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同窓会13
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「…久野のこと、ほっておいていいのか?」
京極は飲み物を物色している久野を見つめながら言った。
「あっ、あいつ?別にどうでもいいよ。ただそこでばったり会っただけだから。ねえ、それよりさあ…」
高倉が、京極にまた触れようとする。伸ばした爪には、ぎらぎらと光るスパンコールが幾重にも貼られていた。
その手首を横から本条が掴む。
「千雪…あんた相変わらずだね」
「ユイカ、いたんだ」
全く笑顔を見せずに、高倉が言う。
「いたんだって、最初から気付いてて無視したくせに良く言う。金持ちのいい男と見ると、すり寄っていく癖、変わってないね。でも京極君はないんじゃない?恥を知りなよ」
本条は話しながらも、高倉の手首を離さなかった。
「はあ?あんたに言われたくない」
高倉が、すごい形相で本条を睨んだ。
「確かに私はあの時、最低だった。だから今すごく後悔しているし、隣に座ることを許してくれた京極くんに感謝してる。でもあんたは何?過去のことまるでなかったみたいに振舞って…見てるこっちが恥ずかしい」
高倉が唇を噛み、もう一方の手を振り上げた。
京極は急いでその手を掴んだ。
「やめろ。みんな見てるぞ」
京極の言葉に、高倉は周りを見渡すと、手を降ろした。
「あれえ、ばい菌君じゃん。来てたんだあ?」
声をした方を見ると久野が、ワイングラス片手に立っていた。
久野はどこかで飲んでから来たのか、すでに赤い顔をしていた。スーツは借り物なのか、サイズが合っていないようで、久野の細い体が服の中で泳いでいた。
「普通来るかよ」
そう呟くと久野が一人で笑いだした。
「同窓会なんだ。俺がいたっておかしくないだろう?」
京極の言葉尻は震えていて、顔も俯いてしまう。
「ふうん」
そんな京極を馬鹿にしたように見ながら、久野が近づいてくる。
「なあ、お前俺に蹴られて、吹っ飛んで鼻血出した事あったよなあ?明らか涙目なのに、泣いてないって言い張って…あれ笑えたわ。背中もみんなで殴って痣つけてやっただろ。さすがにもう消えてるか」
そう言いながら、久野が人差し指で、京極の胸をついた。
久野はあれから身長があまり伸びなかったようで、京極の肩くらいしかなかった。体型も貧相で鍛えてなどいないだろう。今なら喧嘩になったとしても絶対に勝てるのに、過去の記憶が頭をもたげ、京極は直ぐに言い返せなかった。
京極は飲み物を物色している久野を見つめながら言った。
「あっ、あいつ?別にどうでもいいよ。ただそこでばったり会っただけだから。ねえ、それよりさあ…」
高倉が、京極にまた触れようとする。伸ばした爪には、ぎらぎらと光るスパンコールが幾重にも貼られていた。
その手首を横から本条が掴む。
「千雪…あんた相変わらずだね」
「ユイカ、いたんだ」
全く笑顔を見せずに、高倉が言う。
「いたんだって、最初から気付いてて無視したくせに良く言う。金持ちのいい男と見ると、すり寄っていく癖、変わってないね。でも京極君はないんじゃない?恥を知りなよ」
本条は話しながらも、高倉の手首を離さなかった。
「はあ?あんたに言われたくない」
高倉が、すごい形相で本条を睨んだ。
「確かに私はあの時、最低だった。だから今すごく後悔しているし、隣に座ることを許してくれた京極くんに感謝してる。でもあんたは何?過去のことまるでなかったみたいに振舞って…見てるこっちが恥ずかしい」
高倉が唇を噛み、もう一方の手を振り上げた。
京極は急いでその手を掴んだ。
「やめろ。みんな見てるぞ」
京極の言葉に、高倉は周りを見渡すと、手を降ろした。
「あれえ、ばい菌君じゃん。来てたんだあ?」
声をした方を見ると久野が、ワイングラス片手に立っていた。
久野はどこかで飲んでから来たのか、すでに赤い顔をしていた。スーツは借り物なのか、サイズが合っていないようで、久野の細い体が服の中で泳いでいた。
「普通来るかよ」
そう呟くと久野が一人で笑いだした。
「同窓会なんだ。俺がいたっておかしくないだろう?」
京極の言葉尻は震えていて、顔も俯いてしまう。
「ふうん」
そんな京極を馬鹿にしたように見ながら、久野が近づいてくる。
「なあ、お前俺に蹴られて、吹っ飛んで鼻血出した事あったよなあ?明らか涙目なのに、泣いてないって言い張って…あれ笑えたわ。背中もみんなで殴って痣つけてやっただろ。さすがにもう消えてるか」
そう言いながら、久野が人差し指で、京極の胸をついた。
久野はあれから身長があまり伸びなかったようで、京極の肩くらいしかなかった。体型も貧相で鍛えてなどいないだろう。今なら喧嘩になったとしても絶対に勝てるのに、過去の記憶が頭をもたげ、京極は直ぐに言い返せなかった。
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