ひとりよがりなFalse Face

水戸けい

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「自分から手を出しておいて、何を考えてんだ。俺は」

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 何度も何度も、恭平が俺の名を呼んでいる。

 譲はたわんだ意識で、それを聞いていた。

「いっそ、このまま」

 このまま、どうだというのだろう。恭平は、何を望んでいるのだろう。

「まさかな」

 何が、まさかなのだろう。

 酒と性行の名残で鈍った思考で、譲は恭平の呟きを聞きながら懸命に考えた。

「俺の名を呼んだのは、無意識だよな」

 恭平は、俺の意識が無いことを望んでいるのか。俺が、どこまで覚えていて、どこまで覚えていないことを望んでいるのだろう。

「自分から手を出しておいて、何を考えてんだ。俺は」

 ああ、恭平が悔やんでいる。俺と繋がったことを、悔やんでいる。なら、俺は正気が無かったことにしよう。そうすれば、恭平はまた俺と繋がってくれるかもしれない。

「譲」

 呼びかけに、譲は腕を伸ばし恭平の背を撫でた。恭平の体がこわばる。重い瞼を押し上げれば、不安を余裕で隠そうとして、完全に失敗をしている恭平がいた。

「ねむい」

 意図せずに、そんな言葉が譲の口を出た。零れた自分の声が思うよりもずっと物憂げで、口に出して自覚したことで、よけいに眠気が増した気がする。

「ふろ」

 ボンヤリとした声で、恭平に告げる。とりあえず、風呂に入って酒気を抜かなければ。

 恭平の背に乗せていた手を伸ばして譲が起き上がろうとすれば、恭平が身を起こすのを助けてくれた。どろりと、体内から恭平があふれて産毛が逆立つ。

「ふぅ」

 身を起こした譲の唇から、半分眠りに入った息が漏れた。体は泥の中にいるように重いのに、思考ははっきりと働いている。働いていると思っているだけかもしれないが、泥迷はしていないはずだ。

「譲」

 気づかわしげに恭平が呼び、譲は気だるく目を上げた。

「シャワー、浴びたい」

 蛇口を求めて譲が手を伸ばせば、恭平が立ち上がりシャワーコックを手にして、譲に湯をかけた。譲がおとなしく浴びていると湯が止んで、恭平の手が彼の頭をわしわしと擦る。泡が床に落ちて、シャンプーをしてくれているのだとわかった。

 気持ちがいい。

 そのまま恭平のなすがままに髪を洗われ体を洗われ、譲は浴槽の縁に手をかけて、ゆる慢な動きで湯船に身を沈めた。
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