超有名歌い手の私は静かに暮らしたい

サラダ菜

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24.真相と追及

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湊くんの悲痛な叫びは屋上に響き渡った。
その叫びを皮切りに、堪えていた涙が頬を次々と伝っていく。

「っふ…も、やだ…」

「…あ?」

「っい、いや、なんですっ!だ、抱きしめられたらっ、わ、忘れられない、じゃないですかっ」

「…」

「っみ、みなとくんのことっ、はやく忘れたいのにっ、なんで…っ」

湊くんのトレードマークである桃色のカーディガンに私の涙がどんどんと零れ落ちていく。
今はそれを申し訳ないと思う余裕すらなかった。

そして鼻腔をくすぐる湊くんの匂い。
この匂いも二度と嗅げないと思っていた。
でも、これ以上この匂いを身体に覚えさせちゃいけない。
そう分かっているのに、大人しく腕の中に納まっている自分が情けない。

「俺のこと忘れる必要なんてないだろ」

「…あ、あります」

「なら理由を説明してみろ」

だって、湊くんを忘れないと、接触を絶たないとみんなが不幸になってしまう。…だけどギャルたちから脅されたことは湊くんには言えない。
適切な言い訳が思い浮かばず、冷や汗がたらりと伝っていく。

「アイツらに脅されたから俺を避けてたんだな?」

「ち、ちがっ」

「なら、俺のことが嫌いになったのか」

顔を上げると、切ない顔をしてこちらを見つめている湊くん。
私、湊くんに迷惑をかけるだけじゃなくて傷付けてしまった。
枯れ始めていた涙が再び溢れてくる。

「っ、きらいじゃ、ない、です」



「はーい、シリアスな雰囲気の中で堂々とイチャつくのやめてねえ」

間延びした声で一気に現実に引き戻される。

そうだ。
ここ屋上だし、八神くんも唯もギャルたちもいるんだった。

一向に私から離れようとしない湊くんを八神くんがベリベリと引き剥がしている。
後ろに立っている唯の表情も容易に想像がつく。

八神くんは湊くんを引き剥がしながら、いつもの調子で話を進めた。

「夏菜ちゃん、いじめを公言したら唯ちゃんも虐めるぞっておどされたりしてなあい?」

「っ!!」

「あービンゴだあ」

突然の確信をついた質問に目を見開く。
もちろんそんな反応をすれば「当たりです」と言っているようなものだ。
私だけではなくギャル三人組の顔も強張こわばる。

「…夏菜、今の話本当?」

「ゆ、唯…」

「はぁ…。アンタが底抜けにお人好しな性格ってのは分かってたけど…もう少し親友のことを信用してくれてもいいんじゃない?」

「あ、ご、ごめん…」

「…いや、夏菜が悪いんじゃない」

そう言って唯は彼女たちを睨む。
湊くんと八神くんも同様に怖い顔をしている。

「…何?私たちが悪いとでも言いたいの?」

花音さんがため息をついて吐き捨てるように言った。

「元々湊と一緒にいたのはウチら。それを横取りしてきたのはそいつ。そのこすい女に文句言うことの何が悪いわけ?」

「そうだよぉ!自分ばっかり被害者ヅラしちゃってさぁ!ウチらだって傷付いたのに」

突如屋上に鳴り響いた轟音で二人の甲高い声が止まる。
おそるおそる音のした方向を向いてみると、そこにはフェンスに拳を振り下ろしている湊くんの姿があった。
拳からは血が垂れていて、明らかに怒っていると一目見てわかる。

「てめえら、いい加減にしろよ…!」

「…自分勝手すぎるよね」

湊くんのあとに八神くんが続く。
いつも笑っている八神くん無表情だとかなり怖い。

「誰とつるむかは俺が決める。お前らに指図される筋合いはねえ。少なくとも平気で人を虐める奴らと一緒にいようとは思わねえ」

「冷静に考えて悪いのは100%花音たちだよね?なんでそんなに高飛車でいられるの?」

花音さんを筆頭とした三人の顔がどんどんと青ざめていく。
仮に私が彼女たちと同じ立場だったら今頃大泣きしているところだろう。
それくらい二人の迫力は凄まじいものがある。

「…なんでウチらのことばっかり責めるの!?」

「お前らが全面的に悪いから」

「早く夏菜ちゃんに謝ってくれる?」

花音さんが反論しても湊くんと八神くんは全く動じない。
花音さん以外の二人は圧に耐えきれずポロポロと涙を流し始めた。



唯、湊くん、八神くんが一生懸命私の居場所を作ろうとしてくれていることは、迷惑をかけて申し訳ないとは思いつつも、実は言葉では形容しがたいほど嬉しかった。
もう一度戻れるなら、あの楽しかったころに戻りたい。
何より湊くんと再び一緒にいたい。

だけどそのために彼女たちを責めあげて、泣かせるのは違う気がする。
自分が同じことをされたからこそ、三人を見ていて心が痛む。

私の選択は間違っているかもしれない。
そう思いながらも勇気を出して口を開いた。
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