隻腕の聖女

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新しい世界

第17話

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「レイリア?どうしてここに?」
私が驚いて尋ねても、
レイリアは無反応に私達を押しのけルザーフの元へと歩いていく。
なぜか、左手には、力を蓄え、今にも放たんばかりだ。

彼女はルザーフの前まで行くと、見覚えのある皮袋を取り出した。
金庫に納めたはずの、断章が入った皮袋だ。

「レイリア、それは・・・。」
ベアトリスが絶句する。

「そう、この男ばかりを責めてはいけない。
 騙されていたというのなら、君たちも同じなんだから。
 わざわざ集めてくれてありがとう。おかげで助かったよ。」
ルザーフが皮袋を受け取る。
レイリアがどんな顔をしているのかは、私からは見えなかった。

レイリア、どうして・・・。

「そうかい、そいつは悪かった。
 残念だが、6つしか集められなかったんでね。」
強がりなのか、ベアトリスが開き直る。

「いや、良くやってくれたよ。
 6つあれば十分だ。あと1つはここにある。」
ルザーフが、レイリアの首にかかっていたお守りの紐を引きちぎり、奪い取った。

「嘘だろ?レイリアいつのまに・・・。」
ベアトリスがまたもや絶句した。

私は、あまりの衝撃に耐えきれず、立っていられなかった。

「なんとか1つは手に入れられたんだが、
 どうにも時間がかかり過ぎるんでね。
 君たちにも協力してもらったんだよ。」

「どうしてわざわざ自分の使い魔をレイリアに倒させるなんて回りくどいことを?」
ベアトリスがルザーフに尋ねる。

「まだ、気付かないみたいだな。
 俺もあいつを倒して力を手に入れたら、断章を簡単に集められると思っていた。
 だが、ここに座っていたのは、ただの抜け殻だった。
 だから、本当に困ったんだ。
 そうしたら、君たちが断章を集めてくれていることを知ってね。
 けど、君たちだけじゃ不安だったからレイリアを遣わせたんだよ。」
 
「抜け殻?じゃあ、あの使い魔たちは・・もしかして。」
ベアトリスも私も大変なことに気付いた。

「そう、俺の使い魔じゃない。
 むしろ、断章を守っていたんだよ。俺から。
 ウルガリウスが自分の魔力を全て分け与えてな。
 あいつが封印される最後の最後、俺の裏切りに気付いたんだろう。
 お陰で少し考えさせられてしまったよ。」
私達が断章を集めたりしなければ、
こうしてルザーフの手に渡ることすらなかったはずだった。
それを律義に集めて渡してしまったようなものだ。

「待てよ、リスバートはどうした?カギはあいつに渡したはずだろう?」
ベアトリスの発言で、またもや重大なことに気付く。

これ以上は私の心がもたない。
もう、やめて・・・。

「リスバートなんかでレイリアが止められると思うか?
 あんなやつ、背後からなら一撃で葬り去れる。」
つまり、リスバートはもうこの世にいないということなのだろう。
レイリアはまだルザーフの方を向いて黙ったままだ。

嘘だと言って欲しかったが、今更そんなことを言われても、彼女を信じられるか不安だ。

「ごめんなさい。」
レイリアがようやく口を開く。

「ロスタートの娘だというのも動揺させ、同情させるための嘘。
 私は、この人によって作り出された使い魔。人形。
 この人の言った通りに話し、動いていただけ。
 だけど、旅をしていく中で、幾度も迷った。
 このまま偽っていていいのだろうか、私はどうするべきなのかって。
 でも、リスバートのおじさんを倒したとき、私はようやく決心した。
 もう、あなたの仲間じゃない。」
レイリアが涙を浮かべながら、私達に力の溜まった左手を突き出す。

ベアトリスは歯を食いしばり、苛立ちを隠せない様子だ。
このままいけば、私はレイリアまでも失わなければならない。
しかも、私の手によって。

裏切られたことは悲しいけれど、レイリアを手にかけるなんて出来っこない。

私の目からは涙が止まらなかった。
あんなに苦労してきたのに、最後がこんな結末だなんて、あんまりだ・・・。
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