スパダリかそれとも悪魔か

まめ太郎

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 結局、笑顔の枝野さんに見張られつつ、俺はそのカクテルを全て飲み切った。
 一体何が入ったカクテルだったのか、一杯で頭がくらくらする。

「それにしてもさー。この前来た優君のお友達、本当にイケメンだったよね。あの人たちに毎日会える同じ大学の女の子がうらやましい。」
 近くの女子短大に通うみっちゃんが、頬をうっすら染めながら言う。
「そんなイケメンだったんだあ。私、厨房にいて見られなかったから、また来るように言っておいてよ。」
 枝野さんの言葉に、俺はうつらうつらしていた意識をはっと起こし、頷いた。

「本当イケメンだったよ。なあ。神崎。」
 安西さんが嫌な感じの笑顔を浮かべながら、俺にそう言う。
 あの時安西さんも厨房で調理していたが、怜雄の顔がじっくり見えたのだろうか。

「あの・・・。俺・・・トイレ行ってきます。」
 俺がトイレで酔いを醒まそうと立ち上がると、急に膝から力が抜けた。
 がたりと椅子に崩れ落ちる俺を、横から長谷部が支える。
「優。大丈夫かよ。」
「平気、平気。」
 俺はへらりと笑うと、長谷部に言った。

 大きめのグラスに水を入れて、枝野さんが俺の前に置く。
「ごめんね。ちょっと飲ませすぎたわ。」
「本当に大丈夫ですから。全然酔ってませんよ。」
 俺はもらった水をごくごく飲みほしながら言った。
「でも、顔が真っ赤。」
 前の席に座っていた枝野さんが、俺の頬に手を伸ばす。

 白く冷たい手が俺の頬に触れた瞬間、安西さんが大きな声で言った。
「あーあ。君江。お前そんなに神崎に迫ったって、意味ねえぞ。そうだろ?神崎。」
「迫るって何よ。私はそんなつもりじゃ・・・。」
 俺に伸ばしかけた手を引っ込め、枝野さんが安西さんを睨む。

「俺、見たんだよ神崎。お前が、あのイケメンと雨の日に抱き合ってるの。」

 枝野さんの言葉を無視して、安西さんがにやりと俺を見つめながら言った。 
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