ひとりよがりなFalse Face

水戸けい

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誰かに、告白でもされたのかな。

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◇◆◇

 幾度も、恭平が「好きだ」と言ってくれたあの日。結局、恋人として抱くと宣言はしたものの、恭平は最後まではしなかった。眠ってしまった恭平を眺めつつ、恋人としては自分を抱くことは出来ないのかと、譲はこっそり落胆した。

 あの時の恭平の声が、耳にこびりついて離れない。

 ――好きだ。

 抱きしめて、心音を重ねるように身を寄せて、幾度も幾度も繰り返してくれたあの言葉は、期間中は恋人として過ごさなければいけないと、恭平が自分自身に言い聞かせるために呟いていたのだろう。譲に聞かせながら、恭平はそう思わなければと思っていたのではないだろうか。

 誰かに、告白でもされたのかな。

 だから、自分自身にそう言い聞かせなければならないと、恭平は思ったんじゃないか。告白を断るために。賭けが終わるまでは誰とも付き合わないと、譲に言った自分の言葉を確認し、実行するために。

 恭平はとても寂しがり屋だ。誰かと一緒にいることが当たり前すぎるほどに人気者だから、自分では気付いていないのかもしれないけれど。恭平は誰かと付き合う事を覚えて、深く誰かと心を通わせることを知って、繋がる事を知って、それが失われている時間が寂しくて、すぐに恋人を作るのだろう。作ろうと思わなくても、寂しいと感じる前に告白をされて、だから新しい彼女がすぐに出来る。

 そんな恭平だから、きっと誰かに告白をされたに違いないと、譲は想像に確信を添え、さらに考えを巡らせた。

 それで何か――たとえば、やっぱり誰かと付き合うことにしたから、かりそめの恋人の時間を減らしたいとか、そういうことを言おうとして。けれど気を使って言い出せなくて。だから晴彦が代わりに出た電話で、今日は会わないという伝言を残したのだろう。

 でも、きっと先延ばしにできないと、思い直したのに違いない。早く話をしなければと思ったに違いない。だから、会いたいというメールをくれたのだろうと、譲は結論付けた。

 あのメールを見た瞬間は、そんなことなど考え付く暇も無かった。ただ恭平に会いたいと言われたと、それだけでいっぱいで何も考える余裕など無かった。

 朝食を食べ、別れて帰ってから、恭平の話したいこととは何だったのだろうと、譲は考えた。考えに考えて、きっとそういう流れで、あの発言になったのだろうと思いついたのが、それだった。

 誰かに告白をされ、かりそめの恋人では無く本物の恋人の繋がりが欲しくなった恭平は、譲に申し訳ないと思いつつも付き合う事に決めた。メールで報告するのはよくないだろうからと、会いたいという文面だけを譲に送った。夜中にバイトが終わって駆け付けた譲に、ホテルに行こうと提案したのは、きちんと謝罪をしようと思ったから。そしてホテルに行き、譲の首に噛み痕を見つけ、胸のキスマークを目にして、恭平は動転した。

 何をどう勘違いしたのか、晴彦と譲が恋人だと思い込み、恋人がいるのに恭平と恋人のフリをしている譲に、申し訳なさを募らせた。告白をされたという事を言う必要がないと判断し、期間内は互いに恋人でいると決めたのだからと、あえて「恋人として」という言葉を使い、好きだと繰り返した。
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