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4話 治癒の奇跡
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「グハ!」
クズこと勇者が俺に殴られた衝撃で思ったより遠くに倒れ込んだ。俺はジンと赤くなる拳を握りしめる。慣れないことをしたので、心拍数が上がり体がカァっと熱くなる。
取り巻きの女二人が吹き飛んだ勇者に駆け寄り、
「だ、大丈夫ですか!? アイリーン今すぐに治癒の奇跡をバルダート様に!」
と言い、神官らしき少女、アイリーンが頷き治癒の魔法をかける。
「人々に神の御加護があらんことを【ヒール】」
何かの詠唱をした時、勇者の身体が緑色の光が放たれ、みるみる傷が治っていく。
ほぅ。こりゃあ凄い。これが魔法と言うやつか。
すべての傷が治った後、気絶している勇者をそっと寝かせてから俺をアイリーンという少女が睨みつけ、
「あんた一体何者? この街の住人なら私達に手出しするどころか触れただけで電撃が流れる筈なんだけど」と、言ってきた。
こいつらはこの街の現状を知っていてあんな演説をしていたということがアイリーンの発言で確定した。勇者がクズならその従者もクズってか。ほんとコイツらをみてるとどっかの誰かさんを思い出すなぁ……。
アイリーンの質問に、
「俺は旅人、かな」
と、シンプルに答えた。
アイリーンは手で顎をさすって考え、俺の異端さを説く。
「旅人? ありえないわね。この国はすべての国民に対して拘束魔法の付与を義務化しているのよ。だから国民は国の奴隷であって街の外には行けない。しかも世界に国は二つしかないの。人類の統治する国と魔王が統治する国、だけよ。なのに人間が旅をしてしかも魔王領の方向から来るなんておかしいじゃない。見た感じ魔族でもないみたいだし…………」
この世界の現状を話してくれたので調べる必要がなくなって助かるなぁ。
でも待てよ? 俺は旅人と言ってしまった。だがこの世界で旅人は基本的に存在しないとなれば俺は捕まるんじゃないか? 正体がわからない奴を野放しにしておくほど奴らは馬鹿じゃないだろう。今の俺には一本の剣しかない。しかも剣をふるった事なんて今までにあるわけがない。つまり為す術なく連れていかれるのは言うまでもない。勇者殴っちゃったしな。
俺は走って勇者の元に駆け寄り、手を合わせ、
「突然殴ったのはごめん」
気絶している勇者に、とりあえず殴ったことだけ謝り、ステージから飛び降りて逃げた。
「捕まえろ、そいつを捕まえるんだ!」
俺の行く方向に指をさし捕える指示を出す、アイリーン。
だが周りの人たちは驚いていたが捕まえようとはしなかった。
俺の行動を見て呆気にとられたのか、はたまた勇者が嫌いだったのかは分からない。
どっちでもいいが見逃してくれるのなら好都合だ。
そのまま先程の少女を横目に路地裏に入った。
薄暗くネズミが居そうな汚い道。
そこには宿無しの汚らしい老人たちがボロボロの布切れを冷たく硬い床に敷きうずくまっている。それも何十人もいる。その中の一人の老人が話しかけてきて、
「そこのお兄さん、これをワシの孫に届けてはくださらぬか?」
一つの袋を渡してきた。赤なのかピンクなのか分からないほど色あせた袋の中には一つの石が入っていた。
「爺さん、この石は何だ?」
「それは、孫に必要なものだ。何かは分からないが昔孫が国軍の奴らに連れて行かれる時に言っていたんじゃ」
「孫はどこに連れて行かれたんだ? この街の中にいるなら探してやるけど……」
「もうこの街にはいないんじゃ。他の街に連れて行かれてしまったからワシじゃあどうしようもなくてな。あんちゃんならこの街を出ていけるんだろ? 今さっきの広場での会話聞いてたぞ」
鋭いなこの爺さん。
だが俺も今は追われている身だ。目立った行動はできない。まあでも、どうせこの街にはもう居られないしな。仕方ない。
「爺さん、俺なら孫を探してやれる。その石渡しにいってやるよ」
困っているなら助けてしまう、昔からの俺の悪い癖だ。放っておけばいいものを放っておけない。少年漫画の主人公のような自分の身を犠牲にしてでも助けたいとかそういうご立派な思想なんぞは持ち合わせていない。だが自分にできることならしてあげたい。ただそれだけだ。
爺さんはお辞儀をしたあと、
「ありがたい……。少しばかりだがお礼はせねばな」
と言いながら腰に差した剣を渡すように指示してきた。
俺は言っていることとやっていることの違いに違和感があったが爺さんを信用して剣を渡す。爺さんは剣を床に置いて手をかざす。すると剣の柄の部分に焼き印のような白い印が付いた。
「爺さんこれは何なんだ? 何か印が付いたみたいだが……」
「これは付与魔法の一種じゃよ。ワシが使える魔法の中でも上位の付与効果の物をつけておいた。効果は使ってみてのお楽しみじゃわい」
爺さんはニカッと歯を見せて笑う。
「それはそうとあんちゃん、どうやってこの街から出るんじゃ? あいつらはこの街の入り口で待ち伏せしているじゃろう」
「それもそうだな。どうするか。とりあえず出口を探してみるよ」
俺は剣と石の入った袋を受け取り、爺さんの元を去った。
クズこと勇者が俺に殴られた衝撃で思ったより遠くに倒れ込んだ。俺はジンと赤くなる拳を握りしめる。慣れないことをしたので、心拍数が上がり体がカァっと熱くなる。
取り巻きの女二人が吹き飛んだ勇者に駆け寄り、
「だ、大丈夫ですか!? アイリーン今すぐに治癒の奇跡をバルダート様に!」
と言い、神官らしき少女、アイリーンが頷き治癒の魔法をかける。
「人々に神の御加護があらんことを【ヒール】」
何かの詠唱をした時、勇者の身体が緑色の光が放たれ、みるみる傷が治っていく。
ほぅ。こりゃあ凄い。これが魔法と言うやつか。
すべての傷が治った後、気絶している勇者をそっと寝かせてから俺をアイリーンという少女が睨みつけ、
「あんた一体何者? この街の住人なら私達に手出しするどころか触れただけで電撃が流れる筈なんだけど」と、言ってきた。
こいつらはこの街の現状を知っていてあんな演説をしていたということがアイリーンの発言で確定した。勇者がクズならその従者もクズってか。ほんとコイツらをみてるとどっかの誰かさんを思い出すなぁ……。
アイリーンの質問に、
「俺は旅人、かな」
と、シンプルに答えた。
アイリーンは手で顎をさすって考え、俺の異端さを説く。
「旅人? ありえないわね。この国はすべての国民に対して拘束魔法の付与を義務化しているのよ。だから国民は国の奴隷であって街の外には行けない。しかも世界に国は二つしかないの。人類の統治する国と魔王が統治する国、だけよ。なのに人間が旅をしてしかも魔王領の方向から来るなんておかしいじゃない。見た感じ魔族でもないみたいだし…………」
この世界の現状を話してくれたので調べる必要がなくなって助かるなぁ。
でも待てよ? 俺は旅人と言ってしまった。だがこの世界で旅人は基本的に存在しないとなれば俺は捕まるんじゃないか? 正体がわからない奴を野放しにしておくほど奴らは馬鹿じゃないだろう。今の俺には一本の剣しかない。しかも剣をふるった事なんて今までにあるわけがない。つまり為す術なく連れていかれるのは言うまでもない。勇者殴っちゃったしな。
俺は走って勇者の元に駆け寄り、手を合わせ、
「突然殴ったのはごめん」
気絶している勇者に、とりあえず殴ったことだけ謝り、ステージから飛び降りて逃げた。
「捕まえろ、そいつを捕まえるんだ!」
俺の行く方向に指をさし捕える指示を出す、アイリーン。
だが周りの人たちは驚いていたが捕まえようとはしなかった。
俺の行動を見て呆気にとられたのか、はたまた勇者が嫌いだったのかは分からない。
どっちでもいいが見逃してくれるのなら好都合だ。
そのまま先程の少女を横目に路地裏に入った。
薄暗くネズミが居そうな汚い道。
そこには宿無しの汚らしい老人たちがボロボロの布切れを冷たく硬い床に敷きうずくまっている。それも何十人もいる。その中の一人の老人が話しかけてきて、
「そこのお兄さん、これをワシの孫に届けてはくださらぬか?」
一つの袋を渡してきた。赤なのかピンクなのか分からないほど色あせた袋の中には一つの石が入っていた。
「爺さん、この石は何だ?」
「それは、孫に必要なものだ。何かは分からないが昔孫が国軍の奴らに連れて行かれる時に言っていたんじゃ」
「孫はどこに連れて行かれたんだ? この街の中にいるなら探してやるけど……」
「もうこの街にはいないんじゃ。他の街に連れて行かれてしまったからワシじゃあどうしようもなくてな。あんちゃんならこの街を出ていけるんだろ? 今さっきの広場での会話聞いてたぞ」
鋭いなこの爺さん。
だが俺も今は追われている身だ。目立った行動はできない。まあでも、どうせこの街にはもう居られないしな。仕方ない。
「爺さん、俺なら孫を探してやれる。その石渡しにいってやるよ」
困っているなら助けてしまう、昔からの俺の悪い癖だ。放っておけばいいものを放っておけない。少年漫画の主人公のような自分の身を犠牲にしてでも助けたいとかそういうご立派な思想なんぞは持ち合わせていない。だが自分にできることならしてあげたい。ただそれだけだ。
爺さんはお辞儀をしたあと、
「ありがたい……。少しばかりだがお礼はせねばな」
と言いながら腰に差した剣を渡すように指示してきた。
俺は言っていることとやっていることの違いに違和感があったが爺さんを信用して剣を渡す。爺さんは剣を床に置いて手をかざす。すると剣の柄の部分に焼き印のような白い印が付いた。
「爺さんこれは何なんだ? 何か印が付いたみたいだが……」
「これは付与魔法の一種じゃよ。ワシが使える魔法の中でも上位の付与効果の物をつけておいた。効果は使ってみてのお楽しみじゃわい」
爺さんはニカッと歯を見せて笑う。
「それはそうとあんちゃん、どうやってこの街から出るんじゃ? あいつらはこの街の入り口で待ち伏せしているじゃろう」
「それもそうだな。どうするか。とりあえず出口を探してみるよ」
俺は剣と石の入った袋を受け取り、爺さんの元を去った。
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