勇者討伐

霧永燈眞

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3話 クズ

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『いやー、ハッハッハ。呆気なく死んだねー』

男の首が何者かに刎ねられた時。またあの時のようにモニターの様なモノが空中に映し出された。

「こいつをけしかけたのはお前か」
『ピンポーン! 大正解。暇だったからちょっとした試練として利用させて貰おうとしたんだけどね。”大事なこと”を喋ろうとしていたから思わず殺しちゃった』

思わず…………ねぇ。
恐らくこいつは端からあの男を殺すつもりでいたんだろう。それとも俺に殺させるつもりだったか。そのどちらかだろう。
でないとわざわざ姿を晒してまで人を懐柔し、利用しようと思わない。【アイツ】ならそう考える筈だ。

どちらにせよこいつは人間を道具としか考えていない。自分の欲求を満たすだけの駒とだけしか思っていないだろう。
「お前は本当にクズ野郎だな」
まあ俺が言えた義理ではないが……。
『あはは、手厳しいなぁ。まあ僕は気が向いたらまた君を見に来ることにするよ。それまで頑張ってこの世界で生き延びてくれよ。僕が退屈しないように、ね?』
そう言い、【アイツ】は消えていった。
この世界は一体何なんだ。
考えられる目的はあいつの言動からして今のところ一つだけだ。

・ここはアイツの作った世界でなにかの実験をする為に俺達を送り込んだ

、としか考えられない。
だがいくら考えても答えは出ない。
俺は死んでしまった男を横目に再び目的地に歩き始めた。

しばらくして……

森を突き進んでいく道中、様々なものを見た。
見たことのない牛みたいな形をした植物やリスとウサギが融合したような動物、頬を俺の足に擦り付けて甘えてくるキノコなど。
それらを見て異世界なんだということを再認識した。
そして今俺は森を抜けてとある町に来ている。
ここが手紙に書いてあった【フェリアの町】なのだろうか。

レンガ造りの路面に木や石でできた建物が立ち並んでいる。
漫画やアニメでよく見る異世界物の町の様子といった感じだ。
看板などの文字は何故か読める。見たこともないのに書いている内容は分かるとは、なんと奇妙なことだろうか。
そういえば何故さっきの男ともやり取りができたのだろう。【アイツ】がそういうオプションでもつけてくれたのだろうか。
そんなことを考えながら町中を歩き、散策していると、ステージのような場所に人が集まっているのが見えた。ステージ上で三人かが何かを主張している。
ローブを羽織り、杖を持っている少女と神官のような恰好をしている少女。
どちらもとても容姿が整っており、特にローブを羽織った少女は男受けの良い容姿をしているのが分かる。

その二人に挟まれ、演説をしている男も白馬の王子のような美少年でまさに美男美女の集団と言えるだろう。
男が何を話しているのか群衆に紛れ演説を聞くことにした。
「今から僕たちは魔王を倒す旅に出ます! 絶対に倒してくるので安心してください。この世界は俺が守ります!」
男は高らかに腕を振り上げ、己を鼓舞。
男の様子を見て群衆が声を上げ男たちの旅立ちを応援する。

この演説を聞いて俺が思ったことは、こんな奴ら信用できねぇ。の、ただ一つ。
理由は具体的な功績を何も言わず、志だけを主張して人々の心を掴もうとしているからだ。志だけでは何もできない。圧倒的な力に淘汰されるだけだ。
あの時のように…………。

俺はその場を離れひとまず金を稼ぐためにゲームのギルドのような物がないか探す。
辺りを見回していると一人の女の子が話しかけてきた。
「どうしたの、何か探してるの?」
首を傾げながら聞いてくる一人の女の子。
俺と同年代くらいだろうか。
俺よりは少し身長が低く、上目遣いで目を見てくる少女に少しドキッとしてしまった。
少女の格好はとてもシンプル……というかボロボロの服を着ている。
一切れの布を二つ折りにして無理やり服にした、そんな感じだ。
少しどもりながらも少女の質問に答える
「あ、ああ。仕事を探しているんだ。どこか仕事を紹介しているところはないかな?」
「あはは! お兄さん面白いこと言うね。この町で仕事を探すなんてできないよ。だって自分の意志で働いてる人なんていないんだもん」
? どういうことだ。
少女は俺の表情を見て、
「あー! もしかして他所から来た人? この街の住人は全部ねー…………奴隷なんだよ」
「全員が奴隷? でも君は首輪なんてしてないし自由にしてるよね?」
「みんなが首輪をしてないのは、この街から絶対に逃げられないからだよ。住人が街から出ようとすると、電気ショックが流れて死んじゃうんだ。結界? が張られてるかららしいんだけど……」
そんな結界が張られていたとは全くわからなかったが……。視認できないように工作されているのか。それにしても一番妙なのは住人全員が奴隷で何故あんな演説をしているのか、だ。
俺は少女に、
「あのステージ上で話している奴らは何なんだ? この街の住人なら外に出ることなんて出来ないんだろ? でも魔王を討伐してくるみたいなこと言ってるが……」と聞いた。
少女は一瞬顔を曇らせたように見えたがすぐに元の明るい表情に戻る。
「あの人たちは、ね。王都の勇者様御一行だからこの街に出入りしても結界の影響は無いらしいんだ」
そういうことか。
アイツ等は世界を救う善人に見せたただのクズ野郎ってことだ。
権力の関係で住民は従うしか無い、勇者……クズの顔色を窺って合わせたくないことに合わせてるってか。
…………はぁ。
どこの世界でもクソなやつは居るもんだな。
俺は少女に苦手な笑顔をふりまき優しく頭を撫でてステージ上に向かう。
「え、え、お兄さん何してんの!? 早く戻ってきなって!!」
俺は少女の静止を振り切り、壇上に立つ。
「ん、何だい君は? 早く降りないと殺すよ?」
勇者らしからぬ言動に思わず鼻で笑ってしまった。
「何を笑っているんだ! 貴様、本当に殺されたいのか!!」
俺の態度を見て激昂するクズ。
やはりこいつに勇者の素質は感じられない。
俺とクズのやり取りを見て、ざわつく人々に俺は指を指しながら口上する。
「おう、お前ら見とけ。ただ従ってるだけじゃ何も変わらないし、気に食わないだろ。ストレスも溜まるしな。このままでいいのか? 俺はよそ者だがお前らに一つだけ示してやれることがある。それが…………」

その瞬間俺は気に食わない勇者の顔に己の拳をめり込ませた。

「これだっ!!」
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