超有名歌い手の私は静かに暮らしたい

サラダ菜

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2.どうしよう…

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***

あれからクラスに戻って獅童の様子をこっそり観察していたが、獅童の態度は驚くほど変わらなかった。
私に接触してくる素振りもなく陽キャたちと楽しそうにキャッキャしている。

本来眠気と戦っているはずの午後の授業だけど、私に一切の睡魔は襲ってこなかった。
獅童のことが気になりすぎて眠気なんて感じている暇はない。
当の本人は先生がいくら注意しても動じることなく、イヤホンをつけてスマホを見つめている。
SNSで自分の正体を暴露されるかもしれないとひやひやしていたけど、SNSアプリを見ている様子はなくて安堵する。

…ストーカーじみた行動をしているけど、仕方ない。緊急事態なのだ。
自分にそう言い聞かせて引き続き獅童の観察を続けた。



いつの間にかチャイムの音が鳴り授業が終了したことを知る。
私はゴキブリもびっくりのスピードで窓際にいる親友、阿佐ヶ谷唯あさがやゆいの元に駆け寄った。
いつも気だるそうにしている彼女は私が挙動不審でも全く動じない。
私は昼休みの一連の出来事について獅童に聞こえないよう小さな声で話した。

「で、それアタシに相談してなんか解決するわけ?」

親友の辛辣な一言に首がすくむ。
彼女にだけは自分の正体を明かしているから事の重大さは分かってくれているはずなんだけど…分かってくれてるよね?

「唯、本当にどうしよう。ねえどうしよう」

「ちょっとは自分で考えなよ」

唯は大きなため息をつきながらも、眉間に皺を寄せながら真剣に考えこんでくれている。
このツンデレめ、と言うとられかねないので口をつぐんでおく。

「よりによって獅童にバレたか…アイツのことだから明日には学校中に言いふらしてるんじゃない?」

「そう!わたしもそう思ったの!!だから内緒にしてって頼んだの!!」

「で、なんて?」

「にこーって笑って、そのままさーっと屋上から出てった」

「終わったね」

「諦めないでえええ!!」

もうこの話は終わりだと言わんばかりにスマホをいじり始める唯。
ちょっとひどすぎない!?
唯の袖を引っ張って抗議すると、すごく嫌そうな顔をして手をパチンと叩かれた。
…私たち友達だよね?

「とにかく、今の獅童を放置しとくのはまずいだろうね。もう体でも何でも売って口止めするしかないんじゃない?」

「か、からだ…今日の唯ちゃん一段と辛辣…」

「もう遅いだろうけど、私は歌い手なんかじゃありませんって誤魔化すとか」

「そ、それだ!!!」

「…あんまり得策じゃない気もするけど。ま、コミュ障の夏菜があの獅童にどうやって話しかけるのか見物だね」

「うっ」

ギギギと首を動かしてひと際盛り上がっているグループを見る。
スカートを限界まで短くした女子とやたら声のでかい男子に囲まれている獅童は爽やかに笑っていて、私の視線など全く気にしてない。
獅童は常に周りに友達をはべらせている上に、その友達も陽キャの集まりだからたまったもんじゃない。
いや、そもそも獅童が一人でいたとしても話しかけられるかどうか…

「現実的なのは下校しているところを捕まえるとかじゃない?」

「そそそそれだ!!!」

唯の神助言の連発に抱き着いて頬擦りをすると、やっぱり嫌そうな顔をしている。

「ちなみにアタシは今日バイトだから」

「はい」    

 スマホをいじりながらピシャリと言い放つ唯。
 バイトだからアンタのことは手伝ってあげられないよ、ということだろう。
 もしバイトが無かったら文句を言いながらも手伝ってくれたと思う。
 なんだかんだで優しいんだから。

そうこうしているうちに次の授業が始まった。
私は授業の間「獅童の口止めシミュレーション」に勤しんでいた。

あの~本日の昼頃屋上で恥ずかしげもなく歌を歌っていた者なのですが、実はラギの大ファンでして!声色をラギに似せて歌うのが好きなんですよ~もし声が似ていると思っていただけたのなら恐縮です!
ファン冥利につきますね~!
そういうことなので!
では!

…完璧だ、これでいこう。
肝心なのはいつ話しかけるか…多分獅童は取り巻き達と一緒に帰るだろうから、こっそり後をつけて一人になったところを狙うしかない。
若干ストーカーじみている気がするけど、私の歌い手人生と平和なスクールライフのためにはどうしても必要なことなのだ。
今日だけは許してくださいお巡りさん…

「夏菜何やってんの?もう獅童帰ったよ」

「はっ!」

架空の警察官に謝罪をしている場合じゃなかった。
周りを見渡すととっくに授業は終わった様子で、人もまばらだ。
隣では呆れたと言わんばかりの顔をした唯が腕を組んで立っている。

「ごめん唯、ありがとう!いってきます!」

「バイトなかったら手伝えたんだけどね…」

背後で唯が何か言っていた気もするが気に留める余裕はなかった。
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