春に落ちる恋

まめ太郎

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幸せそうでなにより7

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「ただいまあ。おい、俺がいない間、春のこといじめてなかっただろうな?」
 将仁は戻ってくるなり開口一番そう言った。
 いじめって小学生かよ。センが苦笑しながら答えた。
「いじめてないよ。ねっ、春ちゃん」
「はい」
 にこりと春が笑って頷く。
 センも勝も、春の本気の笑顔に心臓が軽くきゅうっとなった。

「おい、勝手にちゃん付けすんな」
 将仁が立ち上がって叫んだが、頭痛を感じたのか頭に手をやる。
「もう、飲み過ぎですよ」
 春も立ちあがり、心配そうに将仁の背中をさすった。
「今日はそろそろお開きにしよう」
 センがそう言うと、勝が会計の為店員を呼んだ。
  
 店の前で、解散することになった。
「じゃあな。将仁、良いお年を」
 センの言葉に、春の肩に顎をつけ目を瞑っていた将仁が薄目を開け、手を振った。
「春君。またね」
 勝の言葉に春が笑顔でぺこりと頭を下げる。

 二人はタクシーを捕まえるつもりだと、センたちが向かう駅と逆方向に歩きはじめる。
「はあ。春君が男の子だったのにはびっくりしたけど、いい子だったね」
「おう」
 勝の言葉に、センが頷く。
「行こうか」
 勝に言われ、将仁たちに背中を向ける。
 ふとセンが振り向くと、視線の先で、将仁が自分のマフラーを春の首に巻いてやっていた。そして春の頬に軽くキスを落とす。
 春は頬を押さえ、赤い顔で将仁を軽く睨んだ。
 二人は見つめ合うと、手を繋ぎゆっくりとまた歩きだした。
 センはそれを見てふっと笑った。
 願わくば、あの二人がずっと仲良くいられますように。
 そんなことを思わずはいられない、幸福に満ちた光景だった。
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