ひとりよがりなFalse Face

水戸けい

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 どうして、恭平は俺に簡単にキスができるんだ。

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 けれど緊張しすぎて、ほんとうにいいのかと不安がよぎって、意気地が足りずにできなかった。

 嫌だったわけじゃない。気持ち悪いなんて、思っていない。

「ただ、どうしていいか、わかんなかっただけで」

 恭平は、どんな気持ちでキスをしてくれるのかが、気になって。

「キスなんて、そんな、その、アレだし」

 恭平になら、恭平となら、キスも、それ以上のこともできる。抱かれているときに、嫌悪なんて少しも感じていなかったんだから。恭平が望むなら、俺を望んでくれるのなら、抱くほうだろうと、抱かれるほうだろうと、かまわないと思っているのだから。

「こんなことで気を使わなくても。別に、俺は譲から離れたりしねぇよ」

 そうじゃない。

「ほら、譲」

 離せよと、手のひらに言葉を乗せて恭平が譲の腕を叩く。

 どうして、恭平は俺に簡単にキスができるんだ。

 どうして、恭平は俺を抱いて、それを無かったことにしたんだろう。

「譲、ほら」

 ぽんぽんと腕を叩かれ促され、譲はしぶしぶ離しながら、胸に渦巻く感情を伝える術を持たない自分の、伝える勇気を出せない自分の情けなさに落ち込んだ。

「恭平は、いろんな相手と付き合ってきたんだよな」

「ん?」

 ぐるぐると、譲の腹の底で疑問が渦を巻いている。

「なんか、高校んときから彼女、途切れてないからさ」

 恭平の表情が知りたいのに、譲は顔を上げられぬまま問うた。

「まあ、そうだなぁ。いろんな相手と、付き合ってきたな」

「本田薫は、今までの彼女たちの行動とか、そういう経験を思い出して、ふるまうんだよな」

 確認をするように、言葉を選んで口にした。思いを伝える勇気はないけれど、恭平とこのまま終わりたくない。終わらせようとしている恭平を引きとめようと、譲は必死に言葉を探す。

「そりゃあな。身近な女つったら和音もいるけどさ。アイツのまねをしても、仕方ねぇだろ。同じ女でも、彼女と妹じゃあ、俺に対する態度は違うし」

「そっか」

「どうしたんだよ、譲」

 ぐっ、と腹に力を込めて情けない自分を押し込んだ譲は、いつもの笑みを浮かべなければと気合を入れて、顔を上げた。

「俺、いまだに彼女いないしさ。今後、好きな人ができたときに、勉強になるし予行練習になるし。情けない所とか、カッコ悪い所とかあっても、恭平にならどうすればいいか聞けるしさ。だから、大丈夫だから」
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