春に落ちる恋

まめ太郎

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 翌日、泣きはらした顔で「おはようございます」と告げると、木曽さんと神谷さんがぎょっとした顔で俺を見た。
 将仁さんは俺の顔を一瞬見たが、すぐ関心を失ったように視線を逸らした。
 そりゃあんなとこ見せつけられて帰れとまで言われりゃ、嫌いどころか俺の存在すら視界から消したいよな。
 理解はできるが、心に穴が空いた様な気分で俺は席に着いた。

 それでも俺は将仁さんと同じ職場で働けるのが嬉しかった。
 例えもう二度と触れられなかったとしても、その声が聞こえるだけで心が少し慰められるようだった。
 ふいに顔を上げた将仁さんと目が合う。
 しかし将仁さんは以前のように微笑むこともなく、パソコンにあっさり目を戻した。
 それを寂しいだなんて口が裂けても言えない俺は、ため息をつき、書類に取り掛かった。

 いつも俺より遅くまで会社に残っている将仁さんが「用がある」と先に帰った。
 俺は家に帰って海と顔を合わせるのが嫌で、終電ぎりぎりの時間まで溜まっていた仕事を片付け、支店の鍵を閉め、帰宅した。

 ただいまも言わず、部屋の扉を開けると、玄関に昨日見たばかりの磨かれた靴が置いてあった。

 まさか、そんなはずない。

 そう思いながら、俺は急いで靴を脱いだ。
 ソファに将仁さんと海が並んで座っている。その将仁さんの手の中に海のスマホがあった。
 将仁さんが俯いていた顔をあげ、俺を見た。
 俺は目の前の光景を信じたくなくて、青白い顔で何度も瞬きをくり返した。

「ちょっと仕事の電話をしてくる」
 そう言うと、将仁さんは俺の脇を通り、玄関から表に出た。
 俺は机に残された海のスマホを呆然と見ながら聞いた。

「ねえ、何してたの?」
 答えを待つ間、俺の心にひたひたと絶望が押し寄せる。
「いや、昨日さ、外に出たら、この部屋をあの男がじっと見上げててさあ。話しかけて一緒に飯行ったのよ。んで、春の面白い映像持ってるって言ったら…京極さんだっけ?興味あるって言うから」
「見せたの?あれを」
「京極さん、顔色一つ変えてなかったぜ。意外とああいうレイプもの好きだったり…」
 俺はソファに座る海に飛び掛かった。
「絶対に許さない。殺してやるっ」
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