スパダリかそれとも悪魔か

まめ太郎

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 結局病院での検査は夕方までかかってしまった。

 全身なんの問題もないと、医者に太鼓判を押された俺は、保険医の運転するワゴンで学園に帰った。
 学園に戻る頃は、もうすっかり日も暮れていた。
 俺は昨日から付き添ってもらった礼を保険医に伝えた。

「何事もなくて良かったわ。でも今日は激しい運動は禁止だからね。御剣君にもそう言わなきゃだめよ。」
 そう言ってウインクする保険医に、俺は顔が赤くなった。

 保険医と別れ、寮へむかうと、入口の階段に怜雄が座っていた。
「怜雄、こんなところで何してんだよ。寒いだろ。」
 そう言って駆け寄る俺を、怜雄が両手で座ったまま抱きしめた。
 俺を抱きしめる体が冷えきっていた。

「連絡ないから心配した。」
「あっ、悪い。病院だから携帯の電源落としてた。」
 俺は怜雄の寒さで赤くなった、頬や鼻をこすって温めた。
 怜雄は俺を抱きしめながら立ち上がると、手をつないで歩き出した。

「検査の結果は問題なかったのか?」
「うん。二階から落ちたのに、傷一つないから、医者も驚いてた。」
「そうか、良かった。」
 俺は部屋に向かおうとする怜雄に言った。
「夕飯どうする?俺疲れたから、今日は作りたくないんだけど。」
「俺が作ったから、問題ない。」
 俺は怜雄のその言葉に目を丸くした。
  部屋に帰ると、机の上には様々な料理が並んでいた。
 酢豚、唐揚げ、大根の煮物、オムライス・・・。
 和洋折衷ばらばらだったが、すべて俺の好きな食べ物だった。
「これ本当に怜雄が全部作ったの?出前とかじゃなくて?」
「そう言ってるだろ。ほら食べてみろ。」
 目の前の唐揚げを手でつまんで、俺の口元に押し付けてくる。
 俺はそれを口に入れ咀嚼した。
「う、うまい。」
「だろ。俺はやろうと思えば何でもできるんだよ。」
 得意げに怜雄は言った。

 これだけの料理一人で作るのは大変だったはずだ。
 俺の好物を作って、寒空の中、俺の帰りを待っててくれたんだ。
 胸がきゅうとしめつけられるように痛い。でもそれは嬉しい痛みだった。
「俺、怜雄がすげえ好き。」 
 自然とそんな言葉が俺の口からあふれた。

 怜雄はそんな俺を驚いたように見て、からかうように言った。
「食べ物に釣られたのか?」
 もう一個唐揚げを俺の口に放り込む。
 それから俺を抱きしめ言った。
「俺のことが好きなら、どこへも行くな。ずっとそばにいろ。」
 俺はそんな怜雄の言葉に何度も頷いた。
 怜雄は俺の顔を真正面から見つめて、キスをした。

「唐揚げの味。」

 唇を離すと、怜雄はそう言って嬉しそうに笑った。
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