ひとりよがりなFalse Face

水戸けい

文字の大きさ
101 / 110

ツリーの、ヤドリギに並ばないのか。

しおりを挟む
「恭平」

 譲は顔を上げ、恭平の瞳を見つめた。

「あのさ」

 言いかけて、やめる。すごく照れくさくて、恥ずかしくて、けれど絶対にしたいと思いながら、ちらりとクリスマスツリーに目を向けた。

「ああ」

 すぐに、恭平が譲の言わんとしていることを察する。えへへと譲が頬を掻けば、一歩離れた恭平がツリーと譲を見比べた。

「譲。この連休の予定は、どうなってんだ」

「えっ? えぇと」

 この連休は、恋人のいるバイトは全滅シフトで。だから譲はフルでシフトに入っている。

「ぜんぶ、バイト。ああでも、連休明けは休み」

 大学も冬休みに入っている。丸一日、空いている。

「ふうん」

 腕を組み、片手を顎に添えて少し考えた恭平が、譲の腕を取って出口に進み始めた。

「えっ」

 ツリーの、ヤドリギに並ばないのか。

 驚きと落胆を同時に浮かべながら、譲は恭平の後に続く。

 やはり、ヤドリギの下でのキスなんて、夢のまた夢だったのだろうか。想いが通じたことに浮かれて、調子に乗りすぎてしまったのかもしれない。

 恭平はまだ、迷っているのかもしれない。男の俺と付き合うことを。もしかして、晴彦との関係を、まだ疑っているんじゃないだろうか。

「あのさ」

 駅まで戻り切符を買う恭平に声をかければ、切符を突き出された。反射的に譲が受け取れば、恭平はさっさと改札をくぐってしまう。仕方なく、譲はその後を追った。

 ホームに立ち、電車を待ち、乗り込んでも恭平は何かを考えているような顔をしていて、譲は話しかけることが出来なかった。

 そのまま最寄り駅に到着すれば、譲の手を恭平が握り先導するように歩いて行く。手を引かれるまま、譲は少し低い位置にある恭平の頭を眺めた。長いウィッグが揺れるのを、ぼんやりと見つめている間に、譲の家の前に連れて行かれる。くるりと振り向いた恭平が、イタズラを思いついた時の顔をした。

「連休明けのオマエの休み。丸一日、開けておけ」

「えっ」

「迎えに来るから。家でイイコにして待ってろよ」

 ぐい、と恭平が腕を引き、かがんだ譲にキスをした。ふふんと得意げに鼻を鳴らした恭平は少し照れているようで、譲は彼を抱きしめようと腕を伸ばした。それをするりと恭平がかわす。ふわりと長いウィッグとスカートが翻った。

「じゃあな。おやすみ! あ、晴彦って奴と会う時は、油断すんなよ。次に妙なモン付けられたら、タダじゃおかねぇからな」

 大きく手を振り駆け去る恭平が、ワクワクとしているように見えて、譲は首をかしげた。

 何を、思いついたんだろう。

 なんとなく見上げた空に、月がしらじらと輝いていた。それをしばらく見つめ、恭平が走り去った道の先に目を向けてから、鍵を取り出す。

 ――迎えに来るから。家でイイコにして待ってろよ。

 イタズラっぽい恭平の声に胸をくすぐられて、譲は微笑みながら家へ入った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

幼馴染みとアオハル恋事情

有村千代
BL
日比谷千佳、十七歳――高校二年生にして初めて迎えた春は、あっけなく終わりを告げるのだった…。 「他に気になる人ができたから」と、せっかくできた彼女に一週間でフられてしまった千佳。その恋敵が幼馴染み・瀬川明だと聞き、千佳は告白現場を目撃することに。 明はあっさりと告白を断るも、どうやら想い人がいるらしい。相手が誰なのか無性に気になって詰め寄れば、「お前が好きだって言ったらどうする?」と返されて!? 思わずどぎまぎする千佳だったが、冗談だと明かされた途端にショックを受けてしまう。しかし気づいてしまった――明のことが好きなのだと。そして、すでに失恋しているのだと…。 アオハル、そして「性」春!? 両片思いの幼馴染みが織りなす、じれじれ甘々王道ラブ! 【一途なクールモテ男×天真爛漫な平凡男子(幼馴染み/高校生)】 ※『★』マークがついている章は性的な描写が含まれています ※全70回程度(本編9話+番外編2話)、毎日更新予定 ※作者Twitter【https://twitter.com/tiyo_arimura_】 ※マシュマロ【https://bit.ly/3QSv9o7】 ※掲載箇所【エブリスタ/アルファポリス/ムーンライトノベルズ/BLove/fujossy/pixiv/pictBLand】 □ショートストーリー https://privatter.net/p/9716586 □イラスト&漫画 https://poipiku.com/401008/">https://poipiku.com/401008/ ⇒いずれも不定期に更新していきます

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

処理中です...