ひとりよがりなFalse Face

水戸けい

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譲の全身が強張っていく。

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 言い訳めいた言葉を、祈るように譲は紡ぐ。

「最後まで続けよう」

 想い続けた相手と、疑似でも恋愛ができるのだから。恋人でいられるのだから。叶うはずのなかった夢が、現実となって与えられたのだから。

 最後まで、続けたい。

「恋人らしく見えるように、頑張るからさ。だから、勝負のためだけじゃなくってさ。俺に彼女が出来た時、恥をかかないようにするための予行練習も兼ねてだと思って、恭平も遠慮せずに注文を付けたりしてくれよ」

 頼む、と心の中で手を合わせて祈る。続けると言ってくれと、譲は声に出さずに訴えた。

「……そうだな。譲に彼女ができた時に、困らないように教えるつもりでしても、いいかもな」

 そう言った恭平が泣きそうに見えたのは、きっと自分がその嘘に泣きそうになっているからだと、譲は甘苦しく痛む胸に息を漏らした。

◇◆◇

 駅前のショッピングモールに入ってすぐのベンチで、譲は落ち着きなく座っていた。待ち合わせは十一時半。譲が到着したのは十五分ほど前で、今はそれから五分強、経過していた。

 平日の昼間なので、それほど人はいない。自分と同じくらいの年代の人や、子連れの主婦の姿がある。いつもつるんでいる所よりも少し遠いショッピングモールなら、重人や勝昭、真らと顔を合わせる率が低いだろうと、恭平がデートの練習に選んだ場所だった。

 大きなガラスの自動ドアが開く音に、譲はいちいち緊張を走らせて、足音が自分に近づくか否か、耳をそばだてた。ドアを眺めて待ち遠しくしているというのは、なんとなく格好悪い気がして、顔を店内へ向けている。それなのに耳をそばだてている自分は、ひどく滑稽だなと思いつつも、そうする以外にどうすればいいのかが、わからなかった。

 自動ドアが開き、足音がした。それが近づいてきて、譲の全身が強張っていく。

 いや、まだ約束の時間まで五分以上あるし。恭平はいつも時間ぴったりに来るし。俺の隣の人とか、この先の店に用事がある誰かだろう。きっと、恭平じゃない。

 恭平であってほしいと思いつつ、違っていた場合の落胆に備えて、そんなことを考える譲の肩が叩かれた。

「ごめん。おまたせ」

 そのとたん、ばね仕掛けの人形のように立ち上がった譲は、体ごと勢いよく振り向いた。

「いや。俺も今、来たとこだし。待ってないから」

 ガチガチに緊張して返せば、ふわりと恭平が――本田薫がほほ笑んだ。

「模範解答」

「えっ」

「緊張しすぎ」
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