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第二十一話:暴かれた悪意と、真実の標的
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ゲルハルト侯爵が魔力を注ぐと、新型兵器『プロミネンス』は不気味な光を放ち始めた。
その巨大な弩の先端が、空に向けられていく。観客たちは、これから始まるであろう壮大なデモンストレーションを、息を詰めて見守っていた。
私も、その一人だった。
しかし、私の目は兵器ではなく、それを操作するゲルハルト侯爵の、自信に満ちた横顔に釘付けになっていた。そして、私の耳には、彼の邪悪な企みの詳細が、はっきりと聞こえていた。
(さあ、始めよう。まずは、あらかじめ仕込んでおいた微弱な魔力反応弾を、騎士団の詰所の裏手に撃ち込む。誰も傷つけず、しかし、あたかも『敵の奇襲』であるかのように見せかける…)
彼の思考を読み、私は息を呑んだ。
自作自演の襲撃。それによって観閲式を混乱させ、その上で、この新型兵器の「防衛能力」を劇的にアピールするつもりなのだ。
(そして、混乱の最中、アイゼンブルグ…お前の軍服に仕込んだ『発信機』に、第二射を撃ち込む。もちろん、威力は殺してある。だが、国王陛下の御前で、兵器がお前を『敵』と誤認して攻撃したという事実は残る。管理不行き届き、そして敵との内通の疑い…それで、お前は終わりだ!)
全身から、血の気が引いた。
なんという、卑劣で、周到な罠。
カイル公爵様の軍服に、発信機が…? いつの間に?
彼の潔白を証明する術など、どこにもない。すべてはゲルハルト侯爵の筋書き通りに進み、公爵様は、国家反逆の濡れ衣を着せられてしまう。
(だめ…! 知らせなければ…!)
けれど、どうやって?
観客席の喧騒の中、私の声など届くはずもない。席を立とうとすれば、衛兵に止められるのが関の山だ。
その時、ゲルハルト侯爵が、不意に、こちらを――貴族席の方を、一瞥した。
その瞳は、獲物をいたぶる蛇のように、冷たく、そして愉悦に満ちていた。
彼は、カイル公爵様が失脚する様を、私に見せつけようとしているのだ。
私は、その視線をまっすぐに受け止めた。
恐怖で震えそうになる体を、必死で叱咤する。
大丈夫。私には、この力がある。
私は、目を閉じ、意識を極限まで集中させた。
雑音を消し、彼の思考だけを捉える。そして、ただ受け取るだけでなく、もっと深く、その思考の奥底へと潜っていくようなイメージを、頭の中で描いた。
(公爵様の軍服の…どこに発信機が…? 教えて…!)
すると、奇跡が起きた。
まるで、彼の記憶を覗き見るかのように、私の脳裏に、一つの映像が浮かび上がったのだ。
それは、観閲式の直前、侯爵がカイル公爵様に「肩の埃がついておりますぞ」と親しげに近づき、その肩章の裏に、小さな金属片を仕込む光景だった。
右肩の、肩章の裏!
私は、目を見開いた。
もう、迷っている暇はない。私が動かなければ、全てが終わってしまう。
私は、隣に座っていた父様の腕を、強く掴んだ。
「父様! お願いがございます!」
「エメリア? どうしたんだ、急に」
「あちらの、アイゼンブルグ公爵様の、右肩の肩章の裏に、何か『金属片』のようなものがついていないか、見ていただけますか!? とても、重要なことなのです!」
私の、ただならぬ剣幕に、父様は戸惑いながらも、懐からオペラグラスを取り出し、カイル公爵様の方へと向けた。
「右肩の、肩章…? うーん、ここからでは、よく見えんな…。だが、何かが、不自然に光っているような気も…」
その時、広場に、第一射が放たれる轟音が響き渡った。
空に放たれた光弾が、騎士団詰所の裏手で炸裂し、黒い煙が上がる。広場は、一瞬にしてパニックに包まれた。
「敵襲だー!」
「陛下をお守りしろ!」
ゲルハルト侯爵の、筋書き通りの混乱。
そして、彼は不敵な笑みを浮かべ、第二射を放つべく、『プロミネンス』の照準を、ゆっくりとカイル公爵様へと向け始めた。
もう、間に合わない――!
誰もがそう思った、その瞬間だった。
「待てーーーっ!!」
広場に響き渡ったのは、カイル公爵様の、雷鳴のような声だった。
彼は、自らの右肩の肩章を、躊躇なく引きちぎると、それを高く掲げた。
その裏側には、紅い光を明滅させる、小さな金属片が、確かに貼り付けられていたのだ。
「ゲルハルト侯爵! これが、貴様の言う『真実の標的』か!」
その光景に、広場にいた誰もが、息を呑んだ。
ゲルハルト侯爵の顔から、勝利の笑みが、凍りついたように消えていく。
その巨大な弩の先端が、空に向けられていく。観客たちは、これから始まるであろう壮大なデモンストレーションを、息を詰めて見守っていた。
私も、その一人だった。
しかし、私の目は兵器ではなく、それを操作するゲルハルト侯爵の、自信に満ちた横顔に釘付けになっていた。そして、私の耳には、彼の邪悪な企みの詳細が、はっきりと聞こえていた。
(さあ、始めよう。まずは、あらかじめ仕込んでおいた微弱な魔力反応弾を、騎士団の詰所の裏手に撃ち込む。誰も傷つけず、しかし、あたかも『敵の奇襲』であるかのように見せかける…)
彼の思考を読み、私は息を呑んだ。
自作自演の襲撃。それによって観閲式を混乱させ、その上で、この新型兵器の「防衛能力」を劇的にアピールするつもりなのだ。
(そして、混乱の最中、アイゼンブルグ…お前の軍服に仕込んだ『発信機』に、第二射を撃ち込む。もちろん、威力は殺してある。だが、国王陛下の御前で、兵器がお前を『敵』と誤認して攻撃したという事実は残る。管理不行き届き、そして敵との内通の疑い…それで、お前は終わりだ!)
全身から、血の気が引いた。
なんという、卑劣で、周到な罠。
カイル公爵様の軍服に、発信機が…? いつの間に?
彼の潔白を証明する術など、どこにもない。すべてはゲルハルト侯爵の筋書き通りに進み、公爵様は、国家反逆の濡れ衣を着せられてしまう。
(だめ…! 知らせなければ…!)
けれど、どうやって?
観客席の喧騒の中、私の声など届くはずもない。席を立とうとすれば、衛兵に止められるのが関の山だ。
その時、ゲルハルト侯爵が、不意に、こちらを――貴族席の方を、一瞥した。
その瞳は、獲物をいたぶる蛇のように、冷たく、そして愉悦に満ちていた。
彼は、カイル公爵様が失脚する様を、私に見せつけようとしているのだ。
私は、その視線をまっすぐに受け止めた。
恐怖で震えそうになる体を、必死で叱咤する。
大丈夫。私には、この力がある。
私は、目を閉じ、意識を極限まで集中させた。
雑音を消し、彼の思考だけを捉える。そして、ただ受け取るだけでなく、もっと深く、その思考の奥底へと潜っていくようなイメージを、頭の中で描いた。
(公爵様の軍服の…どこに発信機が…? 教えて…!)
すると、奇跡が起きた。
まるで、彼の記憶を覗き見るかのように、私の脳裏に、一つの映像が浮かび上がったのだ。
それは、観閲式の直前、侯爵がカイル公爵様に「肩の埃がついておりますぞ」と親しげに近づき、その肩章の裏に、小さな金属片を仕込む光景だった。
右肩の、肩章の裏!
私は、目を見開いた。
もう、迷っている暇はない。私が動かなければ、全てが終わってしまう。
私は、隣に座っていた父様の腕を、強く掴んだ。
「父様! お願いがございます!」
「エメリア? どうしたんだ、急に」
「あちらの、アイゼンブルグ公爵様の、右肩の肩章の裏に、何か『金属片』のようなものがついていないか、見ていただけますか!? とても、重要なことなのです!」
私の、ただならぬ剣幕に、父様は戸惑いながらも、懐からオペラグラスを取り出し、カイル公爵様の方へと向けた。
「右肩の、肩章…? うーん、ここからでは、よく見えんな…。だが、何かが、不自然に光っているような気も…」
その時、広場に、第一射が放たれる轟音が響き渡った。
空に放たれた光弾が、騎士団詰所の裏手で炸裂し、黒い煙が上がる。広場は、一瞬にしてパニックに包まれた。
「敵襲だー!」
「陛下をお守りしろ!」
ゲルハルト侯爵の、筋書き通りの混乱。
そして、彼は不敵な笑みを浮かべ、第二射を放つべく、『プロミネンス』の照準を、ゆっくりとカイル公爵様へと向け始めた。
もう、間に合わない――!
誰もがそう思った、その瞬間だった。
「待てーーーっ!!」
広場に響き渡ったのは、カイル公爵様の、雷鳴のような声だった。
彼は、自らの右肩の肩章を、躊躇なく引きちぎると、それを高く掲げた。
その裏側には、紅い光を明滅させる、小さな金属片が、確かに貼り付けられていたのだ。
「ゲルハルト侯爵! これが、貴様の言う『真実の標的』か!」
その光景に、広場にいた誰もが、息を呑んだ。
ゲルハルト侯爵の顔から、勝利の笑みが、凍りついたように消えていく。
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