春に落ちる恋

まめ太郎

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 その時、玄関の扉が開き、吹き抜ける風が俺の火照った頬を冷やした。

「はいはい。そこまで」
 現れたのは将仁さんの友達、センさんだった。
 センさんの後ろには屈強そうな坊主の男の人が立っていた。
 まだ殴り合っている二人を簡単に引っぺがすと、センさんは海の顎に手をかけた。
「殴るにしても顔は止めて欲しかったなあ。値段下がっちゃうじゃん」
「あんた誰?」
 海の問いかけにセンさんがにっこりと笑う。
「お前、レイジのとこから金持ち逃げしたんだって?その金は本当は俺のところにくるはずの物だったんだよ。あいつお前のことずっと血眼になって探してたんだぞ。さあ、金はどこだ?」
「いや…待ってください。違うんです」
「言い訳なら事務所で聞こう。おい、連れてけ」

「待て。そいつの持ってるスマホに…」 
 そこまで言ってちらりと将仁さんが俺を見た。それだけでセンさんには伝わったようだった。
 センさんは海に近づくと、ゆっくりと腹に拳を叩きこんだ。
 海が膝を着き、蹲る。
「動画、消せ」
 そう言われて、海がのろのろとスマホいじる。
「消しました」
「バックアップは?」
「とってません」
「嘘だったら、殺すよ?」
 そう言ったセンさんの目は笑っていなかった。
「本当です」
 海がぶるりと震えて言う。
「春君。このスマホ、あとで必ず壊すから。それともう二度と、こいつが目の前に現れることはないから。安心して」
 センさんが俺に向かって笑ってそう言った。
 スキンヘッドの男の人が先に海を連れて部屋から出て行く。
「悪かったな。セン。急いで来てもらっちまって」
「いや。うちとしてもあいつを探してたんで助かった。それじゃあ、仕事があるから行くな。春君。今度ゆっくりご飯でも」
 ウインクするとセンさんも足早に玄関から消えた。
 部屋には俺と将仁さんの二人が残された。

「春。とりあえず、俺の部屋に行こう」
「でも、俺…」
「この部屋には居たくないだろう?」
 確かに海と将仁さんが殴りあったせいもあり、部屋の中はめちゃくちゃだった。
 しかも俺にそれを片付ける余裕はない。
「適当に友達の家、泊まりますから」
 俯いてそう言った。
「頼むから俺の部屋に来てくれないか?話したいことがあるんだ」
 行きたくないという気持ちもあった。
 それでもちゃんと決着をつけないと。
 俺はこくりと一度頷いた。
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