ひとりよがりなFalse Face

水戸けい

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「せいぜい恋人らしく振る舞えるように、がんばれよ」

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「どうせならさ、こっちの準備が整ってから勝負しないか? 賭けるんだし、練習期間を作るとかさ」

「なんだよ。興味ねぇから話に入ってこないのかと思ってたら、やる気まんまんじゃねぇか」

 真がからかうように譲の背を叩く。

「どうせするなら、とことんのほうが面白いだろ」

「そうだな。文化祭終わったとこで、次のバイト代が入るまで、あんま金もねぇし。――あ、そうか。それならさ、クリスマス前の連休の初日を勝負の日にしねぇ?」

 何かを思いついた重人の笑みに、疑問を浮かべた視線が集まった。

「二千円ずつでも、クリスマスデートの足しにできたら俺ら、助かるだろ。コイツらは、今からだいだい一ヵ月半、恋人の練習が出来るし。そんだけ練習できたら、十分だろ」

「なるほどな」

 勝昭が頷き

「そうしようぜ」

 真が提案に乗った。

「クリスマス直前に二千円の出費、覚悟しとけよ」

 勝つ気満々の恭平を、三人が鼻で笑った。

「せいぜい恋人らしく振る舞えるように、がんばれよ」

 どうせ無理だろうけどな、という言外の雰囲気を無視して額面どおりに受け取った譲が、楽しそうな声を恭平にかけた。

「がんばろうな、恭平」

 無邪気なその笑みに、恭平は胸の奥に疼くような甘い痛みを覚えつつ、三人に挑む瞳を向けた。

「ぜってぇ、騙し尽くしてやるからな」

 こうして、恭平と譲の『恋人に見えるようになる特訓』がはじまった。

 ◇◆◇

 まずは女装のレベルがどの程度のものかを見てもらうため、恭平は譲を家に招いた。

「おじゃまします」

「おう。部屋で適当にしといてくれ」

「わかった」

 小さなころから来なれている譲は、勝手知ったる足取りで恭平の部屋に上がる。恭平はキッチンに菓子と飲み物を取りに行った。

 自分の部屋のように、譲は恭平のベッドに腰を掛けて枕元に並んでいる漫画に手を伸ばし、読み始めた。読み進めている間に自然と体が傾き、仰向けに寝そべる。一冊目を読み終え、二冊目に手を伸ばしても恭平は部屋に来ない。それを気にする事も無く、譲は二冊目を読み進め、ノックの音に体を起こした。
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