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「抱かれてねぇってんなら、証拠を見せろ」
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枝野晴彦に。
「されてないよ」
「じゃあ、これは何だ」
うっ血を撫で、恭平は怒りに震えた。女の姿をしているとはいえ、男と分かっている相手にキスが出来たのは、そういう経験があったからか。
「彼女なしでも、彼氏はいたってワケかよ」
喉の奥で、恭平は自分を嘲った。譲への想いを隠すために、好きでも無い相手と付き合って来た。想いは叶わぬと決めつけ、向き合わずに逃げていた。その間に、譲は誰かの手に落ちていて――あるいは初めてが枝野晴彦で。
「恭平? 何、言ってんだよ」
「そうなんだろう」
「だから、違うって」
「抱かれてねぇってんなら、証拠を見せろ」
「証拠って、どうするんだよ」
恭平がたくしあげた上着を、譲が不機嫌に引き下ろして痕を隠す。その動きすらも、恭平の癪に障った。布に隠された肌の上に、他にもそういう痕が残っているんじゃないのか。
「脱げよ。――抱かせろ」
譲の上から下りて、ウイッグを脱ぎ捨てる。そのまま上着も脱ぎ捨て、スカートから足を抜き、化粧をふき取り『本田薫』を消した。
「全部、見せろよ。抱かれてねぇかどうか、抱いて判断する」
男に抱かれたことがあるのなら、かまわないだろう。
譲が唖然と恭平を見た。
「今の譲の恋人は、期間限定だろうが仮だろうが、俺なんだよ」
譲の体に、これ見よがしに所有の印をつけやがって。枝野晴彦。アンタの手の中に、譲は戻さない。
こぼれるほどに目を開いていた譲が、決意をしたように眉をきりりとさせて頷き、上着を脱いだ。緊張気味の手が震えている。ズボンを脱ぎ、靴下を脱ぎ、下着に手をかけ躊躇う譲が、唇を噛んだ。こわばっている手の甲に恭平が指を這わせれば、はっと譲が顔を上げた。
「そこは、俺が脱がせる」
ふわぁ、と譲の顔が赤くなる。あわてて逸らされた顔に、胸が甘く絞られた。こんなに可愛い譲を、枝野晴彦は見たことがあるのか。
ちくしょう。
心の中で悪態をつき、譲に顔を寄せる。がちがちに緊張をしている譲の唇は、いつもよりも硬かった。
「譲」
「されてないよ」
「じゃあ、これは何だ」
うっ血を撫で、恭平は怒りに震えた。女の姿をしているとはいえ、男と分かっている相手にキスが出来たのは、そういう経験があったからか。
「彼女なしでも、彼氏はいたってワケかよ」
喉の奥で、恭平は自分を嘲った。譲への想いを隠すために、好きでも無い相手と付き合って来た。想いは叶わぬと決めつけ、向き合わずに逃げていた。その間に、譲は誰かの手に落ちていて――あるいは初めてが枝野晴彦で。
「恭平? 何、言ってんだよ」
「そうなんだろう」
「だから、違うって」
「抱かれてねぇってんなら、証拠を見せろ」
「証拠って、どうするんだよ」
恭平がたくしあげた上着を、譲が不機嫌に引き下ろして痕を隠す。その動きすらも、恭平の癪に障った。布に隠された肌の上に、他にもそういう痕が残っているんじゃないのか。
「脱げよ。――抱かせろ」
譲の上から下りて、ウイッグを脱ぎ捨てる。そのまま上着も脱ぎ捨て、スカートから足を抜き、化粧をふき取り『本田薫』を消した。
「全部、見せろよ。抱かれてねぇかどうか、抱いて判断する」
男に抱かれたことがあるのなら、かまわないだろう。
譲が唖然と恭平を見た。
「今の譲の恋人は、期間限定だろうが仮だろうが、俺なんだよ」
譲の体に、これ見よがしに所有の印をつけやがって。枝野晴彦。アンタの手の中に、譲は戻さない。
こぼれるほどに目を開いていた譲が、決意をしたように眉をきりりとさせて頷き、上着を脱いだ。緊張気味の手が震えている。ズボンを脱ぎ、靴下を脱ぎ、下着に手をかけ躊躇う譲が、唇を噛んだ。こわばっている手の甲に恭平が指を這わせれば、はっと譲が顔を上げた。
「そこは、俺が脱がせる」
ふわぁ、と譲の顔が赤くなる。あわてて逸らされた顔に、胸が甘く絞られた。こんなに可愛い譲を、枝野晴彦は見たことがあるのか。
ちくしょう。
心の中で悪態をつき、譲に顔を寄せる。がちがちに緊張をしている譲の唇は、いつもよりも硬かった。
「譲」
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