隻腕の聖女

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王の野望編

第4話

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とりあえず東へ向かったものの、どこまで行けばよいか分からず、数日間、東へと馬を走らせていた。

神託は音沙汰もなく、この頃になると同行者のガイツも少し呆れた様子だった。

「聖女様、神託とやらは本当なのでしょうね?
 東へ、東へ、ってそろそろ海へ出てしまいますよ。」
ガイツは少しイライラしながら私に言った。

最初はおぼつかなかった馬も、
今では片手で上手に操りながら、
私は何度かあの声に耳を澄ませてみたが、
微かにも聞こえてくることはなかった。

「海へ出てしまったら、諦めて帰りましょう。」
私も半ば諦めかけていた。
そもそも右腕を既に失っているのだ、
神託が聞こえなくなってしまったとしても不思議ではない。
あの時聞こえたのは気の迷いか、
微かに残った残滓ざんしだったのかもしれない、
と私は考え始めていた。

やがて海に程近いアインの村へたどり着いた。
海が近いからか、市場は魚介類が多く並び、
村のあちこちでは残り物を漁って生活しているであろう動物達が見受けられた。

建物は木製のものが目立ち、
海の様子が見える物見台があることが、
今までとは様子をことにしていた。

「遂にアインまで着いてしまいましたね。
 どうします?海でも見て帰りますか?」
少し茶化しながらガイツは言った。

「ここまで来ても神託も無いようですし、
 明日の朝、海でも眺めて帰りましょうか。」
ここまで来ると、
私は海に着くことを目的としていたのだと錯覚さえするようになっていた。
その日は、既に日は落ちかけていたので、宿で泊まることにした。


夜、次の日の予定を伝えるためガイツを訪れてみると、
彼は部屋にはいなかった。
宿の主人に聞くと、隣のバーへ行っているらしい。

ガイツは酒が好きらしく、
村に泊まるといつもバーに行っていた。

いつも通り、バーで女性を口説きながら
酒を飲んでいるガイツを見つけ、声をかけようとした。

しかし、突然あの声が聞こえた。
「そいツをコロセ!」

「え?」
あまりに急にだったので、私は驚いて声をあげてしまった。
私は近くにいる男に目をやった。
顔や体のあちこちに傷のある、いかつい男だった。
その男もこちらに気付いて睨みつけてくる。

「なんか用か?」
男が凄みのある声で言いながら立ち上がった。

こちらの異変に気付いたガイツが、
酒を飲むのをやめて駆けつけてきた。

「なんでもありませんよ。なぁ?」
ガイツは男と私の間に腕を入れて、私を男から遠ざけた。

「なんだお前は?邪魔するな。」
男はガイツを軽々と持ち上げると、バーのカウンターへ投げつけた。

「嘘だろ?人間の力かよ・・・」
ガイツは呆気にとられていた。

バーにいた人々はそそくさといなくなっていた。
怒らせてはいけない人だと、皆分かっていたのだ。

「あなたは一体誰?神託とどう関係があるの?」

私の言葉に男はニヤリとしながら言った。
「神託?そうか、お前が聖女か、
 我が名はザーロ、バルゼビア様配下の悪魔だ。」
次の瞬間、元々大きかった男の体は、
更に一回り大きくなり、
人とは思えないおぞましい姿に変わった。
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