隻腕の聖女

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王の野望編

第8話

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アインの村を出発した次の日にはツヴァートに着いた。
アインの村とは打って変わって、石畳がどこまでも続き、
レンガ造りの大きな建物が目立つ都会的な街並みだった。

海も程よく近く、少し北に行けば山もあるため、いろいろな食材が市場に並んでいた。

「この街にも悪魔は居るのだろうか?」
ガイツがポツリと呟いた。
可能性は大いにあるだろう。
ザーロと同じように人に紛れて悪魔がいるのだとしたら、
都市こそ紛れるにはもってこいなのだから。

「この中からどうやって探す?神託はまだ無いのか?」
アリウスが私に聞いてきた。

「はい、全く。」
私は落胆しながら、ため息交じりに答えた。
あれから神託は聞こえない。
どうしたらいいのか、皆目見当もつかない。
私の言葉に、二人も肩を落として軽くため息をついた。

「悪魔がいるとしたら、何らかの異変が起こっているかもしれないな。」
アリウスは言った。
神託があてにならない以上、糸口を地道に探すしかないのだろう。

「2手に分かれて聞き込みをしよう。ガイツ、聖女様を頼んだ。
くれぐれも無理はするな。一刻ほどしたらまたここで落ち合おう。」
アリウスは街の西側を、私たちは東側を探索することになった。

ツヴァートの街の東側は商店が多かった。
どうやら、街の西側が職人街で、鍛冶、革細工製品が製造され、
それを東側で販売しているということだった。
そのためか、東側は他所の町からやってくる人も多く、
中にはアインの村から来ている人も見かけた。

「特に変わった様子はないな。」
ガイツはつい先ほど買ったばかりの果物を頬張りながら呟いた。

大きな通りは人通りも多く、
他人に目をくれることなく忙しそうに歩いている人が大半だった。

単なる慌ただしい日常。

そんな光景を見ながら、私は左手に違和感を感じていた。
時々、痙攣のようにピクピクと脈動していたからだ。
この中に悪魔が溶け込んでいるのだろうか?

しかし、それ以上特別なこともなく、
東の端に着いた時には、合流する時間も近くなっていたので、
街の入り口へ戻ることにした。


「こっちは全然収穫がありませんでした。」
私はアリウスに報告した。

「そうか、こちらは少し気になることがあった。」
アリウスの話によると、この街の北部で変な宗教が広まっており、
教祖の女はいつまでも姿が若いままだという。
神に供物や生贄を捧げたり、時には歯向かう人々を拷問しているという。

「その教祖が悪魔かもしれないということね?」
確信はないが、特に有力な情報がない今、
とりあえずその教祖とやらにあってみる必要はありそうだ。

「教祖の家は調べてある。これから行くか?」
アリウスが私に聞いてきた。

「行ってみましょう。考えたところで私にはどうすることもできない。
運命が導くままに。聖母ウェナを信じましょう。」
とは言ったものの、私達は不安な気持ちなまま街の北へと向かった。

このまま悪魔と対峙したところで、
また一方的にやられはしないだろうか?
左手が放ったという光も私の意思には全く反応しないのだ。
悪魔と対峙すれば使えるのだろうか?
自分の体のことなのに全く分からない。
こんな時こそ神託が欲しいのだが、あの声はまだ聞こえてこなかった。

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