ひとりよがりなFalse Face

水戸けい

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「すっげぇ、キスしてぇ」

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 心の底からにじみ出るように言われて、その言葉が本気だって伝わってきて。だから余計に信じられなくて、うろたえる。

「何、言ってんだよ」

「すげぇ、かわいい」

 いったい、何がそう思われたのかがわからない。俺の困惑をよそに、恭平は俺の肩に顔を寄せて、悔しそうに「あー」とうめいた。

「あと十センチでかけりゃな」

「なんで」

 ちら、と肩に頭を乗せたまま見上げてくる恭平の目が、楽しげに意地悪な光をひらめかせた。

「かわいいって思って抱きしめても、格好がつかねぇだろう」

 言いながら、恭平が繋いでいない手を俺の腰に回した。きゃあ、と離れたところから黄色い声が届いた。

「きょ、恭平っ」

「そんな、うろたえんなよ」

 喉を笑みで震わせる恭平は、なんていうか、格好いいだけじゃなくて。そう、色気があるっていうか、なんていうか。ぞくぞくと背骨が震えて、心音が高まって、周囲に響いてしまうんじゃないかと思うと、静めなきゃいけないのに余計にうるさくなった。

「すっげぇ、キスしてぇ」

「えっ」

 ごくり、と喉が鳴った。

 キス。

 こんなところで?

 視界の端に、小さくはしゃぎながら俺たちを見ている女の子たちが映っている。金縛りにあったみたいに、動けない。

「譲」

 ぎゅっと目を閉じれば、がくんと電車が揺れて速度を落とし、止まった。扉が開いて、腕を引かれて、目的の駅じゃないのに恭平は俺を引っ張って降りた。

「恭平?」

 そのまま、ずんずん腕を引っ張りながら恭平は進み、駅のトイレに入り、いきなり立ち止まった。俺は止まりきれずに、恭平にぶつかった。

「わっ、ごめっ、んんっ」

 ぶつかった勢いで恭平を抱きしめて、顎を引けば唇をふさがれた。それどころか、しゃべるために開いた口の中に恭平の舌が差し込まれて――。

「ふっ、ん、んぅう」

 ぞくぞくと、腰が甘く疼く。こんな、こんなところでそんなキスをされたら、すごく困る。
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