超有名歌い手の私は静かに暮らしたい

サラダ菜

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25.私の思い

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「あっああっあの、すっ少しだけ、いいですか…!」

極度の緊張で言葉はつっかえて、声も裏返っている。
みんなはまさか自分が話し始めるなんて思っていなかったみたいで、鳩が豆鉄砲を食ったように目をぱちぱちとさせながらこちらを見ている。
その視線すら緊張に繋がって、一瞬で汗だくになった。

今までの自分だったら、きっとびくびくしながら動向を見守ってただけだったと思う。
でも、その態度こそがみんなに迷惑をかけることになっていると気付いた。


私は弱い。
すごく弱い。
湊くんのようなカリスマ性もないし、唯のように芯の通った強さもない。
八神くんのように周りを癒す力もない。

みんなのようにはなれなくても、少しでもみんなと対等であれるように努力したい。
なんの引け目もなく一緒にいたい。
だから私はどれだけ情けなくても、どもってしまっても、言葉をつむぎ続けた。

「あの、あの…湊くん、八神くん、唯…その、今まで…黙ってて、本当にご、ごめんなさい…わ、私、みんなに迷惑をかけたくなくて…っ

その…花音さんたちに…み、湊くんに近づかないようにと…約束を破ったら唯に危害を加えると…言われていたのは、しっ真実です…

わ、私が…私がみんなに一言相談していれば…そ、そもそも花音さんに初めに忠告されたときに、よく話し合っていれば…みんなに迷惑をかけることも…怒らせることもなかったんです…

だ、だから!その…湊くんたちにも…花音さんたちにも…本当に悪いと思っています!ご、ごめんなさいっ」

途中から何を言ってるのか自分でも分からなくなってきて、とにかく謝らなきゃ!と頭を下げて謝罪する。
一向に誰も喋ろうとしないからおそるおそる頭を上げて様子を伺うと、今度はみんな眉をひそめて怪訝そうにしていた。
みんなの納得がいってなさそうな態度を見て視界がぼやけていく。

「…つまり、お前は全部自分が悪いって言いたいんだな?」

「そ、そうです…」

「「「…」」」

涙目で湊くんの質問に答えると、湊くんと唯は眉間に皺を寄せながら溜め息をついているし、八神くんに至ってはなぜか笑いを堪えている。
三者三様の反応に困惑してしまう。

「…だっる。偽善者気取りかよ」

苦虫を噛み潰したような顔の花音さんがそう呟いた。

まだ偽善者だった方がマシかもしれない。
だけど、それにすらなれなかった。

「わ、私は、偽善者ですらないと思います…ただの…ただの悪者なんです…」

「…はぁ」

花音さんは大きなため息をついて、こちらに向かって歩き出した。
校舎裏の出来事ががフラッシュバックして思わず悲鳴を上げる。

「ひっ…!」

「アンタに用事があるわけじゃないから。乃愛、綺羅、帰るよ」

花音さんが腕組みをしながら歩く一方で、しゃくり上げながら彼女の後ろを着いていく二人。
私のせいで泣かせてしまったと思うと、再び心が痛む。

「おい!」

「み、湊くん!わたしが、私が全部悪いんです!だからもう、喧嘩するのはやめてください…!」

突然彼女たちに掴みかかろうとした湊くんの手を、勇気を出して握り締めた。
ふーふーと荒い呼吸をしていたけど、次第に呼吸は収まっていく。

三人が屋上から出て行くのを見届けた瞬間、再び身体中が湊くんの匂いに包まれた。

「…お前、お人好しにも程があるだろ」

「み、みなとくん、な、なにっ」

「夏菜、二度と俺から離れんな」

「は、え…」

少女漫画でよく見る台詞を実際に耳にして全身が固まる。
湊くんは恋愛経験値が高いからさも当然のようにそんな甘い台詞を吐けるのかもしれないけど、こっちには耐性が無いっていうことをよくよく理解しておいてほしい。

「なんかあったら言えって何度も言っただろ」

「ご、ごめんなさい…」

「次同じことしたら…」

「分かってるな」という台詞を耳元で囁かれ、あまりの色香に一瞬で沸騰したように全身が熱くなる。
耳を塞ごうとしても湊くんの大きな手がそれを許してくれない。

「夏菜が気ぃ失うまでキスしてやる」

「うひゃ、み、耳、やめてっ」

「ああ、キスだけじゃ済まねえかも」

「や、はな、はなしてっ…」


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