ひとりよがりなFalse Face

水戸けい

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譲の表情を気にしながら、晴彦が告げた。

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 ベッドとちゃぶ台。テレビ台がわりのカーラーボックスの横に、スチールラックが置いてある。ベッドの上には脱ぎ捨てた寝巻と漫画雑誌。床には、ジーンズと靴下が転がっていた。

「さっき飲んだとこだけど、コーヒーでいいか」

「ああ、うん」

 湯を沸かしてコーヒーの準備をしている晴彦の背中を眺める譲の心臓は、バクバクと大きな鼓動を響かせていた。晴彦に何を言われるのだろう。晴彦は何を言おうとしているのだろうか。

「先に、砂糖とミルク入れちまったけど、いいよな」

「ありがとう」

 受けとり、口をつければ譲好みの甘さで驚いた。

「さっき、砂糖を二杯入れてたからさ」

 何でも無いことのように、晴彦が言う。

「さっきの話なんだけど」

 腰を落ち着けた晴彦がすぐに切り出し、マグカップを持つ譲の手に、自然と力がこもった。

「えっと。なんて名前だっけ、譲の彼女。まあいいや。あの子さ、三笠山大学の文化祭で女装喫茶してた、相模原恭平って名前の、男なんだよ」

 譲の表情を気にしながら、晴彦が告げた。

「女を切らしたことが無いって奴でさ。けっこう派手に遊んでるらしくて。だから、譲が、その、先に告白したんだっけ? 一目ぼれしたって言ったら、向こうも見てたって返事をされたんだったよな。真面目でおとなしそうに見えるし、からかってやろうって思われて騙されて、笑いものにされてるんじゃないか」

 気遣わしげに眉根を寄せ、じっと目の奥を見つめてくる晴彦から、譲は目を逸らした。

 まさか本田薫を――女装をしている恭平を知っている誰かに、見られるとは思わなかった。

「いや、俺は」

「早く、別れた方が良い。ああ、そうか。彼女が男だったってことを知って、それでさっき、あんな顔してたんだろう」

 ひとりで納得をしている晴彦に、どう返答をすればいいのかと譲は必死に考える。

「あの女の正体は、遊び人みたいな男だからさ。気を使わずに、すっぱりと別れた方が良いよ」

「恭平は、遊び人じゃない!」

 自分でも驚くほど、大きな声が出た。目を丸くする晴彦に、逸らした目をしっかりと向けて、譲は悔しげに下唇を噛んだ。

 モテるから、彼女と別れてもすぐに付き合う相手が見つかるだけだ。だから、恭平はそんなふうに勘違いをされているだけで、遊び人ではない。誰かをからかって遊ぶような人間じゃない。
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