ひとりよがりなFalse Face

水戸けい

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「男にヤられんのは、嫌じゃなかったのかよ」

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 恭平が譲の腕の中で反転し、彼の腰に腕を回した。

「うかれて、調子こいちまった。俺も、ずっと譲が好きで。けど、叶うはずねぇって決めつけてた。違う高校を選んで離れて、告白してきた奴と付き合って、気持ちをごまかしてた。あん時は、腰から付け込んで陥落しちまおうって思ったんだよ」

「こっ、腰からって」

 とんでもない発言に譲は産毛を逆立てて、頭から湯気が出そうなほどに赤くなった。

「こんなことなら、うだうだウジウジしてねぇで、スパッと俺のモンになれって開きなおってりゃあ、良かったな」

 恭平が首を伸ばし、譲の頬に口づける。

「手を出しておきながら、ごまかすような奴で幻滅したか?」

 恭平のささやきに、譲はちいさく首を振る。

「恭平が俺にその、よ、欲情してくれるなら、それだけでもいいって思って。俺も、その、黙ってたから」

 気恥ずかしさに、恭平の顔を見られず抱きしめる。譲は自分の胸に恭平の顔を隠し、彼の肩に顔を寄せた。長いウィッグが頬に触れて、くすぐったい。

「男にヤられんのは、嫌じゃなかったのかよ」

 譲の胸にうまった恭平の声が硬いのは、抱きしめている体がこわばっているのは、恭平も不安になっているからだろう。自分と同じように、恭平も想いを伝えることに、不安を抱えている。

 そう思うと、勇気が湧いた。

「男にっていうだけだったら、きっと嫌だったと思う。恭平だから、平気なんだ。相手が恭平だから、どっちでも恭平のしたいほうでいいって思った。恭平が、俺を欲しがってくれるなら、なんでもいいって」

 言いながら、譲は頬をすり寄せた。ウィッグじゃなく、本物の恭平の髪を感じたい。

「だから、何も言わなかったのか」

 恭平の腕に力がこもる。悔やんでいるような、考えているような、噛みしめているような、静かな声。それが自分を受け止めてくれているように聞こえて、譲は頬をゆるめた。

 恋人たちが集まる場所で、自分たちは今、本当の恋人になった。

 ずいぶんと遠回りをしたけれど、互いに回り道をしすぎてしまったけれど、こうして気持ちを重ねることが出来た。

 イルミネーションが自分たちを祝福してくれているような気がして、譲はしっかりと恭平を抱きしめる。

 本田薫の姿ではなく、相模原恭平の姿であれば、もっといいのに。

 想いを通じあわせることも無理だと思っていたくせに、そんなことを考えた自分に笑う。

 欲張りだ。

 ふ、と譲は目を上げて、クリスマスツリーを見た。いくつか飾られているヤドリギの下に、多くの恋人たちが並んで順番を待っている。想いを未来に繋ぐための、誓いのキスをするために。
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