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第1話 乾季
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僕は今、タイにいる。常夏の国、タイだ。
乾季だというのに湿度は高く、髪の毛が頬にまとわりつく。蒸し暑い空間は苦手な人が多いかもしれないが僕はそんなに嫌いじゃない
それに、ここには日本にいるときには見られなかった色や形が溢れている。
少し市場をのぞけば南国特有の果物や野菜、香辛料などがたくさん並んでいる。
山積みのマンゴーや
本当にこんなに必要なのだろうかという量の唐辛子、青パパイヤなんかも日本のスーパーではそんなに見かけないだろう
鮮やかな色たちに囲まれて僕は浮き足立っていた。
そう、あのときの僕は海外に来たという期待感でいっぱいだった。僕という人間がそんな状態で歩みを止めない。それはとってもまずい状態。
気になったものを片っ端から見ていった。周りなんて気にせずとりあえず目に入ったものをめがけて足を進めていた僕は気が付くと、入り組んだ路地に迷い混んでしまっていたのだ。
「なんてこった…まさか自分がこんなにも向こう見ずな人間だったとは。いや、割といつものことか」
なんてぶつぶつ言っていると、
「Hey Girl!」
ヤバそうなやつに声をかけられた。いや、絡まれたの方が正確か?
『おい、無視するなよ』
タイ語でなにやら言われているのでタイの人だろう。タイのヤバいやつで"タイヤバ"と名付けよう。僕がそんなことを考えながら歩みを進めていたら
『待てよ』
手を強く掴まれた。
反射的に振りほどこうと腕を振ったが、
タイヤバは全く動じない
「もうっ離して!」
そう言って腕を引こうとしたそのとき、
『何してる!』
そんな声が聞こえたかと思うと瞬間、
『いててててて!』
タイヤバの手が離れた。
後ろからやってきた人がタイヤバの腕を力強く掴んでいる
『くそっ』
タイヤバは後退りすると、そそくさとそのまま逃げていった
『大丈夫か?』
「…え?」
僕がぽかーんとしていると、声をかけられる。僕を助けてくれたであろうその人は身長が高く、ガタイもいい見た感じには喧嘩が強そうな人だった
よし、助けてくれた人なので"助けびと"と名付けよう
「だ・い・じょ・う・ぶ?」
僕の頭の中が旅にでていたところ
助けびとさんに
日本語でゆっくりと話しかけられた
「あ、大丈夫です……日本語?」
「You're Japanese, right?」
「あ、え…なんで?」
「さっき日本語で嫌がってるみたいだったから俺、耳いいんだ
それより、英語話せる?」
助けびとは流暢な英語で返してきた
「あ、英語話せます」
「よかった、俺日本語はそんなに分かんないから」
「あの、助けてくれてありがとうございます」
ぺこりと僕が頭を下げると
「どういたしまして、Lady」
と言われた。
「あの、さっきも思ったんですけどGirlとかLadyとか一応僕、生物学上は男なんですけど」
「えっそうなの?!ごめん!」
「まぁ、どっちでもいいんですけどね」
「どっちでもいいんだ」
「どっちでもいいですけど、24年間男として生きてきたのでそれなりに愛着はあります」
「…ふっ、君おもしろいね
俺、Dario。Daaって呼んで
君は?」
なぜか笑われた。
「僕は渚砂です」
「じゃあ、Nagiだね
よろしく、Nagi!」
助けびとさん、もといDaaはあっという間にニックネームを付けてしまった
タイはニックネーム文化が根付いていると聞いていたが本当だったようだ
「ところで、Nagiこんなところで何してたの?」
「ちょっと迷ってしまって」
「そっか、この辺は安全とはいえないから気を付けた方がいいよ
よかったら俺が大通りまで送るよ?」
それは願ってもない提案だ
「!よろしくお願いします」
「じゃ、行こっか
付いてきて」
僕は大人しくDaaに付いていくことにした。
道の両側にはおそらく民家だろうか
コンクリートでできた壁が長屋のように連なっている。
地面は舗装されておらず、土でできている
今は雨季ではないのでぬかるんではいない
みんな出かけているのだろうか、人の気配がしない
静かだ…
しばらく広い背中を見ながら歩いていると
Daaが青いトタンで覆われた壁の前で止まった
そして、振り返って静かに語りかけてきた
「ねぇ、Nagi
ひとつ提案があるんだけどさ」
「…?なんですか」
「今日、この後、暇?よかったら夜に連れていきたい場所があるんだけど」
「え?どこですか」
「んーそれは内緒」
…怪しい。確実に怪しいと感じる。
「どんなところですか?」
「観光客が喜ぶ場所」
「本当ですか?」
「ほんと、ほんと。本当に観光客だらけだから、きっと楽しいよ?」
そう言うDaaは目尻を下げて人好きのする笑顔で僕の顔を覗き込む。乾いた茶色い瞳がこちらを見ている。ずるい笑顔だなと冷静に思う
そう僕は冷静だ。冷静なのだが、
なんだか好奇心を刺激する提案だ
「…行ってみようかな」
「ほんと?きっとハマるよ」
Daaがにやりと笑うのを目の端に捉えた気がしたが、僕は気付かない振りをした
…タイの110番を調べておこう
乾季だというのに湿度は高く、髪の毛が頬にまとわりつく。蒸し暑い空間は苦手な人が多いかもしれないが僕はそんなに嫌いじゃない
それに、ここには日本にいるときには見られなかった色や形が溢れている。
少し市場をのぞけば南国特有の果物や野菜、香辛料などがたくさん並んでいる。
山積みのマンゴーや
本当にこんなに必要なのだろうかという量の唐辛子、青パパイヤなんかも日本のスーパーではそんなに見かけないだろう
鮮やかな色たちに囲まれて僕は浮き足立っていた。
そう、あのときの僕は海外に来たという期待感でいっぱいだった。僕という人間がそんな状態で歩みを止めない。それはとってもまずい状態。
気になったものを片っ端から見ていった。周りなんて気にせずとりあえず目に入ったものをめがけて足を進めていた僕は気が付くと、入り組んだ路地に迷い混んでしまっていたのだ。
「なんてこった…まさか自分がこんなにも向こう見ずな人間だったとは。いや、割といつものことか」
なんてぶつぶつ言っていると、
「Hey Girl!」
ヤバそうなやつに声をかけられた。いや、絡まれたの方が正確か?
『おい、無視するなよ』
タイ語でなにやら言われているのでタイの人だろう。タイのヤバいやつで"タイヤバ"と名付けよう。僕がそんなことを考えながら歩みを進めていたら
『待てよ』
手を強く掴まれた。
反射的に振りほどこうと腕を振ったが、
タイヤバは全く動じない
「もうっ離して!」
そう言って腕を引こうとしたそのとき、
『何してる!』
そんな声が聞こえたかと思うと瞬間、
『いててててて!』
タイヤバの手が離れた。
後ろからやってきた人がタイヤバの腕を力強く掴んでいる
『くそっ』
タイヤバは後退りすると、そそくさとそのまま逃げていった
『大丈夫か?』
「…え?」
僕がぽかーんとしていると、声をかけられる。僕を助けてくれたであろうその人は身長が高く、ガタイもいい見た感じには喧嘩が強そうな人だった
よし、助けてくれた人なので"助けびと"と名付けよう
「だ・い・じょ・う・ぶ?」
僕の頭の中が旅にでていたところ
助けびとさんに
日本語でゆっくりと話しかけられた
「あ、大丈夫です……日本語?」
「You're Japanese, right?」
「あ、え…なんで?」
「さっき日本語で嫌がってるみたいだったから俺、耳いいんだ
それより、英語話せる?」
助けびとは流暢な英語で返してきた
「あ、英語話せます」
「よかった、俺日本語はそんなに分かんないから」
「あの、助けてくれてありがとうございます」
ぺこりと僕が頭を下げると
「どういたしまして、Lady」
と言われた。
「あの、さっきも思ったんですけどGirlとかLadyとか一応僕、生物学上は男なんですけど」
「えっそうなの?!ごめん!」
「まぁ、どっちでもいいんですけどね」
「どっちでもいいんだ」
「どっちでもいいですけど、24年間男として生きてきたのでそれなりに愛着はあります」
「…ふっ、君おもしろいね
俺、Dario。Daaって呼んで
君は?」
なぜか笑われた。
「僕は渚砂です」
「じゃあ、Nagiだね
よろしく、Nagi!」
助けびとさん、もといDaaはあっという間にニックネームを付けてしまった
タイはニックネーム文化が根付いていると聞いていたが本当だったようだ
「ところで、Nagiこんなところで何してたの?」
「ちょっと迷ってしまって」
「そっか、この辺は安全とはいえないから気を付けた方がいいよ
よかったら俺が大通りまで送るよ?」
それは願ってもない提案だ
「!よろしくお願いします」
「じゃ、行こっか
付いてきて」
僕は大人しくDaaに付いていくことにした。
道の両側にはおそらく民家だろうか
コンクリートでできた壁が長屋のように連なっている。
地面は舗装されておらず、土でできている
今は雨季ではないのでぬかるんではいない
みんな出かけているのだろうか、人の気配がしない
静かだ…
しばらく広い背中を見ながら歩いていると
Daaが青いトタンで覆われた壁の前で止まった
そして、振り返って静かに語りかけてきた
「ねぇ、Nagi
ひとつ提案があるんだけどさ」
「…?なんですか」
「今日、この後、暇?よかったら夜に連れていきたい場所があるんだけど」
「え?どこですか」
「んーそれは内緒」
…怪しい。確実に怪しいと感じる。
「どんなところですか?」
「観光客が喜ぶ場所」
「本当ですか?」
「ほんと、ほんと。本当に観光客だらけだから、きっと楽しいよ?」
そう言うDaaは目尻を下げて人好きのする笑顔で僕の顔を覗き込む。乾いた茶色い瞳がこちらを見ている。ずるい笑顔だなと冷静に思う
そう僕は冷静だ。冷静なのだが、
なんだか好奇心を刺激する提案だ
「…行ってみようかな」
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…タイの110番を調べておこう
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