ひとりよがりなFalse Face

水戸けい

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「見かけたとき、なんか死にそうな顔してた」

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 譲は顔を上げ、壁に貼られている花の写真のカレンダーに目を向けた。昨日の日付、十一月二十三日まで、斜線が引かれている。

 恭平と恋人でいられる期間は、あと一か月程度。

 今日の約束は、どうするのだろう。

 そんなことを考えながら、もそもそと譲は食べ進める。味を感じないまま箸を動かし、気付けば全て食べ終わっていた。

「コーヒー、飲むか」

「ああ、うん」

 食後のコーヒーを晴彦が注文した。

「デザートも、なんか食べるか? ここのおばちゃんが作ったチーズケーキか、コーヒーゼリーか、バニラアイスぐらいしかないけど」

「いや、いいよ」

「そっか」

 膳が下げられ、コーヒーが置かれる。ほんのりと香ばしいコーヒーに砂糖とミルクを入れて掻きまわせば、香りが広がった。それを深く鼻に吸い込むと、知らぬ間に縮こまっていた譲の心がほぐれる。口を付けて息を吐けば、微笑を浮かべる晴彦と目があった。

「えっと」

 何か言わなければいけないような気になったが、これといった言葉が見当たらない。言葉を探す譲に、晴彦が笑みを深めた。

「見かけたとき、なんか死にそうな顔してた」

「えっ」

「駅で、彼女っぽい人にキスするとこを見かけてさ。その後、なんか死にそうな顔してフラフラ歩き出したから、気になってさ」

「そ、う……なんだ」

 見られていたのか。恭平にキスをして、見送るところから。

 気恥ずかしくなって、譲は目を逸らしコーヒーを啜った。

「そんな、死にそうな顔してた?」

「してたから、後をつけて声をかけたんだよ」

「ごめん」

「なんで謝るんだよ」

 親しみのこもった晴彦の苦笑に、譲はもう一度「ごめん」と呟く。

「あのさ。あの、彼女なんだけど」

「ああ。本田薫って言って、友達の大学の文化祭に遊びに行った時に、知り合ってさ」

「ふうん」

 晴彦が探るような目をして、譲は居心地が悪くなった。

「譲がナンパしたとか?」
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