春に落ちる恋

まめ太郎

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 俺が先にシャワーを浴び、出ると将仁さんが後に続いた。
 寝室も中々汚れていた。ワインの空き瓶が3本も床に転がっている。
 軽く片づけをして、俺がベットに横たわると、将仁さんが髪を拭きながら、やって来た。
 俺を後ろから抱きしめ、腕枕をしてくれる。

「明日は仕事早いの?」
 明日は土曜日だったが、休日出勤だろうと思って聞いた。
「いや、明日は飲み会の接待だけだから、夕方までゆっくりできる」
 俺の首筋にキスを落としながら、将仁さんが言った。
 部屋の照明を将仁さんが暗くする。
「おやすみ」
 俺のつむじにキスをし、将仁さんが言った。
「おやすみなさい」
 俺はそう答えながら、内心色々な感情が吹き荒れていた。

 久々のお泊りにも関わらず、将仁さんが手を出してこない。
 俺は風呂場で丹念に後ろを準備したことが急に恥ずかしくなってきた。

 こういう時って普通やるよね?
 もしかして将仁さん気にしてないっていってたけど、他の男に抱かれた俺を見て、本当は引いてるのかな。
 そういえば今日、ちょっと体の距離も離れているし。

 いつもは俺の背中にぴったり寄り添う将仁さんが、何故か少し空間を開けていた。
 俺の妄想はどんどん悪い方向に転がり始め、気が付いたらぐすぐすと涙をこぼしていた。

「春、おい、どうしたんだ?」
 そんな俺に気付き、将仁さんが上半身を起こして部屋の電気を点けた。
 泣いている俺を見て、脇に手を入れると、胡坐をかいた自分の膝の上に座らせる。
「今日は怖い思いしたもんな。思い出しちゃったか?」
 あやすように俺のこめかみにキスをする。
「違くて…」
 俺は鼻をスンスンと鳴らした。
 そんな俺の話を将仁さんは辛抱強く待っていてくれる。

「何で今日しないの?」
 小声で俺は尋ねた。
「やっぱり俺が他の男と寝てるの見て、嫌になったのぉ?」
 泣きながらそう聞くと、慌てた将仁さんがティッシュの箱を取り、涙を拭い、ペーパーを鼻に当ててくれた。
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