34 / 39
34.人知れぬ努力
しおりを挟む
そして今に至るわけだけど、もちろん私は裏方で唯も一緒に裏方をやってくれている。
唯は最初全然乗り気じゃなくて、夏休みは毎日バイトを入れる予定だった。
だけど、私と大地くんが必死で一緒にやろうと説得し続けて、ようやく首を縦に振ってくれた。
説得してる時に、あの唯と犬猿の仲の湊くんが「お前がいねえと夏菜がぼっちになるだろ」とぼそっと呟いたのは驚いた。
たしかに湊くんの言うことは事実なんだけど…
でも、きっと唯にも心を許し始めてるからこそ、遠回しに参加しろって誘ったんじゃないかな?って私は勝手に思っている。
「文化祭準備」というまさに青春!みたいなイベントに、実は並々ならぬ憧れがあった私。
だけど去年はぼっちで楽しさの欠片もなくただ雑用をこなすだけだった。
正直どんな出し物をしたかすら記憶にない。
だけど、今年こそは大好きな人たちと青春を謳歌したい!
…という邪な想いで唯を説得した。
きっと八神くんは唯ともっと仲良くなりたかったんだろうな。
あの二人の様子を見る限り、順調に仲良くなっていると思う。
ちなみに今も隣でニコニコしている八神くんは、
「おい、早く練習に戻って来いよ」
「ちょっとくらいいいじゃーん」
「リーダーがサボってたら周りに示しがつかねえだろ!」
まさかのダンスリーダーだ。
八神くんはダンスができるなんて、役割決めのあの日まで全く知らなかった。
実は子供の頃からダンスを習っているらしい。
そして、ダンスの練習が始まるたびに裏方の女子たちが何人かいなくなる。
普段おっとりとしている八神くんが魅せるダンスは女子のハートをがっつり掴んでいった。
私も見せてもらったけど、たしかにすごくかっこよかった。
…八神くん曰く、肝心の唯に全く響いていなかったのがショックらしいけど。
改めて八神くんもすごい人だなと実感する。
「この先のパート、八神がいないと成り立たねえんだからな」
「あっちょっと、唯ちゃーん!!」
八神くんはダンスメンバー数人に掴まって、引きずられるように教室から退場していった。
あれだけ大声で自分の名前を叫ばれても微動だにせず、未だに絵の具と格闘していられる唯も中々すごいと思う。
「一回合わせるか」
湊くんの声が聞こえてきて壇上に視線をやると、湊くんを含めたメンバーがアンプを繋いだり楽器を鳴らしたりして慌ただしく準備をしている。
他愛のない話をしながら笑っている4人だけど、はじめのことを思うと信じられない光景だ。
ボーカル担当の黄崎くんは元々湊くんと同じグループだったから、二人は初めから仲が良かった。
出し物決めのときは難色を示していた黄崎くんだけど、獅童がやるならと割とすぐ乗り気になった。
だけど、問題だったのは赤井くんと青山くんだった。
ギター担当の赤井くんは、誰とでも仲良くできるけど目立ちはしない普通の男の子。
ドラム担当の青山くんは、私に似て割と一人を好むような男の子。
彼らは趣味でそれぞれの楽器を弾いていたものの、披露する腕前ではないし目立ちたくない、とバンドに対しかなり否定的だった。
それに対して真摯に向き合っていたのは、はじめ二人と同様にバンドに乗り気ではなかった湊くんらしい。
らしい、というのはあくまで八神くんから聞いただけで、本人からは聞いていないから。
事あるごとに二人を説得して、お前らがいないと成り立たない、協力してほしいと何度もお願いしていたらしい。
「こんなことを夏菜ちゃんに言ったって知られたら殺されるから内緒にしておいてね」と八神くんからは釘を刺されているけど、あの俺様湊くんが自分からお願いするなんてすごい。
湊くんは出会ったときよりも随分と丸くなったと思う。
自分本位な行動も稀にあるけど、それよりも人の為に動くことが多くなった。
私はそんな湊くんに何度も救われている。
今の湊くんじゃなかったら、きっと赤井くんと青山くんを説得することもなくて、この出し物自体も成立していないかったかもしれない。
やっぱり湊くんはすごいなあと一人うんうんと頷いていた。
唯は最初全然乗り気じゃなくて、夏休みは毎日バイトを入れる予定だった。
だけど、私と大地くんが必死で一緒にやろうと説得し続けて、ようやく首を縦に振ってくれた。
説得してる時に、あの唯と犬猿の仲の湊くんが「お前がいねえと夏菜がぼっちになるだろ」とぼそっと呟いたのは驚いた。
たしかに湊くんの言うことは事実なんだけど…
でも、きっと唯にも心を許し始めてるからこそ、遠回しに参加しろって誘ったんじゃないかな?って私は勝手に思っている。
「文化祭準備」というまさに青春!みたいなイベントに、実は並々ならぬ憧れがあった私。
だけど去年はぼっちで楽しさの欠片もなくただ雑用をこなすだけだった。
正直どんな出し物をしたかすら記憶にない。
だけど、今年こそは大好きな人たちと青春を謳歌したい!
…という邪な想いで唯を説得した。
きっと八神くんは唯ともっと仲良くなりたかったんだろうな。
あの二人の様子を見る限り、順調に仲良くなっていると思う。
ちなみに今も隣でニコニコしている八神くんは、
「おい、早く練習に戻って来いよ」
「ちょっとくらいいいじゃーん」
「リーダーがサボってたら周りに示しがつかねえだろ!」
まさかのダンスリーダーだ。
八神くんはダンスができるなんて、役割決めのあの日まで全く知らなかった。
実は子供の頃からダンスを習っているらしい。
そして、ダンスの練習が始まるたびに裏方の女子たちが何人かいなくなる。
普段おっとりとしている八神くんが魅せるダンスは女子のハートをがっつり掴んでいった。
私も見せてもらったけど、たしかにすごくかっこよかった。
…八神くん曰く、肝心の唯に全く響いていなかったのがショックらしいけど。
改めて八神くんもすごい人だなと実感する。
「この先のパート、八神がいないと成り立たねえんだからな」
「あっちょっと、唯ちゃーん!!」
八神くんはダンスメンバー数人に掴まって、引きずられるように教室から退場していった。
あれだけ大声で自分の名前を叫ばれても微動だにせず、未だに絵の具と格闘していられる唯も中々すごいと思う。
「一回合わせるか」
湊くんの声が聞こえてきて壇上に視線をやると、湊くんを含めたメンバーがアンプを繋いだり楽器を鳴らしたりして慌ただしく準備をしている。
他愛のない話をしながら笑っている4人だけど、はじめのことを思うと信じられない光景だ。
ボーカル担当の黄崎くんは元々湊くんと同じグループだったから、二人は初めから仲が良かった。
出し物決めのときは難色を示していた黄崎くんだけど、獅童がやるならと割とすぐ乗り気になった。
だけど、問題だったのは赤井くんと青山くんだった。
ギター担当の赤井くんは、誰とでも仲良くできるけど目立ちはしない普通の男の子。
ドラム担当の青山くんは、私に似て割と一人を好むような男の子。
彼らは趣味でそれぞれの楽器を弾いていたものの、披露する腕前ではないし目立ちたくない、とバンドに対しかなり否定的だった。
それに対して真摯に向き合っていたのは、はじめ二人と同様にバンドに乗り気ではなかった湊くんらしい。
らしい、というのはあくまで八神くんから聞いただけで、本人からは聞いていないから。
事あるごとに二人を説得して、お前らがいないと成り立たない、協力してほしいと何度もお願いしていたらしい。
「こんなことを夏菜ちゃんに言ったって知られたら殺されるから内緒にしておいてね」と八神くんからは釘を刺されているけど、あの俺様湊くんが自分からお願いするなんてすごい。
湊くんは出会ったときよりも随分と丸くなったと思う。
自分本位な行動も稀にあるけど、それよりも人の為に動くことが多くなった。
私はそんな湊くんに何度も救われている。
今の湊くんじゃなかったら、きっと赤井くんと青山くんを説得することもなくて、この出し物自体も成立していないかったかもしれない。
やっぱり湊くんはすごいなあと一人うんうんと頷いていた。
0
あなたにおすすめの小説
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが
akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。
毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。
そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。
数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。
平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、
幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。
笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。
気づけば心を奪われる――
幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
モテ男とデキ女の奥手な恋
松丹子
恋愛
来るもの拒まず去るもの追わずなモテ男、神崎政人。
学歴、仕事共に、エリート過ぎることに悩む同期、橘彩乃。
ただの同期として接していた二人は、ある日を境に接近していくが、互いに近づく勇気がないまま、関係をこじらせていく。
そんなじれじれな話です。
*学歴についての偏った見解が出てきますので、ご了承の上ご覧ください。(1/23追記)
*エセ関西弁とエセ博多弁が出てきます。
*拙著『神崎くんは残念なイケメン』の登場人物が出てきますが、単体で読めます。
ただし、こちらの方が後の話になるため、前著のネタバレを含みます。
*作品に出てくる団体は実在の団体と関係ありません。
関連作品(どれも政人が出ます。時系列順。カッコ内主役)
『期待外れな吉田さん、自由人な前田くん』(隼人友人、サリー)
『初恋旅行に出かけます』(山口ヒカル)
『物狂ほしや色と情』(名取葉子)
『さくやこの』(江原あきら)
『爆走織姫はやさぐれ彦星と結ばれたい!』(阿久津)
義父の連れ子から逃れたい。猛勉強して志望校変更したら、家庭内ストーカーになった義弟
東山 庭子
恋愛
親の再婚で姉弟となった南と蓮。女癖の悪い蓮と離れたくてこっそり志望校を変えた南は、その後蓮の歪んだ溺愛に悩まされていく。
続編「義母の連れ子と結婚したい♡ 追いかけて追いかけて、やっと捕まえた義姉と俺のイチャラブ日記♡」
→https://www.alphapolis.co.jp/novel/440565753/636968278
佐久間 蓮(さくま れん)
佐久間 南(さくま みなみ)
椿→南の友達
亜耶→椿のハトコ
【完結】好きって言ってないのに、なぜか学園中にバレてる件。
東野あさひ
恋愛
「好きって言ってないのに、なんでバレてるんだよ!?」
──平凡な男子高校生・真嶋蒼汰の一言から、すべての誤解が始まった。
購買で「好きなパンは?」と聞かれ、「好きです!」と答えただけ。
それなのにStarChat(学園SNS)では“告白事件”として炎上、
いつの間にか“七瀬ひよりと両想い”扱いに!?
否定しても、弁解しても、誤解はどんどん拡散。
気づけば――“誤解”が、少しずつ“恋”に変わっていく。
ツンデレ男子×天然ヒロインが織りなす、SNS時代の爆笑すれ違いラブコメ!
最後は笑って、ちょっと泣ける。
#誤解が本当の恋になる瞬間、あなたもきっとトレンド入り。
【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!
satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。
働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。
早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。
そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。
大丈夫なのかなぁ?
友達婚~5年もあいつに片想い~
日下奈緒
恋愛
求人サイトの作成の仕事をしている梨衣は
同僚の大樹に5年も片想いしている
5年前にした
「お互い30歳になっても独身だったら結婚するか」
梨衣は今30歳
その約束を大樹は覚えているのか
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる