隻腕の聖女

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王の野望編

第32話

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私の手が赤く輝き始めると、
ロスタートは激しく抵抗を始めた。

そんな折、また風が吹き始める。
リスバートがはばたき始めたのだ。
また身動きできなくなるのに、そう時間はかからないだろう。

今しかない。

まだフルパワーではなかったが、
私は躊躇いを振り切って、ロスタートに向けて光を放った。

ロスタートは身をよじって避けようとするが、
ガイツが必死に抑え込む。

赤い光はロスタートを飲み込んでいった。
ガイツを巻き込みながら・・・。

数瞬後、ロスタートは消滅し、後には赤黒い球だけが残された。
ガイツの体は、衝撃で吹き飛び、動かなくなった。

私は涙を堪えながら、リスバートを狙う。
すると、光を放つ前に風が止んだ。

「まてまて、降参だ。
 参ったよ。」
リスバートは慌てて地上に降り立つと、
人の姿に戻り、両手を掲げた。

「言っただろ、私は戦いには向いてない。
 せいぜい邪魔をするくらいだ。
 正面切っての戦いなんぞ、ご免だ。
 それよりいいのかい?その男、死んでしまうぞ?」
リスバートは手を上げながらガイツを指さす。

私はリスバートを警戒しながらガイツに駆けよると、
ガイツに話しかけた。

「ガイツ、返事して?」
ガイツがゆっくりと首だけを動かして顔を上げた。
「イヴ、どうだ?やったか?」
ガイツはそれだけ言うと、私の答えも聞かずに力尽きた。

一瞬、目を離したすきに、リスバートの姿は無くなっていた。

私は急いで神殿の外に飛び出し、
大きな声で助けを呼んだ。
「助けて、誰か、ガイツを助けて・・・。」

私の声を聞いた、数人の男たちが駆け付けてきてくれて、
神殿の中のガイツを病院へと運んでいってくれた。


ガイツの治療は数時間に及び、
私はその間、ガイツの腕を切り落としたときの感触と、
ガイツを吹き飛ばしたときの光景を、
何度も何度も思い出していた。

あの時は私もガイツも必死だった。
そうしなければ、私もガイツも命が危なかっただろう。

でも、本当にそうしなければいけなかったのだろうか?
自分を正当化しているだけじゃないだろうか?
相手を見つけた時点ですぐに撃ち抜いていたら、
こんなことにはならなかったんじゃないだろうか?

私が話を聞いて悪魔なんかに同情したせいかもしれない。
それで相手に最初の攻撃を許す隙を与えてしまったのではないだろうか?

いや、もっと前。
あの時リスバートがヴィアの村に現れた時に仕留めることができていれば、
ロスタートとの戦いを邪魔されることもなかったのかもしれない。

いや、もっともっと前。
私が右腕を失いさえしなければ、
ガイツをすぐに癒してあげられたかもしれない。

そもそも、
私が最初から強ければ、
ガイツはこんな危険な旅に出ることもなかったかもしれない。

私は自分の不甲斐なさと、
ガイツに何もしてあげられない無力さで、
幾度も自分を責め、涙をこぼした。


ガイツの治療は真夜中に終わった。
疲れと痛みから気を失ってはいるものの、
命は繋ぐことができたらしい。

ガイツは両腕と左足を失くしていた。
そして、ロスタートの毒も多少体内に残っており、
それ以外にもマヒを起こす個所があるかもしれないとのことだった。

これ以上旅を続けるのは無理かもしれない・・・。

私はガイツの横顔を見ながら何度も謝った。

そして、ガイツの横たわるベッドの脇で、
いつの間にか気を失うように眠りに就いていた。
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