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5.デートなんてしたくない
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「…本当に一人で大丈夫?」
「うん!大丈夫!多分!」
「…バイト休もうか」
「いやいやいや!私一人で本当に大丈夫!唯とバイバイしたあと全力ダッシュで逃げるから任せて!」
「…わかった。なんかあったら連絡してよ」
「うん!いつもありがとう、唯」
獅童との一件があってから数日後、唯がバイトのため一緒に下校できないと神妙な顔で伝えてきた。
唯は終始心配そうにしていたけど私は割と楽観視していた。
だって、獅童はいつも固定のグループと一緒に帰宅しているし、万が一下校時刻が重なっても私と獅童の下校ルートはかぶってない。
と、のんきに考えていた数時間前の自分を殴りたい。
「夏菜、このあと予定ないよな?」
「な、なっ、なっ!」
「ないな、よし。タピオカ飲みに行くぞ」
私は校門先で待ち構えていた獅童に一方的に予定を聞かれ、勝手に暇だと決めつけられ、迅速に肩を組まれ拘束された。
あまりの急展開に脳の処理が追い付かず硬直してしまった私は、そのまま獅童に引きずられながら校門を後にした。
「…い、おい、生きてるか」
「ひいっ、生きててすみませんっ」
圧のある声で正気に戻り、とっさに自分が存在していることに対して謝ってしまった。
悲しい性だ。
辺りを見回してみると、どうやら駅前に向かう道のりを歩いているらしい。
も、もしかして本当に駅前のタピオカ店に向かってる?
「俺とのキス、そんなに嫌だったか?」
唐突に数日前の事件について掘り返してくる獅童。
その全く悪びれもしない口ぶりは「俺とキスして喜ばないやつはいないんだけどな」と疑問に持っているかのようだった。
「嫌でしたけど…」
獅童のせいでファーストキスを奪われたのも、とても怖い思いをしたのも事実だ。
嬉しいとかそんな感情は一切なかった。
だからそれが伝わるようにはっきりと拒絶の意を伝えたら、私が強く出ると思わなかったのか獅童は目を丸くしていた。
というか、目立つ獅童と一緒に歩いているところを見られたくないし、今後も関わってほしくない。
獅童の一件で唯にもたくさん迷惑をかけてる。
獅童が面食らってる今、はっきりと自分の思いを伝えるしかないと思い私は勇気を振り絞って口を開いた。
「とにかく、…ラギのことを黙ってくれてるのはありがたいけど、これ以上私に関わらないでほしい、です」
「なんで?」
「わ、わたしは獅童くんみたいな人間とは違うんです。ただ毎日静かに暮らしたいだけなんです」
「あんな有名なのに?」
「そ、それはそれ、これはこれです」
「ふーん。ま、アンタの事情は知らないけど」
獅童は目じりを下げにんまりと笑う。
「俺は夏菜に興味津々だから」
「っ!」
「これくらいはいいだろ」
獅童が近づいてきたからまたキスされると思ってびくりと肩を震わせたら、髪の毛にキスをされた。「これくらい」ってなんだ。私にとっては大ごとだぞ。
「ラギのことは黙っておいてやる。その代わり俺が暇なとき付き合え」
「つ、付き合うって、どこに」
「学校帰りにファミレス行くとか、まあケンゼンなデートってやつ?」
「な、なんで」
「さっきも言っただろ、夏菜に興味があるって。しかも俺にしては配慮してやってんだぞ?普通だったら即ホテル行くところだしな」
「ひっ」
「大丈夫、夏菜とはケンゼンなデートするって。な、いい条件だろ」
獅童と、デート?
あまりの衝撃的な発言に固まってしまう。
二度と関わらないでほしいって告げたはずなのに、なんで定期的にデートする羽目になっているのだろう。
私はおそるおそる口を開いた。
「あの、それって、断ったり、とか」
「できると思ってんの?」
笑顔で一蹴される。
そうですよね、できませんよね。
「契約成立な。ま、デート代は俺が出してやる」
「えっ」
「夏菜みたいなちんちくりんでも一応女だからな」
「ち、ちんちくりん…」
すごくけなされている気がする。
…だけど、冷静に考えたらこの契約って獅童側にメリットがない。
可愛くもない「ちんちくりん」の女とデート、しかもお金は全部自分が出すって…
能力値を顔に全振りしたせいで、頭がバグっちゃったのかな…
「あと、あのヤクザ女にはこのこと内緒にしといてくれ」
「ヤクザ女?」
「いっつも俺のこと睨んでくるアンタの友達だよ!ったく、アイツの監視のせいでこの俺がわざわざアンタのこと待ち伏せする羽目になったんだぞ」
「もしかして唯のこと?」
唯、たまに般若のような形相になってたのは獅童を撃退してくれてたからだったんだ…!
私は今頃一生懸命バイトをしているはずの唯にテレパシーを送る。
ありがとう唯…!
「ひゃああっ」
「おい動くな、前髪留めてやるから」
「えっ遠慮しますっ!!!」
また前髪をかき上げられて、光の速度で獅童の手をはたき落とした。
なんでこの人は毎回私の前髪を上げようとしてくるの!
というかなんでこんなにベタベタできるの!
獅童はなぜか私の前髪を留められないことを不服そうにしていた。
意味が分からない。
「…本当に一人で大丈夫?」
「うん!大丈夫!多分!」
「…バイト休もうか」
「いやいやいや!私一人で本当に大丈夫!唯とバイバイしたあと全力ダッシュで逃げるから任せて!」
「…わかった。なんかあったら連絡してよ」
「うん!いつもありがとう、唯」
獅童との一件があってから数日後、唯がバイトのため一緒に下校できないと神妙な顔で伝えてきた。
唯は終始心配そうにしていたけど私は割と楽観視していた。
だって、獅童はいつも固定のグループと一緒に帰宅しているし、万が一下校時刻が重なっても私と獅童の下校ルートはかぶってない。
と、のんきに考えていた数時間前の自分を殴りたい。
「夏菜、このあと予定ないよな?」
「な、なっ、なっ!」
「ないな、よし。タピオカ飲みに行くぞ」
私は校門先で待ち構えていた獅童に一方的に予定を聞かれ、勝手に暇だと決めつけられ、迅速に肩を組まれ拘束された。
あまりの急展開に脳の処理が追い付かず硬直してしまった私は、そのまま獅童に引きずられながら校門を後にした。
「…い、おい、生きてるか」
「ひいっ、生きててすみませんっ」
圧のある声で正気に戻り、とっさに自分が存在していることに対して謝ってしまった。
悲しい性だ。
辺りを見回してみると、どうやら駅前に向かう道のりを歩いているらしい。
も、もしかして本当に駅前のタピオカ店に向かってる?
「俺とのキス、そんなに嫌だったか?」
唐突に数日前の事件について掘り返してくる獅童。
その全く悪びれもしない口ぶりは「俺とキスして喜ばないやつはいないんだけどな」と疑問に持っているかのようだった。
「嫌でしたけど…」
獅童のせいでファーストキスを奪われたのも、とても怖い思いをしたのも事実だ。
嬉しいとかそんな感情は一切なかった。
だからそれが伝わるようにはっきりと拒絶の意を伝えたら、私が強く出ると思わなかったのか獅童は目を丸くしていた。
というか、目立つ獅童と一緒に歩いているところを見られたくないし、今後も関わってほしくない。
獅童の一件で唯にもたくさん迷惑をかけてる。
獅童が面食らってる今、はっきりと自分の思いを伝えるしかないと思い私は勇気を振り絞って口を開いた。
「とにかく、…ラギのことを黙ってくれてるのはありがたいけど、これ以上私に関わらないでほしい、です」
「なんで?」
「わ、わたしは獅童くんみたいな人間とは違うんです。ただ毎日静かに暮らしたいだけなんです」
「あんな有名なのに?」
「そ、それはそれ、これはこれです」
「ふーん。ま、アンタの事情は知らないけど」
獅童は目じりを下げにんまりと笑う。
「俺は夏菜に興味津々だから」
「っ!」
「これくらいはいいだろ」
獅童が近づいてきたからまたキスされると思ってびくりと肩を震わせたら、髪の毛にキスをされた。「これくらい」ってなんだ。私にとっては大ごとだぞ。
「ラギのことは黙っておいてやる。その代わり俺が暇なとき付き合え」
「つ、付き合うって、どこに」
「学校帰りにファミレス行くとか、まあケンゼンなデートってやつ?」
「な、なんで」
「さっきも言っただろ、夏菜に興味があるって。しかも俺にしては配慮してやってんだぞ?普通だったら即ホテル行くところだしな」
「ひっ」
「大丈夫、夏菜とはケンゼンなデートするって。な、いい条件だろ」
獅童と、デート?
あまりの衝撃的な発言に固まってしまう。
二度と関わらないでほしいって告げたはずなのに、なんで定期的にデートする羽目になっているのだろう。
私はおそるおそる口を開いた。
「あの、それって、断ったり、とか」
「できると思ってんの?」
笑顔で一蹴される。
そうですよね、できませんよね。
「契約成立な。ま、デート代は俺が出してやる」
「えっ」
「夏菜みたいなちんちくりんでも一応女だからな」
「ち、ちんちくりん…」
すごくけなされている気がする。
…だけど、冷静に考えたらこの契約って獅童側にメリットがない。
可愛くもない「ちんちくりん」の女とデート、しかもお金は全部自分が出すって…
能力値を顔に全振りしたせいで、頭がバグっちゃったのかな…
「あと、あのヤクザ女にはこのこと内緒にしといてくれ」
「ヤクザ女?」
「いっつも俺のこと睨んでくるアンタの友達だよ!ったく、アイツの監視のせいでこの俺がわざわざアンタのこと待ち伏せする羽目になったんだぞ」
「もしかして唯のこと?」
唯、たまに般若のような形相になってたのは獅童を撃退してくれてたからだったんだ…!
私は今頃一生懸命バイトをしているはずの唯にテレパシーを送る。
ありがとう唯…!
「ひゃああっ」
「おい動くな、前髪留めてやるから」
「えっ遠慮しますっ!!!」
また前髪をかき上げられて、光の速度で獅童の手をはたき落とした。
なんでこの人は毎回私の前髪を上げようとしてくるの!
というかなんでこんなにベタベタできるの!
獅童はなぜか私の前髪を留められないことを不服そうにしていた。
意味が分からない。
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