ひとりよがりなFalse Face

水戸けい

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譲の口をついて出たのは、それだった。

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「じゃあなんでアイツが、譲は俺と会わねぇっつったんだ」

「え」

「え、じゃねぇよ。アイツはオマエの電話に出て、オマエは今日は俺とデートしねぇっつったんだよ。その前に送ったメールにも、返事が無ぇし」

 メールが着ていたなんて、知らなかった。いや、メールなんて、届いていなかった。あの『会いたい』というメール以外は。

 困惑した譲は、ふと思い出す。

「あっ」

 ――スマホのロックは、かけておいた方がいいと思うよ。

 晴彦の言っていたアレは、こういうことだったのか。

「そのメール、たぶん晴彦が削除してる。俺、恭平からの連絡が無かったか、確認したけど無かったから」

「は? アイツ、何を勝手に人のメール消して、譲が俺と会わないっつって決めてんだよ」

 いらいらと、恭平が親指の爪を噛んだ。これは、本気で苛立ち怒っている時のクセだ。

 ふわりと譲の胸に、あり得るはずのない希望が触れた。

「もしかして、恭平。あの時、俺と会う気でいたとか?」

 おそるおそる問うた譲に、不機嫌そのものの、ぶっきらぼうな声で恭平が答える。

「でなきゃ、連絡しねぇし。バイトの時間ぎりぎりまで待ってねぇよ」

 今、なんて――。

「待って、って。恭平、あの日、俺が来るのを待ってたの?」

「悪ぃかよ」

 憮然とした恭平に、ウソは見当たらない。それなのに

「ウソ」

 譲の口をついて出たのは、それだった。

「ウソじゃねぇよ。バカみてぇに、譲が来ねぇっつって言われたのに、待ってたんだよ」

 唇をとがらせてそっぽを向いた恭平の姿に、胸の奥からあたたかなものが湧き上がる。

「俺に、会いたかったから?」

「他に、どんな理由があるんだよ」

 それじゃあ、あの『会いたい』は混じりけの無い、そのままの言葉だったのか。と、いうことは、もしかして――

「俺を好きだって言ってくれたのは、あれは、自分に言い聞かせてるわけじゃ無かったんだ」

 恭平は譲の確認の言葉に、さらに機嫌を損ねた。

「自分に言い聞かせるって、なんだよそれ」

 じろりと睨まれ、譲は慌てて手を振りながら自分の中で完結させた考えを、恭平に披露した。
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