春に落ちる恋

まめ太郎

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 目を覚まし、辺りを見回すと、俺は文字通り飛び起きた。
「っ痛ぇ」
 二日酔いの頭痛がこめかみから響く。

 あの後風呂も入らず寝たわりに、俺の体はさっぱりしていた。
 京極さんが拭いてくれたんだ。
 俺はそのことに気付いて、顔を赤くしたが、同時に自分の昨夜の痴態を思い出し今度は顔を青ざめさせた。

 重い腰をさすりながら、シーツを巻きつけ立ち上がると、備え付けの小さな机の上にメモが置いてあった。
 京極さんの几帳面な文字で「急な仕事が入った。先にでる。ホテルは12時まで使用可能とのこと。起きたら連絡くれ」と書いてあり、その下に京極さんのプライベートと思われる携帯番号も書いてあった。

 俺はそれを読むと、床にずるずると座りこみ、額に手を当てた。
 おい、野々原春、お前どうした。いくら酔っぱらってたとはいえ、あの悪魔に無理やりフェラした上に、最後までいたすなんて正気の沙汰じゃないぞ。

 俺は最低の気分でシャワーを浴びると、スーツを着て、ホテルから自宅へ帰った。
 自宅についた俺はすぐにパソコンを立ち上げ、「部下から上司へのセクハラ」を検索。その結果、30分後には俺はフローリングの床に額をこすりつけていた。

 俺、まじで何してんだ。酔ってたなんて言い訳きかねえぞ。
 京極さん、童貞だったよな。それをあんな形で奪うなんて、訴えられたって文句は言えねえよ。

 俺は次に「退職届 書き方」を検索し、そこの文章をまんま写し、退職届をかきあげた。

 そこまですると、俺は京極さんが残してくれたメモをポケットから取り出した。

 今からこの番号にかけて謝るか。

 そう思いスマホを手に持つが、今までさんざん京極さんに怒鳴られてきた記憶が走馬灯のように駆け巡り、結局俺は通話ボタンを押すことができなかった。
 日曜も悩んでいるうちにあっという間に過ぎ、俺はろくに寝ることもできないまま、月曜を迎えた。
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