ひとりよがりなFalse Face

水戸けい

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「抱いてほしかったのに」

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 恭平から顔色が溶け落ちていく。

「なん、え? 何、言って……」

「恋人のふりをしようって言って、作戦を決めなきゃって部屋に行った時に、恭平が俺をからかっただろ。その時に、その、昔はアレの飛ばしあいをしたとか言って、その、う、うぅ」

 恭平に陰茎を掴まれ扱かれた。

「な、なんで、あんなことをしたんだよ」

 羞恥を堪えた譲は、睨み付けるような顔になった。はっとした恭平が、顔を伏せる。

「恭平。その後、そのまま俺を抱いたよな」

 俯いてしまった恭平の顔は、彼よりも背の高い譲からは完全に隠されてしまっている。

「なんで、俺を抱いたんだ。なんで、夢ってことでごまかそうとしたんだ。その次の、ホテルに行った時も。酔っぱらってたから、だから俺を抱いたんだろう。正気が無いと思ったから、だから抱いたんだろう。――最後に、俺を恋人として抱くって宣言した時は、どうしてしなかったんだよ」

 やはり、恋人としてでは抱けなかったのか。

 胸が痛んで、目の奥が熱くなって、涙が滲みそうになる。奥歯を噛みしめこぶしを握り、譲は堪えた。

「抱いてほしかったのに」

 ぽろりとこぼれた言葉に、恭平が驚愕しながら勢いよく顔を上げた。大きく開かれた瞳が、真っ直ぐに譲を見上げる。その瞳に、譲は力なく微笑んで想いを伝えた。

「恭平が、好きだよ。ずっと昔から、ずっと好きだ」

「そん……え? だって、オマエ、晴彦って奴と付き合ってたんじゃ」

 ゆるくかぶりを振って、溢れそうになる想いを落ち着けようと、譲は細く長く息を吐いた。

「晴彦は、ただの大学の友達だよ。あれは、ちょっとふざけてからかわれただけで。だから、なんでもないんだ」

「俺はアイツに、譲と仮でも恋人になってるってことが面白くねぇって、言われたんだぞ」

 え、と譲は目を丸くした。

「それは、どう説明すんだよ」

 晴彦に、心の中で謝罪をしながら譲は口を開いた。

「それは、その、晴彦に、告白されて。だから、多分その、晴彦はそう言ったんじゃないかな」

「それで、付き合う事にしたのか」

 恭平の言葉に牙を感じて、自分に都合のいい耳だなと譲は自嘲に唇をゆがめた。恭平が嫉妬をしていると、そう思いたがっているから険があるように聞こえるんだ。

「恭平が好きだって、断ったよ」
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