ひとりよがりなFalse Face

水戸けい

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「うん、そう。心配かけて、ごめんな」

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「いや、その」

 二人で決めた設定を、譲は口にした。

「俺が一目ぼれして。それで、向こうはなんか、時々俺が友達に会いに来てるのを見てたとかで、それでなんか、うん」

 付き合うことになった、と言えずに中途半端に止めた譲を、じっと晴彦が見つめる。何かを見極めようとするような晴彦の視線に耐えられなくなり、譲は立ち上がった。

「俺、バイトあるから」

「ああ、そっか。引き留めてごめんな。なんか、落ち込んでるみたいだったから、気になってさ」

「いや。ごめん。ありがと」

「話を聞くぐらいなら、出来るからさ」

「うん」

「ていうか。なんであんな顔をしていたのか、聞いてもいいなら教えてほしいんだけど」

「いや。なんでもないんだ。ちょっと、寝不足でさ」

「そっか」

「うん、そう。心配かけて、ごめんな」

 感謝を込めた譲の謝罪を、晴彦が受け止める。会計を済ませ、店を出た。じゃあなと別れて少ししてから、譲はスマホを取り出しメールが着ていないことを確認し、少し迷ってから恭平にメールを打つ。

 『今日は、もう会わない予定にする?』

 これでは会わない予定にしたいと言っているようだなと、送信する前に消した。道の端に立ち止まり、どう送ろうかと言葉を探す。探しながら、自分は恭平に会いたいのか、会いたくないのかと心に問うた。

 恭平のことは、好きだ。叶わぬと解かっていながら気持ちが止められず、堪える事しか出来ずにいた。彼女と別れたという言葉に、申し訳なくも嬉しくなる自分を認識していた。新しい彼女が出来たと聞かされ、おめでとうと言いながら落胆している自分も。

 かりそめであっても恋人という立場にいられることは、単純に嬉しい。期間限定であっても、夢のまた夢であったことが現実になっている。恭平ではなく『本田薫』であったとしても、だ。

 恋人でいられるのは、あと一か月程度。

 終れば、また友達に戻る。

 キスをしたことも、抱かれたことも夢幻となって記憶の中に沈み、思い出に変わる。恭平はすぐに新しい彼女を見つけ、クリスマスを過ごすのだろう。

 自分ではない誰かと、クリスマスを過ごすのだろう。

 自分の事など忘れて。

 新しい彼女と。
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