ひとりよがりなFalse Face

水戸けい

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そう言い切れる自信が無くて、譲は項垂れた。

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 その流れに乗り、譲は駅に背を向けて歩き出した。

 無機質なガードレールと同じ程度の認識しかない通行人に交じり、譲は流れに添って足を動かす。そのまま進んでいくとコーヒーショップの前に出た。譲は足を止め、モーニングセットの看板に目を落とした。

 腹減ったなと言ってホテルを出たけれど、どこにも入らず恭平は帰ってしまった。

 自分とホテルに入り、最後までしたことを後悔しているのだろうか。

 ――自分から手を出しておいて、何を考えてんだ。俺は。

 恭平の声を思い出し、譲は彼の意図を探るように、考えを巡らせる。

 きっと、悔やんでいるのだろう。俺の意識が無かったのだと、思いたいに違いない。それでも、別れ際のキスは受け止めてくれた。それを拒めば、変だと思われると考えたからなのだろうか。少なくとも、自分は恭平の性欲の対象にはなりうるらしい。でなければ、こんな図体の大きな男を二回も抱こうなんて、思わないだろうから。

 ほんの少しの希望が湧いたところで、譲は「いや」と首を振る。

 ただの物珍しさだけで、手近な自分に手を出してみたなんてことは考えられないか。いろんな女性と関係を持つ間に、男同士はどうなのだろうと興味を持って、丁度いい相手だと思い、手を出したということはないだろうか。

 違う。

 恭平は、そんなことをするような奴じゃない。

 けれど。

 そう言い切れる自信が無くて、譲は項垂れた。

 恭平が、どんなふうに彼女と付き合って来たのかを、譲は知らない。恋人だけではなく、どんな友人と付き合っているのか、どんな認識を持つ相手に囲まれているのかを、知らない。高校からの恭平を取り巻いている環境を、話に聞く以上には知らなかった。譲の知らない認識が恭平の周囲にはたくさんあって、自分の知らない恭平を構成しているのではないか。その、知らない部分が作用して、恭平に自分を抱かせたのではないか。

 いくら考えても、憶測から答えが見つかるはずがない。問わなければ、恭平の気持ちを知ることが出来ない。そして、譲は問える機会を自分から手放した。恭平を失うかもしれない恐怖から、何も言わない恭平に便乗した。

「譲」

 意識を思考に沈めていた譲は、突然声をかけられ驚き振り向く。そこには、同じ大学の枝野晴彦がいた。

「何、ぼんやりと看板を眺めてんだよ」

 晴彦は手ぶらで、ジーンズのポケットに手を突っ込んで立っていた。とっさに返す言葉が出てこずに、長身の譲と変わらぬ彼の顔をぼんやりと見つめていれば、腕を掴まれた。

「朝飯まだなら、俺に付き合ってくれよ。用事、なんかあんのか?」

「いや、無いけど」
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