スパダリかそれとも悪魔か

まめ太郎

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 グラスシャンパンが運ばれてきて、俺たちは乾杯した。
 グラスを合わせた音にかぶせるように、怜雄がとろけるような笑みを浮かべて言った。
「優。二十歳の誕生日おめでとう。」
「ありがとう。」
 俺は顔を赤くしながら礼を言った。

「適当なコースにしたけど、大丈夫だったよな。」
 怜雄の言葉に俺は頷いた。どうせこんな店でメニューを見せられたってよく分からないだろう。

 俺たちの前に芸術品を思わせる、色とりどりの野菜で作られた前菜が置かれる。
 俺が目を見開きながら「美味そう。」と言うと、運んできてくれたボーイの人に苦笑され、俺はまた顔を赤くした。

 今日は上品にふるまおうと決めていたのに、これじゃ台無しだ。

 一瞬落ちた俺の気分だったが、前菜を口に入れるとその美味さにすぐに浮上した。
 こういうところでのマナーに詳しくない俺は、怜雄に小声で尋ねながら食事を進めた。

 メインのステーキを食べていると、ボーイが笑顔でやってきて怜雄に言った。
「本日はお誕生日のお祝いと承っております。私たちからも一曲プレゼントしてよろしいでしょうか?」
 ボーイの後ろには穏やかな笑みを浮かべる女性が立っていて、その手にはヴァイオリンが握られていた。

「ありがとうございます。ではお願いします。」
 怜雄が落ち着き払った声でそう言った。

 女性がヴァイオリンを構え、演奏を始めた。
 クラッシックに全く詳しくない俺でも聞き覚えのある曲だったが、曲名までは分からなかった。

 俺は自分のために演奏してもらうなんて、初めての経験でどう対応したらいいかわからず、まず手拍子をしてみたが、これは絶対に違うと止め、音に合わせて体を左右に揺らすだけにしておいた。
 怜雄は聞いているんだか、いないんだか、ステーキを切っては口に運んでいる。

 演奏が終わり怜雄が拍手をしたので俺も慌てて拍手をし、立ち上がって頭を下げた。
 周りのテーブルからもちらほら演奏に対しての拍手が聞こえる。

「素晴らしい演奏でした。バッハですね。」
 怜雄の感想に演者の女性が頬を染めて「ありがとうございます。」と言う。 
 女性はまだ何か話したそうだったが、ボーイに背中を押されて、行ってしまった。

 俺は席に座るとぐったりし、軽くネクタイを緩めた。

 怜雄はそんな俺をちらりと見て言った。
「そろそろ部屋に行こうか?」
 俺は疲れ切った顔で、こくりと頷いた。
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