隻腕の聖女

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王の野望編

第10話

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私が放った赤い光は、シロエルの胸の真ん中辺りを貫通し、抉り取った。
シロエルは後ろに吹き飛び、仰向けに倒れた。

「やった。」
私はシロエルに勝利したものだと確信して声を上げた。
しかし、シロエルはむくっと起き上がり不敵な笑みを浮かべた。

「何が何やらさっぱり分からん。本当にお前は一体何がしたいのだ?」
いつの間にか、シロエルの胸に空いた穴は塞がっていた。

「そんな!確かに胸に穴が開いていたはずなのに!」
私は困惑した。シロエルの胸に空いた穴は見間違いではないはずだ。

「俺も確かにどでかい穴が開いてるのを見たぞ。あの傷はどこに行った?」
ガイツも驚いていた。
アリウスも口を開けて信じられないという風だった。

「確かに危ないところだった。お前は本当に厄介だ、
このまま野放しにはしておけん。」
シロエルはそう言うと大きな悲鳴を上げた。
あまりの大きさに私たちは耳を塞いだ。

「元来、私自身では手を下さない性質でな。人間同士で殺しあうがいいぞ。」
シロエルが言い終わるか終わらないかのうちに、
玄関の扉が開いて、街の人々が数十人入ってきた。
外には続々と集まって来ているのが見えた。

「エリザ様に刃を向けるとは・・・お前達ただで済むと思うな!」
街の人達が私達を取り囲んだ。
シロエルは不気味な笑みを浮かべたまま豪邸の奥へと消えていった。

「どうする?相手は人間だぞ。」
「やるしかないでしょ。俺たちがやられてしまいます。」
アリウスとガイツはじりじりと私に近づくように後退しながら言った

「どうしよう。赤い光が効かないなんて。一体何がいけなかったの?」
私は完全に狼狽うろたえてしまった。

「じっくり考えている暇などないぞ。一度退いて立て直そう。」
アリウスが剣で街の人達を威嚇したり、
投げつけられたものを打ち払いながら言った。

「いつまでも耐え切れない。退こうイヴ。」
アリウスとガイツは、街の人々の薄いところを狙って一気に攻め込んで道を開き、
私達は豪邸の一室へと逃げ込み、扉を閉めた。

ガイツが扉を抑えている間にアリウスが窓ガラスを割る。
「イヴこっちから逃げろ。」
私は割れた窓から外へと逃げ出した。
アリウスと豪邸の裏を回り、
途中パラパラと現れた街の人々を突き飛ばしながら二人で逃げた。

「ガイツは?ガイツがいない。」
豪邸から少し離れたところで私はガイツがいないことに気付いて戻ろうとした。
すると、アリウスが私の左手を掴んだ。
「きっと大丈夫だ。それより今は君が逃げることが優先だ。君が居なきゃ悪魔は倒せない。」
アリウスが冷めた言い方で私を諭す。

私達はその後ひたすら走り、街の入り口に繋いだ馬の綱を解くと、北の山へと逃げ込んだ。
山に入るころには、すっかり日が暮れていた。

「ここまでくればひとまず大丈夫だろう。」
アリウスは、腰かけるのに丁度良さそうな岩の上に溜まった土を払いながら言った。

「ガイツは本当に大丈夫?酷いことされていないと良いけど・・・。」
私はシロエルが生贄や拷問を好んでいたことを思い出し、嫌な予感がしていた。

「もし、ガイツが死んでいるとしても、君を失うわけにはいかなかった。
あいつもそれが分かっていたはずだ。」
またもアリウスが冷たく言い放つ。
戦場では何度も似たような判断を下してきたのだろう。

「私のせいだ。勝算もなしに悪魔に挑もうだなんて思ったから・・・。」
私は深く後悔していた。
赤い光の力を過信していたのだろう、放つことさえできれば、当たりさえすればと。
うまく使えもしないのに。

「それにしても、確かに奴の胸にはでかい穴が開いていたはずなのにな。」
アリウスは考え込んでいた。
確かに相手の胸を抉り取るほどのダメージは与えられていたはず。
しかし、致命的ではなかった。

私は、シロエルがと口走っていたことを思い出した。

「もしかして・・・。」
私の中で一つの仮説が生まれた。
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