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新しい世界
第2話
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宿に帰ると、レイリアが目を覚ましていた。
力を使い過ぎてしまったようだが、現在は特に後遺症もないらしい。
黄色いオーラを纏っていたことや、
体が一時的に大きくなり、狐のような姿になったことは覚えていないようだ。
もちろん、そんなことが起こったことは今までにも経験がないらしい。
あの時は、特に深い意味も自信があったわけでもなく、
系統の違う、私の力とベアトリス達の力をひとつにして使えるのは、
自分しかいないと思ったからだという。
結果、とてつもない力を引き出すことができ、あの巨体の主を倒すことができた。
もし、あそこで負けていれば、私達の未来は絶望的なものになっていただろう。
それが、回避できたのは、レイリアのお陰だ。
私は、心からの感謝を込めて礼を述べた。
翌日、一応コンパスが壊れていないかを確認してもらうため、
工神デュスラハの元へと向かった。
コンパスの針は、
あれからまるで力を失ったようにフニャフニャと動き回り、
どこか一定の方角を指し示すことはなくなってしまった。
これが、壊れているだけならまだいいが、
壊れていないとなると、
既に最後の断章を、誰かが台座から持ち去ったことになる。
台座に置かれているとしても、パッと見は、ただの小さな金属片だ。
重要なものだと言われなければ見落としてしまいそうなものを、
人間が洞窟に入って、わざわざ持ち去るようなこともないだろう。
つまり、ルザーフの手に渡っている可能性が高いのだ。
私達の目的は、断章を集めることではなく、
敵に断章を集めさせないことだから、
最悪の場合は、手に渡っていても問題はないのだが、
一応、相手が最後の1つを持っているのかいないのかという情報は、
できるだけ手にしておきたい。
ボロボロの小屋にたどり着くと、
デュスラハは、またもやぶっきらぼうに私達を出迎えた。
ベアトリスもそれに応じ、まるでケンカの様相を呈したが、
最終的に何故か会話が成立して、デュスラハは、作業場へと籠った。
待っている間、ベアトリスが落ち着かない様子で部屋を歩き回る。
「どうしたの?」
私はたまりかねて、彼女に尋ねた。
「いや、なんか元気がなかったような気がしてな。」
そうだっただろうか?
彼の口調も態度も、以前と変わらない様子だった気もするが、
どうやらベアトリスにはそう感じたらしい。
「まだ疲れが残っているのかも。」
リスバートの言葉にベアトリスは首を振る。
「いや、実際あの程度じゃ疲れたりしないんだあの人は。
昔は、1カ月も作業場に閉じこもっていたくらいなんだから。
きっと、あの時、疲れたとか言ってたのも、あたし達を追い払うためさ。」
なんだかんだ言いながらも、やっぱりしっかり見ているものだな、と
ベアトリスに人間味を感じて少しかわいく思えて来た。
「心配してるの?」
私がベアトリスに尋ねると、
「倒れられたら、誰がメンテナンスしたり道具を作るんだよ。」
と、あくまで心配はしていないという体を保つ。
そこに、タイミングよくデュスラハが現れた。
「まだ、お前に心配されるほど歳くっちゃいない。」
デュスラハも、相変わらずの不器用さだ。
「こいつもまだ元気だ。どこも壊れちゃいない。
ただ、しばらくお役御免だな。」
そう言ってコンパスをベアトリスに返した。
これではっきりした。
つまり、最後の1つはルザーフの手にあるということなのだろう。
「まぁ、7個中6個も奪えれば防衛戦は成功だろう。
次は、オフェンシブに行かせてもらうぜ。」
ベアトリスの顔には、自信と喜びが満ち溢れていた。
力を使い過ぎてしまったようだが、現在は特に後遺症もないらしい。
黄色いオーラを纏っていたことや、
体が一時的に大きくなり、狐のような姿になったことは覚えていないようだ。
もちろん、そんなことが起こったことは今までにも経験がないらしい。
あの時は、特に深い意味も自信があったわけでもなく、
系統の違う、私の力とベアトリス達の力をひとつにして使えるのは、
自分しかいないと思ったからだという。
結果、とてつもない力を引き出すことができ、あの巨体の主を倒すことができた。
もし、あそこで負けていれば、私達の未来は絶望的なものになっていただろう。
それが、回避できたのは、レイリアのお陰だ。
私は、心からの感謝を込めて礼を述べた。
翌日、一応コンパスが壊れていないかを確認してもらうため、
工神デュスラハの元へと向かった。
コンパスの針は、
あれからまるで力を失ったようにフニャフニャと動き回り、
どこか一定の方角を指し示すことはなくなってしまった。
これが、壊れているだけならまだいいが、
壊れていないとなると、
既に最後の断章を、誰かが台座から持ち去ったことになる。
台座に置かれているとしても、パッと見は、ただの小さな金属片だ。
重要なものだと言われなければ見落としてしまいそうなものを、
人間が洞窟に入って、わざわざ持ち去るようなこともないだろう。
つまり、ルザーフの手に渡っている可能性が高いのだ。
私達の目的は、断章を集めることではなく、
敵に断章を集めさせないことだから、
最悪の場合は、手に渡っていても問題はないのだが、
一応、相手が最後の1つを持っているのかいないのかという情報は、
できるだけ手にしておきたい。
ボロボロの小屋にたどり着くと、
デュスラハは、またもやぶっきらぼうに私達を出迎えた。
ベアトリスもそれに応じ、まるでケンカの様相を呈したが、
最終的に何故か会話が成立して、デュスラハは、作業場へと籠った。
待っている間、ベアトリスが落ち着かない様子で部屋を歩き回る。
「どうしたの?」
私はたまりかねて、彼女に尋ねた。
「いや、なんか元気がなかったような気がしてな。」
そうだっただろうか?
彼の口調も態度も、以前と変わらない様子だった気もするが、
どうやらベアトリスにはそう感じたらしい。
「まだ疲れが残っているのかも。」
リスバートの言葉にベアトリスは首を振る。
「いや、実際あの程度じゃ疲れたりしないんだあの人は。
昔は、1カ月も作業場に閉じこもっていたくらいなんだから。
きっと、あの時、疲れたとか言ってたのも、あたし達を追い払うためさ。」
なんだかんだ言いながらも、やっぱりしっかり見ているものだな、と
ベアトリスに人間味を感じて少しかわいく思えて来た。
「心配してるの?」
私がベアトリスに尋ねると、
「倒れられたら、誰がメンテナンスしたり道具を作るんだよ。」
と、あくまで心配はしていないという体を保つ。
そこに、タイミングよくデュスラハが現れた。
「まだ、お前に心配されるほど歳くっちゃいない。」
デュスラハも、相変わらずの不器用さだ。
「こいつもまだ元気だ。どこも壊れちゃいない。
ただ、しばらくお役御免だな。」
そう言ってコンパスをベアトリスに返した。
これではっきりした。
つまり、最後の1つはルザーフの手にあるということなのだろう。
「まぁ、7個中6個も奪えれば防衛戦は成功だろう。
次は、オフェンシブに行かせてもらうぜ。」
ベアトリスの顔には、自信と喜びが満ち溢れていた。
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