111 / 336
85
しおりを挟む
翌日、病院で治療を受け、検査予約をした俺は、一ヶ月半後また来るように言われ、その際、病気に感染していないことが確定した。
俺はカフェにも電車に乗って都会に行くこともなくなり、志望校は家から通える国立に変更した。俺はカフェで知り合った全員のラインをブロックした。
母は努さんたちを警察に訴えることもできると言ったが、少しでも早く起こったことを忘れたかった俺は、それを望まなかった。
高校で俺は以前と変わりないように過ごせていたと思う。
ただ、母親がいない夜、一人になるとあの日のことが思い出されて体に震えが走ったり、過呼吸がおこるようになってしまった。
母はそんな俺を見て、心療内科に通うように勧めたが、俺はそれを拒否した。
これ以上母に心配をかけたくないと思った俺はある行動にでた。
待ち合わせのホテルにやって来たのは俺の父親くらいの年齢に見える小太りのスーツの男だった。緊張しているのか、やたら汗を拭いながら「暑くない?」と何度も俺に聞く。
シャワーを浴び、ベットに押し倒された瞬間、背中を氷の柱で貫かれたようなぞっとした感覚が俺を襲った。
「ごめんなさい。やっぱ…」
俺が体を起こそうとすると、男が更に力をこめてのしかかってきた。
「ここまできて今更やめるとかできないからね」
「でも、俺」
「大丈夫。目を瞑っていれば、すぐに終わるから」
そう言うと男は生暖かい息を俺の首筋にはきながら、俺の体に手を這わせ始めた。
「ねえ。本当にお金要らないの?」
事が終わると男はすぐにシャワーを浴び、スーツに着替えながらそう俺に聞いた。
泣きながら吐き気と戦っている俺に返す余裕などなかった。
男がため息をついた。
「あのさあ。そうやって被害者面するのやめてくれない?これは同意の上の行為だったんだからね」
俺は何も言わず、嗚咽する声を必死に押し殺した。
そんな俺をみて、男はもう一度ため息をつくと、枕元に万札を2枚置いた。
「仕方ないから、いつもより多めにあげる。君、可愛かったし。また連絡ちょうだいよ」
そう言うと男はそそくさと部屋から出て行った。
俺は体を起こすと、置いてあった万札を手で払った。
床にはらりと落ちたそれを見ながら、俺は今度こそ声を上げて泣いた。
別の男と寝れば、あの夜のことを上書きできるかもと思い、出会い系で男を探した。
しかし結果は金を渡され、余計自分が汚れたように感じただけだった。
俺はカフェにも電車に乗って都会に行くこともなくなり、志望校は家から通える国立に変更した。俺はカフェで知り合った全員のラインをブロックした。
母は努さんたちを警察に訴えることもできると言ったが、少しでも早く起こったことを忘れたかった俺は、それを望まなかった。
高校で俺は以前と変わりないように過ごせていたと思う。
ただ、母親がいない夜、一人になるとあの日のことが思い出されて体に震えが走ったり、過呼吸がおこるようになってしまった。
母はそんな俺を見て、心療内科に通うように勧めたが、俺はそれを拒否した。
これ以上母に心配をかけたくないと思った俺はある行動にでた。
待ち合わせのホテルにやって来たのは俺の父親くらいの年齢に見える小太りのスーツの男だった。緊張しているのか、やたら汗を拭いながら「暑くない?」と何度も俺に聞く。
シャワーを浴び、ベットに押し倒された瞬間、背中を氷の柱で貫かれたようなぞっとした感覚が俺を襲った。
「ごめんなさい。やっぱ…」
俺が体を起こそうとすると、男が更に力をこめてのしかかってきた。
「ここまできて今更やめるとかできないからね」
「でも、俺」
「大丈夫。目を瞑っていれば、すぐに終わるから」
そう言うと男は生暖かい息を俺の首筋にはきながら、俺の体に手を這わせ始めた。
「ねえ。本当にお金要らないの?」
事が終わると男はすぐにシャワーを浴び、スーツに着替えながらそう俺に聞いた。
泣きながら吐き気と戦っている俺に返す余裕などなかった。
男がため息をついた。
「あのさあ。そうやって被害者面するのやめてくれない?これは同意の上の行為だったんだからね」
俺は何も言わず、嗚咽する声を必死に押し殺した。
そんな俺をみて、男はもう一度ため息をつくと、枕元に万札を2枚置いた。
「仕方ないから、いつもより多めにあげる。君、可愛かったし。また連絡ちょうだいよ」
そう言うと男はそそくさと部屋から出て行った。
俺は体を起こすと、置いてあった万札を手で払った。
床にはらりと落ちたそれを見ながら、俺は今度こそ声を上げて泣いた。
別の男と寝れば、あの夜のことを上書きできるかもと思い、出会い系で男を探した。
しかし結果は金を渡され、余計自分が汚れたように感じただけだった。
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)
優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。
本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる