宮金次郎像ごっこでいい?」
「ん!」

 小さく弾んだ肯定。
 それを受け、室内に入ってすぐ絵本を取りに行く。
 子供特有の謎の遊びを装った、二宮金次郎像ごっこ。
 それは薪を背負いながら本を読むあの像を真似て、あーちゃんをおんぶしながら絵本を読む遊び(トレーニング)だ。
 あーちゃんが疲れた時の俺の鍛錬と、教養アップを兼ねている。

 まあ、背負子はないので絵本を持つのはあーちゃんだけど。

 筋トレとして問題点があるかどうかは分からないが、そこは【生得スキル】【怪我しない】を頼みにしている。
 このスキルがあれば、本来よろしくないトレーニング方法でも筋肉を傷めたりするようなことはないはずだ。
 例えば、昔は横行していて今では危険だからと廃れたウサギ跳びでさえも。
【成長タイプ:マニュアル】である俺としては、【経験ポイント】さえ稼ぐことができれば問題ないのだ。
 ※よい子はちゃんと科学的根拠のある指導を受けましょう。

「よし。あーちゃん、しっかり捕まっててね」
「ん!」

 俺の肩から顔を出し、頬と頬を合わせるようにしながら力を込めるあーちゃん。

「すりすり」

 柔らかな頬っぺたの感触に微笑みながら、ゆっくり歩き出す。
 あーちゃんは何故かこの二宮金次郎像ごっこが気に入っているらしい。
 ただ、周りから見ると奇行なので、他の子達は近寄ってこない。
 ちょっと浮いている2人だ。
 元々俺は精神年齢の違いで孤立気味だったので、特に気にはしていない。
 小学校から友達を作ればいいと思ってる。
 けど、あーちゃんはそもそも他の子には全く興味がない様子だ。

「すりすり、すりすり」

 うーん。
 元気になったのはいいけど……。
 ちゃんとコミュニケーション能力が育つか、少し心配だな。
 まあ、虚弱体質のせいで少し前まで他人と触れ合うこともままならなかったことを思うと、多くを求め過ぎかもしれないけど。
 その辺は、追々フォローしていくとしよう。
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