隻腕の聖女

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新しい世界

第22話

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ルザーフが構えた刃の先から、無数の小さな火球が発生する。

火球はルザーフの頭上で、どんどんスピードを上げながら円を描く。

「来るぞ。」
ベアトリスの声に、私達が構えをとると、
火球が次々と襲い掛かってくる。

防御壁を張り、部分的に防ぐことは出来たが、
大部分はその防御壁をすり抜けてきた。

私達は、すり抜けてきた火球をそれぞれ手にした武器で叩き落したが、
更に数発が、それをもすり抜け、いくつか被弾してしまった。

そして、ルザーフは、追い打ちをかけるように刃で切りかかって来た。
まるで、殴打するように防御壁を叩きつけると、
一撃で全体にヒビが入る。

よく見れば、彼の刃は、先ほどまでの倍ほどの長さと太さに変わり、
刀身の色も、より黒々とし、纏っている赤い光も強くなっている。

本気のルザーフの力は脅威的で、私は恐怖を感じていた。
心臓の鼓動が耳元で聞こえるほど高鳴り、足の震えも止まらない。

再びルザーフが刃を振り下ろすと、防御壁は無残にも砕け散った。
砕けた防御壁の奥から、これまで見たこともない、怒りの形相のルザーフが現れる。

そのルザーフに、まず切りかかったのはベアトリスだった。

しかし、攻撃がルザーフに届く前に、ベアトリスは吹き飛ばされる。

そして、それに続くようにして、私がルザーフへと切りかかった。
ウェナ様の力もあって、少しの間だけ、彼の刃を受け止めることができた。

だが、そんな健闘も空しく、剣は折れ、私は、再び左腕を失うことになった。
義手が壊れただけなので、痛みは無かったが、戦う力を失ってしまった。

ルザーフは、バランスを崩して倒れている私には目もくれず、アリウスに向き直った。

アリウスも、数度剣を交えることはできたが、結果的には力負けし、腹部に傷を負う。

だめだ・・・。
私達では、まるで足元にも及ばない。

武器を失った私は、果敢に攻めるアリウスとベアトリスに防御壁を張って援護するも、
悉く返り討ちに会い、ルザーフは無傷なのに、私達だけが一方的に傷つき、疲労していった。

「今、降参すれば、許してやらんこともない。」
突然、ルザーフが口を開く。

「降参・・だと?」
吹き飛ばされていたベアトリスが体を起こしながら言った。

「残りの断章を持ってこい。それと・・・イヴ、お前だ。」
ルザーフが私を見つめる。

「私が、何?」
私は、彼の言っている意味が分からず聞き返した。

「断章と、お前の服従。それがあれば、こいつらの命は見逃してやる。」

「そんなもの、渡せるわけないだろう。」
ベアトリスが怒りを露にする。

「バルゼビア、お前は黙っていろ。無力なお前に決定権はない。」
ルザーフの言葉に、ベアトリスが唇を噛む。

「さあ、どうする?まだあらがってみるか?」
刃を持っていない手から魔力を放出させ、格の違いを見せつけながら私に迫ってくる
アリウスも、満身創痍で私の言葉を待っていた。

ここで降参したふりをして時間稼ぎができれば、少なくともベアトリスとアリウスは生き残れる。
そうすれば、彼女たちが断章を別の場所に隠して、ルザーフを奇襲するチャンスも生まれるだろう。

私は、それがバレることによって命を奪われるかもしれないが、
世界が救われる可能性が少しでもあるのなら、それに賭けたい。

「分かりました。降参します。」
私は、ルザーフの元へと歩いていった。

「イヴ・・・。」
ベアトリスとアリウスが心配そうにこちらを見る。

「あとは、お願いします。」
私の意図を理解してくれるかは分からないが、
この言葉で汲み取ってくれるだろうと彼女達を信じた。
そして、心配をかけまいと笑ったが、どうしても堪えきれず涙が流れてしまった。

正直、死ぬのは怖かった。
もう少し生きて、ベアトリス達と、また旅がしたかった。

「ちょうどいいところに、また客だ。」
私達がルザーフの言葉で、一斉に扉の方を見ると、
そこにいたのは、ヨハンだった。
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