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7つの断章編
第8話
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上空から偵察していたリスバートによると、
どうやら断章は沼の中ではなく、
沼を越えた先にある洞窟にありそうだということだ。
その洞窟までは、道を選べば徒歩でも行けるらしい。
私達はリスバートに案内されながら、
断章があると思われる洞窟を目指した。
こういう時に、空が飛べるのはとても便利だと思い、あることに気付いた。
そういえば、ベアトリスも空を飛べるのではなかっただろうか?
ウルスの城で、蛾のような姿になって飛んでいくのを確かに見た。
「ベアトリス、あなたも空を飛べるんじゃなかった?」
私が前を歩くベアトリスの背中に問いかけると、
「あたしは、本来の姿に戻る力すら失くしてしまったんだ。
ある程度、力を取り戻すまではおあずけだ。」
彼女は振り返ることなく答えを返してきた。
彼女の言っていることが本当なのであれば、
今の彼女は、悪魔というよりも、少し魔力を扱える人間、
つまり、私と同じような存在だと思ったほうがいいのかもしれない。
だから、実際に自分が攻撃に晒されるような行動を嫌うようになったのだろう。
強力な力を持っていたであろう彼女が、
元は自分より下級だったであろう悪魔や、
森の動物ですら脅威に感じているのは、少し哀れに思えた。
そんなことを考えながら歩いていると、
いつのまにか洞窟の入り口にたどり着いた。
すると、先行していたベアトリスが、
急に身構えて洞窟の入り口に張り付くようにして姿を隠した。
「待て、何か声が聞こえないか?」
ベアトリスの言葉に、私達は立ち止まって耳を澄ませた。
何を言っているのかは聞き取れないが、
少し高めの声で、叫んでいるような声が聞こえる。
「私にも微かに聞こえた。女の子の声?」
私にはそう聞こえた。
「おかしいな。人間が入っていくところを見ていないんだがな。」
リスバートが独り言を呟きながら首を傾げる。
「間違えて断章の洞窟に踏み入った人間が、悪魔に出くわしたのかもね。」
ベアトリスが不穏な言葉を口走る。
この洞窟に断章があるのだとすれば、
それを探し回っているルザーフ配下の悪魔と出くわす可能性があるかもしれないということだ。
「早く助けないと。」
私は居ても立っても居られず、洞窟に向かってと駆け出した。
「待て。」
ベアトリスが私の左肩を掴んで制止するが、
私はそれを振り切って更に走り出した。
洞窟に迷い込んだ人が悪魔にやられでもしたら大変だ。
間に合うだろうか?
リスバートも後ろの方で何やら小言を言いながらも、
すぐに私に付いてきてくれた。
洞窟の奥までたどり着くと、
大きなカマキリに似た悪魔が、
少女に向かって鎌のような手を振り回していた。
少女は必死に避けているように見えるが、
体のあちこちに切り裂かれたような傷がある。
「大変、早く助けないと。」
私は、少女を守るように防御壁を張った。
悪魔の鎌が、防御壁に阻まれて動きを止める。
「何が起こった?」
カマキリに似た悪魔が、驚いて少女から少し距離を置く。
そして、周囲を確認し、ようやく私に気が付いた。
「これはお前の仕業か?」
カマキリの姿をした悪魔は、こちらをキッと睨んだ。
少女もこちらに気付いて、私の後ろに逃げるように隠れた。
「大丈夫?」
私が尋ねると、少女は小さな声で「うん」と返事をした。
ようやく、後ろからベアトリスが召喚したと思われる
悪魔が駆け付けたことで、こちらの戦闘態勢も整う。
「断章を奪いに来たのか?そうはさせんぞ。」
相手は両手を振り上げて、再び戦闘態勢に入った。
どうやら断章は沼の中ではなく、
沼を越えた先にある洞窟にありそうだということだ。
その洞窟までは、道を選べば徒歩でも行けるらしい。
私達はリスバートに案内されながら、
断章があると思われる洞窟を目指した。
こういう時に、空が飛べるのはとても便利だと思い、あることに気付いた。
そういえば、ベアトリスも空を飛べるのではなかっただろうか?
ウルスの城で、蛾のような姿になって飛んでいくのを確かに見た。
「ベアトリス、あなたも空を飛べるんじゃなかった?」
私が前を歩くベアトリスの背中に問いかけると、
「あたしは、本来の姿に戻る力すら失くしてしまったんだ。
ある程度、力を取り戻すまではおあずけだ。」
彼女は振り返ることなく答えを返してきた。
彼女の言っていることが本当なのであれば、
今の彼女は、悪魔というよりも、少し魔力を扱える人間、
つまり、私と同じような存在だと思ったほうがいいのかもしれない。
だから、実際に自分が攻撃に晒されるような行動を嫌うようになったのだろう。
強力な力を持っていたであろう彼女が、
元は自分より下級だったであろう悪魔や、
森の動物ですら脅威に感じているのは、少し哀れに思えた。
そんなことを考えながら歩いていると、
いつのまにか洞窟の入り口にたどり着いた。
すると、先行していたベアトリスが、
急に身構えて洞窟の入り口に張り付くようにして姿を隠した。
「待て、何か声が聞こえないか?」
ベアトリスの言葉に、私達は立ち止まって耳を澄ませた。
何を言っているのかは聞き取れないが、
少し高めの声で、叫んでいるような声が聞こえる。
「私にも微かに聞こえた。女の子の声?」
私にはそう聞こえた。
「おかしいな。人間が入っていくところを見ていないんだがな。」
リスバートが独り言を呟きながら首を傾げる。
「間違えて断章の洞窟に踏み入った人間が、悪魔に出くわしたのかもね。」
ベアトリスが不穏な言葉を口走る。
この洞窟に断章があるのだとすれば、
それを探し回っているルザーフ配下の悪魔と出くわす可能性があるかもしれないということだ。
「早く助けないと。」
私は居ても立っても居られず、洞窟に向かってと駆け出した。
「待て。」
ベアトリスが私の左肩を掴んで制止するが、
私はそれを振り切って更に走り出した。
洞窟に迷い込んだ人が悪魔にやられでもしたら大変だ。
間に合うだろうか?
リスバートも後ろの方で何やら小言を言いながらも、
すぐに私に付いてきてくれた。
洞窟の奥までたどり着くと、
大きなカマキリに似た悪魔が、
少女に向かって鎌のような手を振り回していた。
少女は必死に避けているように見えるが、
体のあちこちに切り裂かれたような傷がある。
「大変、早く助けないと。」
私は、少女を守るように防御壁を張った。
悪魔の鎌が、防御壁に阻まれて動きを止める。
「何が起こった?」
カマキリに似た悪魔が、驚いて少女から少し距離を置く。
そして、周囲を確認し、ようやく私に気が付いた。
「これはお前の仕業か?」
カマキリの姿をした悪魔は、こちらをキッと睨んだ。
少女もこちらに気付いて、私の後ろに逃げるように隠れた。
「大丈夫?」
私が尋ねると、少女は小さな声で「うん」と返事をした。
ようやく、後ろからベアトリスが召喚したと思われる
悪魔が駆け付けたことで、こちらの戦闘態勢も整う。
「断章を奪いに来たのか?そうはさせんぞ。」
相手は両手を振り上げて、再び戦闘態勢に入った。
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