スパダリかそれとも悪魔か

まめ太郎

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「待って。行くな。」
 上体を支える俺の腕は、疲労で震えていた。

 怜雄をとっさに呼び留めたが、なんと言葉をかけていいのかわからなかった。
 それでもこのまま部屋から出ていってほしくはなかった。

「あのさ。」
 俺はうつむいてまともに怜雄の顔を見ることはできないまま、話しかけた。

「最初は確かにお前に流されて始めた関係だけど、俺ちゃんと今はお前が好きだよ。お前なりに俺のこと大切にしてくれてるのが伝わってくるから、俺も好きになったっていうか。だからそんな簡単に他の女とこういうことしたりしない。俺、馬鹿だけど二股とかぜってえ嫌だし。だからあの。」

「機嫌とってきてんじゃねえよ。」
 低い、不機嫌そうな怜雄の声が聞こえた。

 駄目だ。出て行ってしまう。

 そう思ったとき、俺の上に影が落ちた。
 顔を上げると、すぐそばに怜雄がいて噛みつくようにキスされた。
「んっ、うんっ。」
 俺は大好きなキスがやっともらえて、もっとと怜雄の舌に自分の舌をこすりつけた。

「さっきのじゃお前足りないだろ。今度はもっとトロトロにしてやるよ。」
 そう言った怜雄の表情はいたずらをしかけるみたいに笑っていて、俺はそれに安心して首筋にぎゅっとしがみついた。
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