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ボロボロの朝霧を見つめ、夏川が目を見開く。
「帝」
ボタンの千切れたシャツを夏川が凝視していることに気付いた朝霧は、シャツを掻き合わせると、唇を噛んだ。
パニックになって夏川と会うことしか考えられなかったが、こんな深夜に連絡もせずにやって来たのは、非常識だったと改めて感じた。
夏川も明日仕事だろうし、こんなみっともない格好で来るべきじゃなかった。
踵を返そうとした朝霧の手首を夏川が掴む。
「痛いっ」
そこは渡会に強く握られ、真っ赤になっていた箇所だった。
夏川がそれに気付き、朝霧が初めて見るような険しい表情を浮かべる。
夏川は朝霧の二の腕を掴むと、そのまま引きずるようにリビングに続く廊下を歩き始める。
リビングにはリサが立っていた。
「帝さん。どうしたの? 」
またリサは来ていたのかという苛立ちと、自分の格好の恥ずかしさに朝霧は何も返すことができなかった。
「リサ。悪いけど、今日は送れないから。勝手に帰ってくれ」
「えっ、ちょっと。リョウ」
夏川は追ってきたリサの鼻先で、寝室の扉を勢いよく閉めた。
ベッドに放り投げられた朝霧は、掴まれていた二の腕からじんじんと痛みを感じて、そっとそこを摩った。
「で、どうしたの? 」
低い夏川の声色のせいで、朝霧の背がびくりと揺れる。
一体何から話せばいいのか。
正直に話したら、渡会には気をつけろと忠告しただろうと、夏川は自分に呆れるかもしれない。
色々な思考がぐるぐると頭を駆け巡り、肩を落としただけで、朝霧は言葉を発せなかった。
急に、どんと重い音が聞こえ、朝霧は顔を上げた。
夏川が壁の傍に立ち、拳を握っている。
夏川の拳からは血が滲み、壁が僅かにへこんでいる。
「聞いてるんだけど、答えてくれない? 」
「あ……」
焦れば、焦るほど朝霧は息が詰まる様な気分だった。
渡会に襲われた時のショックも抜けていない状態で、夏川に問い詰められ、朝霧は上手く言葉を紡げず、息苦しさに喉に手をやると頭を振った。
「帝」
ボタンの千切れたシャツを夏川が凝視していることに気付いた朝霧は、シャツを掻き合わせると、唇を噛んだ。
パニックになって夏川と会うことしか考えられなかったが、こんな深夜に連絡もせずにやって来たのは、非常識だったと改めて感じた。
夏川も明日仕事だろうし、こんなみっともない格好で来るべきじゃなかった。
踵を返そうとした朝霧の手首を夏川が掴む。
「痛いっ」
そこは渡会に強く握られ、真っ赤になっていた箇所だった。
夏川がそれに気付き、朝霧が初めて見るような険しい表情を浮かべる。
夏川は朝霧の二の腕を掴むと、そのまま引きずるようにリビングに続く廊下を歩き始める。
リビングにはリサが立っていた。
「帝さん。どうしたの? 」
またリサは来ていたのかという苛立ちと、自分の格好の恥ずかしさに朝霧は何も返すことができなかった。
「リサ。悪いけど、今日は送れないから。勝手に帰ってくれ」
「えっ、ちょっと。リョウ」
夏川は追ってきたリサの鼻先で、寝室の扉を勢いよく閉めた。
ベッドに放り投げられた朝霧は、掴まれていた二の腕からじんじんと痛みを感じて、そっとそこを摩った。
「で、どうしたの? 」
低い夏川の声色のせいで、朝霧の背がびくりと揺れる。
一体何から話せばいいのか。
正直に話したら、渡会には気をつけろと忠告しただろうと、夏川は自分に呆れるかもしれない。
色々な思考がぐるぐると頭を駆け巡り、肩を落としただけで、朝霧は言葉を発せなかった。
急に、どんと重い音が聞こえ、朝霧は顔を上げた。
夏川が壁の傍に立ち、拳を握っている。
夏川の拳からは血が滲み、壁が僅かにへこんでいる。
「聞いてるんだけど、答えてくれない? 」
「あ……」
焦れば、焦るほど朝霧は息が詰まる様な気分だった。
渡会に襲われた時のショックも抜けていない状態で、夏川に問い詰められ、朝霧は上手く言葉を紡げず、息苦しさに喉に手をやると頭を振った。
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